2025.10.6| 矯正相談集
「前歯の一部が反対に噛み合っている…」とご相談いただいたK.Hさん(4歳・女の子)のケース
「前歯が部分的に噛み合わせが逆になっている気がする」お子様の歯並びに不安を感じてご来院いただくケースは少なくありません。
今回は、交叉咬合(下顎の位置がズレている)を気にして来院された4歳の女の子、K.Hさんとの初診時のやり取りをご紹介します。乳歯列期における早期対応のポイントや、当院が提案したご相談内容についてもお伝えいたします。
患者様情報
年齢 | 4歳 |
性別 | 女の子 |
初診時の画像診断



左側の噛み合わせが上下反対に噛んでいました。下顎の左方向へのズレにより交叉咬合でした。
指吸いにより前歯は出っ歯傾向になっていました。
ご相談のきっかけ
K.Hさんは、お母様が「前歯の噛み合わせが反対の場所がある」「指吸いが続いていて、歯並びに悪影響を及ぼしていないか心配」といった点を気にされて来院されました。
患者様との実際のやり取り
「こんにちは。今日はどういったところが気になって来られましたか?」
「前歯がちょっと反対に噛んでいるように見えて…。それと、指吸いが続いていることも気になります…」
「確かに、左側の咬み合わせの中で上の歯より下の歯が前に出ている“交叉咬合”が見られますね。その影響で真ん中(正中)のずれがあり、全体的に下顎が左側へシフトしているようです。左側の奥歯の噛み合わせも上下が逆転しており、本来は上の歯が外側に来るはずが、下の歯が外に出てしまっています。このまま成長すると、下顎がその方向にさらに引っ張られ、顎全体がずれて成長してしまうリスクがあるため、できれば早めに対応していくのが望ましいですね。」
「また、指吸いの影響で上の前歯が少し前方に傾いている印象もあります。ただ、4歳という年齢を考えると、今の時点で“ひどい出っ歯”と評価するほどではありませんし、出っ歯に関しては成長とともに自然に改善していく可能性も十分あります。」
そうなのですね。どんな装置を使いますか?
「今はまだ乳歯列の段階なので、本格的な矯正装置を使うタイミングではありません。そのため、成長を良い方向へ導く装置『プレオルソ』を使う方法をご提案します。」
「プレオルソは柔らかい素材でできたマウスピース型装置で、寝ている時と日中1時間の装着を続けることで、舌や唇の筋肉のバランスを整え、噛み合わせや顎の成長をを正しい方向に誘導してくれます。」
「装着に慣れるまでは“練習期間”として10〜15分から始め、少しずつ時間を伸ばしていきます。慣れてきたら就寝中にも装着し、お口周りの筋肉のトレーニング(あいうべ体操など)と併用して正常な顎の成長を促していきましょう。」
「装置を使うと、ずれた噛み合わせも治っていくんですか?」
「この装置だけで歯がすべてきれいに並ぶわけではありませんが、顎のずれが進行するのを防ぎ、将来的な噛み合わせを良い方向へ導く効果が期待できます。また、今後生えてくる永久歯の奥歯が交叉咬合にならないようにする意味でも大切です。永久歯が交叉咬合になると改善するための難易度が上がってしまいます。」
「装置の使用はおおよそ7〜8歳頃までを目安とします。その間に前歯や奥歯の永久歯が生えてきますが、もしその後も噛み合わせのズレや歯列の問題が残るようであれば、本格的な小児矯正へ進むことになります。」
わかりました。ありがとうございます。検査の予約をとって帰ります。
まとめ
K.Hさんのケースでは
- 「交叉咬合」や「下顎の左右のずれ」といった咬合の不調和に対して、早期の装置介入(プレオルソ)によって、成長を正しい方向に導いていくことが有効であること
- 成長段階に応じて装置の使用やトレーニングを無理なく取り入れながら、将来的な小児矯正へのスムーズな移行も視野に入れて経過を見ていくことが大切であること
という相談内容となりました。
今回の診察では、目に見える「前歯の噛み合わせ」や「顎のずれ」といったポイントだけでなく、今後の永久歯の生え方や奥歯の咬合関係、また発育期の顎の誘導の必要性など、長期的な視野でのご説明を行いました。
乳歯列期の矯正では、単に見た目を整えるのではなく、お子様の成長を味方につけながら、顎の正しい発達を促していくことが最も重要です。
特にK.Hさんのように、早い段階で顎のずれが見つかった場合には、プレオルソを取り入れることで、本格的な治療への負担を減らし、自然なかたちでの改善を目指します。
お子様の噛み合わせや歯並びで「少し気になるかも」と感じたら、ぜひ一度お気軽にご相談ください。お子様の将来に無理のない、最適な選択肢を一緒に考えていきましょう。
この記事の監修者情報
吉田 尚起
日本矯正歯科学会認定医
院長である吉田なおきは、国立大阪大学歯学部、および同大学院にて矯正治療を専門に学び、博士号を取得。大学病院にて7年間にわたり研鑽を積み、300症例以上の矯正治療に携わってきました。
自身も歯並びのコンプレックスを克服した経験から、見た目の美しさだけでなく、噛み合わせや心身の健康を考えた治療を心がけています。
歯科医師全体の約3%しか取得していない日本矯正歯科学会認定医として、お子様から大人の方まで、未来の笑顔をサポートします。
