2025.12.1 矯正相談集

「埋まっている犬歯とスペース不足が心配で…」とご相談いただいたH.Mさん(10歳・女の子)のケース

「レントゲンで“犬歯が深いところにある”と言われた」「このまま生えてくるのか、それとも抜くのか不安」──
生え変わりの時期に、埋伏歯(骨の中に埋まったままの歯)やスペース不足について相談に来られるご家族は少なくありません。

今回は、「上の3番目の歯(犬歯)が生えてこない」「その周囲のスペースが足りない」ことを心配されて来院された、10歳の女の子、H.Mさんとの初診相談時のやりとりをご紹介します。
すでに他院で拡大治療を受けられている経過も踏まえながら、今後の治療方針について当院の考え方をお伝えします。

患者様情報

年齢10歳
性別女性

初診時の画像診断

上顎の歯並びは前から3番目の歯(犬歯)が生えるスペースが足りません。

レントゲンを確認すると、左上の前から3番目の歯ほ方向が90度上を向いています。

ご相談のきっかけ

H.Mさんは、以前から別のかかりつけの歯科医院で上下顎の拡大治療を受けており、「奥歯の横幅はだいぶ広がった」とのことでしたが、

  • 上の3番目の歯(犬歯)がまだ生えてこない
  • その周囲のスペースも足りないと言われた
  • レントゲンで見ると、犬歯の位置がかなり深いと説明を受けた

という状況で、今後の治療をどう進めるべきか迷われていました。

「今すぐに矯正治療を進めるべきなのか」
「矯正治療を進めるならどういった治療内容になるのか」

を改めて確認したいとのことで、当院にセカンドオピニオンとしてご相談いただきました。

患者様との実際のやり取り

はじめまして。今日はどんなところが一番気になっていますか?

上の犬歯(3番)が全然生えてこなくて…前の先生から「深い場所にあってスペースがない」と言われました。ワイヤーやマウスピースで治療すると聞きましたが、どういった治療を進めるべきか決めきれず、相談に来ました。

CTを見ると、左上の犬歯はかなり深い位置にあります。
正直、この高さから“自然に降りてくる可能性は低い”です。外科的に引っ張り出す方法もありますが、この深さだと成功率は高くありません。

左上の犬歯はやっぱり難しいんですね…。
他の医院の先生には「左上の犬歯は抜きますが、右上の犬歯は残していきましょう」と言われましたが、それで良いのでしょうか?

左上の犬歯の抜歯は現実的な選択肢です。ただ、犬歯は根が長く、とても大事な歯なので、右上の犬歯はできれば残したいという気持ちはあります。
当院では、まず奥歯を後ろに下げてスペースを作る方法(ヘッドギアなど)で、“右上の犬歯を残せる余地”を作ることはできます。

主人は「片側だけ犬歯がないのはバランスが悪いから両側抜いた方がいいのでは?」と言っていて…。

その考えも“間違いではありません”。
右の歯も抜歯する場合は、スペースを作る必要がないので、現段階で急いで矯正治療を開始しなくても良い噛み合わせを作ることができます。

先生ならどうされますか?

僕ならまずヘッドギアで奥歯を後ろに下げ、できる限りスペースを作り、今ある歯を残していくことをお勧めします。
「最初から抜歯」より、まず残せる可能性を一度きちんと確認したいです。

治療の痛みや、装置はどんな感じですか?

ワイヤー矯正は“最初の1週間だけ”硬いものを噛むと痛みますが、普段の生活はほぼ問題ありません。

なるほど…少し家族で相談します。

まとめ

H.M.さんのケースでは、

上顎の犬歯(3番)が非常に深い位置に埋伏しており、自然萌出の可能性が低いこと
現状の骨格や奥歯の位置関係から、前後的なスペース不足を改善する治療アプローチが必要であること
が主な相談結果となりました。

今回の診察では、犬歯の深い埋伏による生えにくさの問題だけでなく、奥歯の前後的なズレ(軽度の出っ歯傾向)、今後の永久歯の萌出スペース、また治療方法ごとのメリット・デメリット(拡大装置・ヘッドギア・抜歯の選択肢)についても、将来的な噛み合わせの安定性と横顔のバランスを見据えながらご説明しました。

小児矯正では、永久歯が生えそろう前の限られた時期に「顎の成長を利用してスペースを作る」「理想的な噛み合わせの土台を整える」ことができる点が大きなメリットです。

H.Mさんのように、
・犬歯の埋伏が深い
・前歯のスペース不足が残っている
・奥歯の関係を整える必要がある
といったケースでは、拡大だけでなく、ヘッドギアによる奥歯の後方移動など、成長期に適した治療を組み合わせることで、抜歯を避ける可能性を広げることができます。

将来的に「犬歯を残せるか」「抜歯が必要になるか」という判断は、成長の経過やスペース獲得量によって変わるため、今後も経過を慎重に見ながら最適な計画をご提案していきます。

お子様の歯並びや埋伏歯についてご不安のある方は、どうぞお気軽にご相談ください。
将来の噛み合わせや見た目のバランスを考えながら、最も負担の少ない治療方針を一緒に考えていきましょう。


この記事の監修者情報

吉田 尚起

日本矯正歯科学会認定医

院長である吉田なおきは、国立大阪大学歯学部、および同大学院にて矯正治療を専門に学び、博士号を取得。大学病院にて7年間にわたり研鑽を積み、300症例以上の矯正治療に携わってきました。

自身も歯並びのコンプレックスを克服した経験から、見た目の美しさだけでなく、噛み合わせや心身の健康を考えた治療を心がけています。

歯科医師全体の約3%しか取得していない日本矯正歯科学会認定医として、お子様から大人の方まで、未来の笑顔をサポートします。

〒560-0056 大阪府豊中市宮山町1丁目1−47

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