2025.12.25 コラム

矯正で歯を削るって本当?IPR(ストリッピング)の痛み・安全性と非抜歯矯正を徹底解説


「矯正治療をしたいけれど、できれば抜歯は避けたい」「健康な歯を削ると聞くと不安になる」——
矯正を検討している多くの方が、こうした悩みや迷いを抱えています。特に成人矯正では、見た目だけでなく将来の歯の健康まで考えて治療法を選びたいと感じる方も少なくありません。

近年、非抜歯矯正の選択肢の一つとして注目されているのが、歯と歯の間を**ごくわずかに削る処置(IPR/ストリッピング)**を併用する方法です。「歯を削る」と聞くとネガティブな印象を持たれがちですが、実際には削る量や目的、安全性がきちんと管理された医療行為です。

本記事では、削る矯正(IPR)とはどのような処置なのかを軸に、
・非抜歯矯正の考え方
・削る量や痛みの有無
・メリットとリスク
・抜歯矯正との違い
といったポイントを、初めて矯正を考える方にもわかりやすく解説していきます。

「自分にはどんな矯正方法が合っているのか」を判断するための材料として、安心して読み進めていただける内容をお届けします。

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非抜歯矯正とは?基本の考え方

非抜歯矯正とは、その名の通り永久歯を抜かずに歯並びを整える矯正治療のことです。
「矯正=抜歯が必要」というイメージを持っている方も多いですが、すべての症例で抜歯が必須というわけではありません。歯の大きさや顎の幅、噛み合わせの状態によっては、歯を残したまま整えることが可能なケースもあります。

非抜歯矯正では、歯を並べるためのスペースを別の方法で確保することが基本的な考え方になります。たとえば、歯列をわずかに広げたり、歯の傾きを調整したり、必要に応じて歯と歯の間を少しだけ削るIPR(ストリッピング)を併用することで、抜歯せずに歯列を整えていきます。

この治療法は「できるだけ健康な歯を残したい」「将来的な歯の本数を減らしたくない」という成人の方にとって、心理的なハードルが低い選択肢といえるでしょう。一方で、歯並びの乱れが強い場合や顎の骨格的なズレが大きい場合には、非抜歯では無理が生じることもあります。

つまり非抜歯矯正は、誰にでも適応できる万能な方法ではなく、精密な診断のもとで選択される治療法です。
次では、非抜歯矯正を選ぶことで得られる具体的なメリットについて、もう少し詳しく見ていきます。

非抜歯矯正のメリット

非抜歯矯正の最大のメリットは、健康な永久歯を残したまま歯並びを整えられる可能性がある点です。抜歯に対して不安や抵抗感を持つ方にとって、「歯を抜かずに済むかもしれない」という選択肢があること自体が、大きな安心材料になります。

まず挙げられるのが、歯の本数を減らさずに噛み合わせを整えられるという点です。歯は一度抜いてしまうと元に戻すことはできません。非抜歯矯正では、歯列の幅の調整や歯の移動、IPR(歯の間をわずかに削る処置)などを組み合わせることで、必要なスペースを確保し、自然な歯列を目指します。

また、症例によっては治療期間が比較的短くなる可能性もあります。抜歯矯正では、抜いたスペースを閉じる工程が必要になるため、その分治療が長期化することがあります。一方、非抜歯矯正では歯の移動距離が小さく済むケースもあり、全体の治療計画がシンプルになることがあります。

見た目の面でもメリットがあります。抜歯矯正では口元が下がることで横顔の印象が変わることがありますが、非抜歯矯正では口元のボリュームを保ちやすい傾向があります。特に、口元の印象を大切にしたい成人の方にとっては重要なポイントでしょう。

ただし、これらのメリットは適切な診断のもとで行われた場合に限られるものです。無理に非抜歯を選択すると、歯並びや噛み合わせに悪影響が出ることもあります。次の見出しでは、非抜歯矯正が「向いているケース」と「難しいケース」について、具体的に解説します。

