2025.9.27| 矯正相談集
「前歯が前に出ていることが気になっています」とご相談いただいたT.Tさん(31歳・男性)のケース
「口元が出ている気がする」「前歯が前に出ていて口を閉じにくい」…そんな“出っ歯”のお悩みは、大人・子ども問わずよくいただくご相談です。
今回は、出っ歯を気にされて来院されたT.Tさんとの初診時のやり取りをご紹介します。ただ見た目を整えるだけでなく、かみ合わせや骨格のバランスまで考慮した当院の治療方針についてお伝えします。
患者様情報
年齢 | 31歳 |
性別 | 男性 |
初診時の画像診断



上の前歯が大きく前に傾いていました。奥歯の噛み合わせも出っ歯傾向でした。
上の前歯が前に傾いていることで、口元が出た印象を受けました。リラックスしていると口が開いてしまうとのことでした。
ご相談のきっかけ
T.Tさんは、「前歯が出ていることをかかりつけの医院で指摘され、当院を勧められて来院した」とのことでした。
出っ歯やリラックスしていても上下の唇が自然に閉じられない状態が気になっていたとのことでした。
矯正治療の必要性についてはこれまで考えたことがなかったそうですが、かかりつけの歯科医院からの勧めもあり、一度専門的な診断を受けてみたいとご相談くださいました。
患者様との実際のやり取り
はじめまして。今日はどのようなことが一番気になっていらっしゃいますか?
かかりつけの歯医者さんで言われたのですが、前歯が結構前に出ているようで、口が閉じにくく感じます。矯正した方がいいのかなと思っていて…。
歯並びやCT画像を拝見しましたが、確かに前歯だけでなく、奥歯のかみ合わせの関係も「出っ歯さん」の特徴が出ていますね。本来であれば、上と下の前歯はちょうど当たるくらいの位置関係が理想的ですが、今は上の歯全体が1歯の半分ほど前に出ていて、奥歯から前歯まで前方にずれています。
これは骨格的な影響もあり、上顎の骨が本来よりも少し前に位置していることも原因の一つです。また、上の前歯が前方へ傾斜しています。そのため、口元が出て見えたり、リラックスしている時にお口が閉じにくく感じたりしていると考えられます。
骨格が原因だと、矯正だけでは変わらないんですか?
骨そのものを動かすことは一般的な矯正治療ではできませんが、歯の位置を整えることで口元の印象は大きく変わります。前歯の傾きが改善されると、お口の出っ張りが減って口が閉じやすくなり、見た目の印象も大きく変わるんです。過去の症例でも、前歯を正しい位置に引き込むことで、横顔のラインや口元のバランスが劇的に良くなった方が多くいらっしゃいますよ。
なるほど。治療ではどのような方法になるんでしょうか?
前歯を後ろへ引き込むためには、前歯を後ろに動かすスペースが必要です。そのため、多くの場合は上下左右4本の小臼歯を抜いて矯正します。抜歯に抵抗を感じる方も多いのですが、日本人は骨格的にスペースが足りない方が多く、出っ歯の改善には一般的な方法です。
抜歯によりスペースを確保することで、前歯の軸も改善され、かみ合わせも理想的な位置関係に整えることができます。
歯を抜くのは少し不安ですが、他の選択肢もありますか?
もちろんあります。抜歯をせずに治療を行うケースもありますが、口元をしっかり引き込みたい場合は、抜歯が有効なケースが多いです。
治療期間はどのくらいになりますか?
矯正治療自体は約2〜2年半です。その後、歯が元の位置に戻らないように「リテーナー(保定装置)」を2年ほど使用していただきます。保定期間は最初の歯を動かす治療期間に比べて負担は少なく、夜間だけの装着の期間もあります。
リテーナーをやめたら元に戻ってしまうことはないですか?
多少の後戻りはありますが、歯と骨が安定してくるため、元のように大きく前に出てしまうことはありません。リテーナーは“ギブス”のような役割で、動かした歯を新しい位置で固定するために必要な工程です。
よくわかりました。ありがとうございます。検査の予約をとって帰ります!
まとめ
T.Tさんのケースでは、
- 「上顎前突(いわゆる“出っ歯”)」による口元の突出感や閉じにくさに対して、上下顎の抜歯を伴う矯正治療が有効であること
- 歯を引き込む量や角度をコントロールし、口元の印象と噛み合わせのバランスを両立させることが重要であること
という方針でご説明をさせていただきました。
今回の診察では、「前歯が出ている」「口が閉じにくい」といった見た目のお悩みに加え、抜歯の必要性やその影響、装置の選択肢(ワイヤー矯正・マウスピース矯正)、虫歯リスクや保定期間の過ごし方に至るまで、将来の安定性・審美性・実生活への影響を総合的に踏まえたご提案を行いました。
成人矯正では、歯列を整えるだけでなく、口元の印象や横顔のEラインなど顔全体の調和も非常に大切です。T.Tさんのように骨格的な要因を踏まえた治療計画を立てることで、無理なく理想的な見た目と機能を目指すことが可能です。
口元や歯の位置でお悩みの方は、ぜひ一度ご相談ください。ご自身のライフスタイルやご希望に合わせて、最適な治療法をご提案いたします。
この記事の監修者情報
吉田 尚起
日本矯正歯科学会認定医
院長である吉田なおきは、国立大阪大学歯学部、および同大学院にて矯正治療を専門に学び、博士号を取得。大学病院にて7年間にわたり研鑽を積み、300症例以上の矯正治療に携わってきました。
自身も歯並びのコンプレックスを克服した経験から、見た目の美しさだけでなく、噛み合わせや心身の健康を考えた治療を心がけています。
歯科医師全体の約3%しか取得していない日本矯正歯科学会認定医として、お子様から大人の方まで、未来の笑顔をサポートします。
