2025.10.8| 矯正相談集
「前歯がなかなか生えてこない」「下の歯がガタガタに…」とご相談いただいたS.Yさん(7歳・男の子)のケース
「前歯の生え変わりが遅い気がする」「下の歯がガタガタしてきた」…お子様の歯並びに関して気になるポイントがあるものの、どのタイミングで矯正歯科を受診すればよいかわからないと悩む親御様は少なくありません。
今回は、前歯のガタガタや生え変わりの遅さを心配して来院された7歳の男の子、S.Yさんとの初診時のやり取りをご紹介します。見た目だけでなく、将来的な噛み合わせや成長まで見据えた当院の相談内容についてもお伝えします。
患者様情報
年齢 | 7歳 |
性別 | 男性 |
初診時の画像診断



上下の歯並びにガタガタが見られました。特に上の歯並びの前から2番目の歯は生えるスペースが足りないです。
左上の前から3番目の乳歯の上下の噛み合わせが上下反対でした。
ご相談のきっかけ
S.Yさんは、学校の歯科健診で「歯並びが気になる」と指摘され、かつご兄弟も矯正経験があったことから、将来的な矯正治療の必要性を考えて来院されました。お母様は「上の前歯がなかなか生えてこないこと」や「下の歯のガタつき」に不安を感じておられました。
お母様によると、上のお兄さんも生えるスペースがなくガタガタの状態だったため、似たような矯正装置を使って治療されたそうです。今回はそれと同じ方法で進めるのか、他の選択肢もあるのかを知りたくて来院されたとのことです。
患者様との実際のやり取り
こんにちは。今日はどんなことが気になって来てくださいましたか?
前歯の2番目の歯がなかなか生えてこないのと、下の歯がガタガタしてきていて気になっています。
なるほど。S.Yさんのレントゲンを拝見すると、上の2番目の歯が生えるスペースが足りず、まだ生えてこれていない様子が見受けられます。また、下の前歯もスペース不足で少し捻じれて生えてきていますね。
お兄ちゃんの時と似てる気がします。やはり顎が狭いということですか?
そうですね。お兄ちゃんと同様に、顎の横幅が少し足りていません。矯正装置で顎の横幅の成長を広げることで、歯が生えるスペースを確保していく必要があります。
受け口の傾向があると聞いたのですが、それは問題ですか?
ご安心ください。S.Yさんの場合は、前歯の一部にわずかな受け口傾向が見られる程度で、現段階では軽度です。ただし、ご家族に受け口の傾向がある方がいる場合は、今後その傾向が強まる可能性があるため、引き続き観察が必要です。
今後はまず、上下の顎の幅を広げるための「拡大装置」を装着します。これはお兄さんも使っていた、ネジを巻いて徐々に顎を広げる装置ですね。
はい、覚えています。あの装置だけで前歯も綺麗に並ぶものですか?
実は、拡大装置は「顎を広げること」が主な役割です。多少前歯も整いますが、きれいに並べるには追加でワイヤー矯正かマウスピース矯正を併用する必要があります。当院では、小児矯正の範囲内で前歯もある程度並べることを目指しています。
装置は何を使いますか? ワイヤーかマウスピース、どちらがいいのか迷っています。
どちらもメリットがあります。マウスピースは目立たず取り外しができる一方、装着時間をきちんと管理する必要があります。ワイヤーは外れる心配がなく管理は楽ですが、見た目や歯磨きの難しさもあります。S.Yさんの性格や生活スタイルを踏まえて、ご家族でご検討いただければと思います。
拡大装置で6か月〜1年ほどかけて顎を広げ、その後ワイヤーまたはマウスピースで1〜1.5年かけて歯を並べていきます。全体として約2〜3年が治療の目安です。
後戻りは大丈夫ですか?
多少の後戻りはありますが、永久歯が全て生え揃い、上下の歯がしっかり咬み合えば自然と安定してきます。治療終了後には「後戻り防止装置(リテーナー)」を装着して、歯並びを定着させていきます。
わかりました。ありがとうございます!検査の予約をとって帰ります。
まとめ
S.Y.さんのケースでは、
- 「前歯の生え変わりの遅れ」と「下の歯のガタつき」に加え、将来的な受け口傾向の可能性を見据えた成長観察が有効であること
- 顎の横幅の不足に対して拡大装置による治療を行い、スペースを確保しながら自然な歯の萌出と噛み合わせの安定を図ることが重要であること
という相談結果となりました。
今回の診察では、「永久歯が生えてこない」「歯並びがガタガタしてきた」といった見た目の変化に対するご不安だけでなく、骨格的な成長の可能性や歯の萌出スペース、さらに将来的な二期治療の選択肢まで踏み込んだ多角的なご説明を行いました。
小児矯正では、単に歯を並べるだけでなく、顎の成長をうまく活かしながら、自然な噛み合わせや安定した歯列の土台を作ることがとても大切です。特にS.Y.さんのように、お兄さんにも似た症状が見られた場合には、成長を早めにサポートしてあげることで、将来的な矯正負担を軽減することが期待できます。
「生え変わりがうまく進まない」「歯が並ぶか心配」と感じたら、早期のご相談がカギになります。お子様一人ひとりに合った最適な治療方針をご提案いたしますので、ぜひお気軽にご相談ください。
この記事の監修者情報
吉田 尚起
日本矯正歯科学会認定医
院長である吉田なおきは、国立大阪大学歯学部、および同大学院にて矯正治療を専門に学び、博士号を取得。大学病院にて7年間にわたり研鑽を積み、300症例以上の矯正治療に携わってきました。
自身も歯並びのコンプレックスを克服した経験から、見た目の美しさだけでなく、噛み合わせや心身の健康を考えた治療を心がけています。
歯科医師全体の約3%しか取得していない日本矯正歯科学会認定医として、お子様から大人の方まで、未来の笑顔をサポートします。