非抜歯矯正の適応と限界

非抜歯矯正は魅力的な選択肢ですが、すべての歯並びに適応できるわけではありません。大切なのは、「非抜歯で治せるかどうか」を希望だけで判断せず、歯並びや顎の状態を客観的に評価することです。

一般的に非抜歯矯正が適応されやすいのは、歯のガタつきが軽度〜中等度のケースです。たとえば、前歯に少し重なりがある、歯列がやや狭いといった状態であれば、歯の移動やIPR(歯の間を削る処置)を組み合わせることで、抜歯をせずに整えられる可能性があります。また、もともと顎の幅にある程度余裕がある方も、非抜歯で進めやすい傾向があります。

一方で、歯の重なりが非常に強い場合や、顎の骨格そのものにズレがある場合は、非抜歯矯正では限界が生じることがあります。無理に歯を並べようとすると、歯が前方に押し出されて口元が突出したり、噛み合わせが不安定になったりするリスクがあるためです。

また、非抜歯矯正は「歯を抜かない=歯を動かさなくていい」という意味ではありません。歯を支える骨の範囲を超えた移動はできないため、歯周組織や噛み合わせのバランスを考慮した精密な診断が不可欠です。そのため、レントゲンや口腔内スキャンなどの検査をもとに、治療の可否を慎重に判断する必要があります。

非抜歯矯正は「できるか・できないか」だけでなく、「無理なく長期的に安定するか」が重要なポイントです。
次の章では、非抜歯矯正でよく用いられる**「歯を削る処置(IPR/ストリッピング)」とは何か**について、具体的に解説していきます。

▶️非抜歯矯正の限界についてはこちら

矯正で「削る」とは?IPR/ストリッピングの概要

矯正治療で使われる「歯を削る処置」とは、IPR(Interproximal Reduction)やストリッピングと呼ばれる方法を指します。これは、歯の表面全体を削るのではなく、歯と歯の間(隣接面)をほんのわずかに調整する処置です。専門的には「ディスキング」と呼ばれることもあります。

IPRの主な目的は、歯を並べるためのスペースを確保することです。非抜歯矯正では抜歯による大きなスペースが作れないため、歯列の拡大や歯の移動とあわせて、ミリ単位のスペース調整が重要になります。その手段の一つが、歯と歯の間を少しだけ削るIPRなのです。

「削る」と聞くと、歯が薄くなったり弱くなったりするのではと不安になる方も多いでしょう。しかし、IPRで調整するのはエナメル質のごく表層部分のみで、削る量も厳密に管理されます。治療計画の段階で「どの歯を」「どれくらい」削るかが決められ、無計画に行われることはありません。

特に近年は、マウスピース矯正の普及により、歯の移動量を事前にシミュレーションしたうえでIPRを組み合わせるケースが増えています。これにより、抜歯を回避しながら歯列を整える現実的な選択肢として、IPRは重要な役割を担っています。

ただし、IPRはあくまで「補助的な処置」であり、すべての症例で必要になるわけではありません。次の見出しでは、なぜ歯を削る必要があるのか、その理由と役割について詳しく解説していきます。

歯を削る理由(スペース確保・形状調整

矯正治療でIPR(歯を削る処置)を行う最大の理由は、歯を並べるためのスペースを確保することです。
非抜歯矯正では、抜歯のように大きな空間を作ることができないため、ミリ単位での調整を積み重ねて歯列を整えていきます。

たとえば、前歯が少し重なっているケースでは、「歯が大きすぎる」のではなく、歯の合計幅に対して顎のスペースがわずかに足りないことが原因になっていることがあります。このような場合、歯と歯の間を0.数mmずつ調整することで、全体として数mm分のスペースを生み出すことができます。このスペースを利用して歯を正しい位置に動かすのが、IPRの役割です。

