2025.12.1| 矯正相談集
「受け口が気になる…」とご相談いただいたE.Mさん(5歳・女の子)のケース
「下の前歯が前に出ている」「歯医者さんで“反対咬合ですね”と言われた」…
小さなお子様のかみ合わせについて不安を感じて来院される親御様は少なくありません。
今回は、受け口(反対咬合)と下の前歯の生え方を心配されて来院された5歳の女の子、E.Mさんとの初診相談時のやり取りをご紹介します。
ただ見た目を整えるだけでなく、将来の顎の成長を見据えた当院の治療方針についてもお伝えします。
患者様情報
| 年齢 | 5歳 |
| 性別 | 女性 |
初診時の画像診断



前歯の噛み合わせが上下で前後反対になっています。(反対咬合)
上の歯並びは隙間なく詰まっており、下の歯並びはスペースがあります。
下の前歯の永久歯が子供の歯の内側から生えてきています。
ご相談のきっかけ
E.Mさんは、通りがかりで当院を知っていただき、
「下の前歯が内側から生えてきた」「保育園健診で“反対咬合”と言われたことがある」
とのことで、お母様と一緒に初めて来院されました。
下の前歯が内側から生えてきて、乳歯がまだ残っていること、
さらに上下の前歯が反対に咬んでいることが気になり、
「このまま様子を見ていいのか」「いつ何をしたらよいのか」を一度きちんと聞きたいとご相談くださいました。
患者様との実際のやり取り
はじめまして。今日はいちばん何が気になって来てくださいましたか?
下の前歯が後ろから生えてきていて、乳歯も残っているんです。
保育園の健診でも“受け口ぎみですね”と言われたことがあって…。
今のうちに何かした方がいいのか気になって来ました。
拝見すると、下の前歯が内側から生えてきていて、もともとの乳歯の根っこが溶けきらずに“残っている状態”ですね。これはこの年齢ではよく起こることで、特に下の前歯4本はこうなりやすい歯なんです。
レントゲンでも、大人の歯がしっかり準備されていて、乳歯の下から少しズレた位置で生えてきているのがわかります。こうなると、乳歯は自然には抜けにくいので、“早めに抜いてあげた方がいい状態”になります。
やっぱり抜いた方がいいんですね…。痛みは大丈夫ですか?
今の状態だと、乳歯の根っこはほとんど溶けていて“先っぽが少し残っているだけ”なので、抜くときの負担はかなり少ないです。
また、上下のかみ合わせは、現在“反対咬合(受け口)”になっています。
このままでは上あごの前方向への成長が妨げられやすいため、
プレオルソ(マウスピース型の装置)で上あごの成長と噛み合わせを正しい方向へ誘導することをおすすめします。
装置はいつ、どれくらいつけるんですか?
基本は夜寝るときと、おうちで1時間ほどの使用です。外ではつけなくて大丈夫です。
受け口の改善と、舌の位置・口呼吸の改善も期待できます。
なるほど。口が開きやすいのも気になっていて、鼻づまりも少しあるので…。
まさにプレオルソの得意分野ですね。
ベロを上あごの正しい位置(“スポット”と呼ばれる場所)に誘導して、口を閉じる筋肉のトレーニングにもなります。
“お口ぽかん”“口呼吸ぎみ”なお子さんには、とても良い装置だと思います。
お話を聞いて、早めに始めた方が良さそうだと感じました。お願いします。
まとめ
E.Mさんのケースでは、
・「下の前歯が内側から生えてきて乳歯が抜けない」という状態に対して、乳歯を早めに抜歯してあげることが効果的であること
・受け口(反対咬合)による上あごの成長への影響を考慮し、マウスピース型装置(プレオルソ)でかみ合わせと舌の位置を整えることが重要であること
という相談結果になりました。今回の診察では、前歯の生え変わりに伴う「乳歯の抜けにくさ」や「受け口の見た目」といったお悩みだけでなく、下の歯から大人の歯が生えてきた場合に起こりやすい歯列の乱れ、口呼吸の影響、そして顎の成長への関わりまで、将来的な改善を見据えた多角的なご説明を行いました。
小児矯正では、ただ歯を動かすだけでなく、顎の成長を正しく導くことがとても大切です。
特にE.Mさんのように、早期から受け口の傾向が見られるケースでは、乳歯の抜歯やマウスピース型装置を上手に取り入れることで、自然な成長を妨げずに改善へと導くことが可能です。
お子様の受け口や前歯の生え変わりで不安を感じられる方は、ぜひ一度ご相談ください。
お子様にとって負担の少ない、最適な治療方法を一緒に考えていきましょう。
この記事の監修者情報
吉田 尚起
日本矯正歯科学会認定医
院長である吉田なおきは、国立大阪大学歯学部、および同大学院にて矯正治療を専門に学び、博士号を取得。大学病院にて7年間にわたり研鑽を積み、300症例以上の矯正治療に携わってきました。
自身も歯並びのコンプレックスを克服した経験から、見た目の美しさだけでなく、噛み合わせや心身の健康を考えた治療を心がけています。
歯科医師全体の約3%しか取得していない日本矯正歯科学会認定医として、お子様から大人の方まで、未来の笑顔をサポートします。