もう一つの目的が、歯の形状を整えることです。歯は一見同じように見えても、実際には隣り合う歯同士の形や幅に微妙な違いがあります。角ばっている部分や、わずかに張り出している部分を整えることで、歯が並びやすくなり、仕上がりも自然になります。特に前歯では、見た目のバランスを考慮して形態修正を行うこともあります。

重要なのは、IPRは「無理に削る処置」ではなく、歯を守りながら矯正を成立させるための調整手段だという点です。抜歯を回避しつつ、歯列全体のバランスや噛み合わせを整えるために、必要最小限で計画的に行われます。

次の見出しでは、多くの方が最も気になる
実際にはどれくらい削るのか?安全性は大丈夫なのか
という点について、具体的な数値を交えながら解説します。

どれくらい削るの?処置の程度

IPR(ストリッピング)で削る量は、1か所あたりおおよそ0.1〜0.5mm程度が一般的です。
「削る」と聞くと大きく削られるイメージを持たれがちですが、実際には髪の毛数本分ほどの非常にわずかな量であり、見た目が変わるほど削ることはありません。

歯の一番外側にあるエナメル質の厚みは、部位にもよりますが約1〜2mmあります。IPRでは、そのエナメル質のごく表層部分のみを計画的に調整するため、内部の象牙質に達することは通常ありません。事前にレントゲンや口腔内スキャンで歯の厚みや形を確認したうえで、安全な範囲内で行われます。

また、IPRは1回でまとめて削るのではなく、必要に応じて複数回に分けて行うこともあります。矯正の進行に合わせて少しずつ調整することで、歯や歯周組織への負担を抑えながらスペースを確保していきます。このように、処置のタイミングや量は治療計画に基づいて細かく管理されています。

処置後には、削った部分をなめらかに研磨し、プラークが溜まりにくい状態に整えます。適切な仕上げを行うことで、日常生活で違和感を覚えることはほとんどありません

とはいえ、多くの方が気になるのは「痛みがあるのかどうか」でしょう。
次の見出しでは、IPR時の痛みや不快感、日常生活への影響について、患者さんの不安に寄り添いながら解説します。

削る処置は痛い?患者の不安への回答

IPR(歯を削る処置)について多くの方が最初に気にされるのが、**「痛みはあるのか?」**という点です。結論から言うと、痛みを感じることはほとんどありません

IPRで調整するのは、歯の神経が存在しないエナメル質の表面部分のみです。そのため、虫歯治療のように「ズキッとする痛み」が出ることは基本的にありません。実際の処置中は、「振動を感じる」「少し押される感じがする」といった軽い違和感を覚える程度で終わる方がほとんどです。

また、処置時間自体も短く、1か所あたり数十秒〜数分程度で完了します。必要に応じて表面を丁寧に研磨するため、処置後に歯が引っかかる感じや鋭い感触が残ることもほとんどありません。

処置後についても、「しみるのでは?」と心配されることがありますが、一時的に冷たいものが少ししみる程度で済むケースが大半です。数日以内に落ち着くことが多く、日常生活に大きな支障が出ることはほとんどありません。痛みが出やすい方には、処置量をさらに細かく調整するなど、負担を抑えた対応が取られます。

このように、IPRは患者さんの不安が大きい処置でありながら、実際には負担の少ない矯正補助処置です。ただし、安全性を保つためには、適切な診断と技術が不可欠です。

次の章では、IPRを行うことで得られるメリットと、あらかじめ知っておきたいリスクや注意点を整理して解説します。

削る矯正(IPR)のメリットとリスク

IPR(歯を削る処置)は、非抜歯矯正を成立させるうえで重要な役割を果たしますが、メリットだけでなく注意すべき点もある処置です。
大切なのは、「削る=悪いこと」と単純に判断するのではなく、どのような目的で、どの程度行われるのかを正しく理解することです。

IPRの最大の利点は、抜歯を回避できる可能性を広げられることにあります。歯を1本抜くほどの大きなスペースは作れませんが、歯列全体で数mmの余裕を生み出すことで、軽度〜中等度の歯列不正であれば十分に対応できるケースも少なくありません。特に「できるだけ歯を残したい」と考える成人の方にとって、現実的な選択肢となります。

一方で、IPRは万能ではありません。削れる量には明確な上限があり、過度に行うことはできないため、歯並びの状態によっては適応外となる場合もあります。また、エナメル質を扱う処置である以上、清掃状態や術後のケアも重要になります。

この章ではまず、IPRによって得られる具体的なメリットを整理し、そのうえで知っておくべきリスクや注意点、さらにどのような症例に向いているのかを順に解説していきます。

メリット:抜歯回避・治療期間の改善

IPR(歯を削る処置)を併用する最大のメリットは、抜歯をせずに矯正治療を進められる可能性が広がる点にあります。
歯並びの乱れが軽度〜中等度の場合、歯と歯の間をわずかに調整するだけで、歯を並べるために必要なスペースを確保できることがあります。

特に「健康な歯をできるだけ残したい」「抜歯に抵抗がある」という方にとって、IPRは心理的な負担を軽減できる方法です。抜歯矯正では、治療前から「本当に歯を抜いて大丈夫なのか」と悩む方も少なくありませんが、IPRを取り入れることで治療の選択肢が増え、納得したうえで矯正を始めやすくなるというメリットがあります。

また、治療期間の面でも利点が期待できるケースがあります。抜歯矯正では、抜いたスペースを閉じるために歯を大きく移動させる必要があり、その分時間がかかることがあります。一方、IPRでは歯の移動距離が比較的短く済むため、治療計画がスムーズに進みやすく、結果として全体の治療期間が短縮されることもあります。

さらに、IPRは歯列全体のバランスを細かく調整できるため、仕上がりの精度を高めやすい点も特徴です。歯の幅や形を微調整することで、歯がきれいに並びやすくなり、後戻りのリスクを抑える効果も期待されます。

ただし、これらのメリットは適切な症例選択と処置量の管理があってこそ成り立つものです。次の見出しでは、IPRに伴うリスクや注意点について、事前に知っておきたいポイントを解説します。

リスク・注意点:エナメル質・清掃面

IPR(歯を削る処置)は安全性の高い方法ですが、いくつか知っておくべきリスクや注意点もあります。事前に理解しておくことで、過度な不安を避け、納得したうえで治療を選択しやすくなります。

まず意識しておきたいのが、エナメル質は再生しないという点です。IPRで削る量はごくわずかとはいえ、一度削った部分が元に戻ることはありません。そのため、処置量を正確に管理し、削りすぎないことが非常に重要です。経験や診断が不十分な状態で過度なIPRを行うと、歯の耐久性や長期的な安定性に影響する可能性があります。

次に注意したいのが、**清掃性(歯磨きのしやすさ)**です。歯と歯の間を削った直後は、表面が一時的にざらついた状態になることがあります。適切に研磨処理を行えば問題ありませんが、仕上げが不十分だとプラーク(歯垢)が溜まりやすくなることがあります。そのため、処置後の研磨と、日常のセルフケア指導が欠かせません。

また、IPR後はデンタルフロスや歯間ブラシの使用がより重要になります。歯並びが整ってくる過程で歯と歯の接触関係も変化するため、定期的なチェックと清掃習慣の見直しが、むし歯や歯肉トラブルの予防につながります。

このように、IPRは「正しく行えば安全性の高い処置」ですが、誰にでも・どんな状態でも行えるものではないという側面もあります。
次の見出しでは、IPRがどのような歯並びの方に向いているのか、適応症例の考え方について具体的に解説します。

適応症例の見極め

IPR(歯を削る処置)が向いているかどうかを判断するうえで最も重要なのは、歯並び全体を「量」と「バランス」で評価することです。単に「ガタガタしているから削る」「抜歯は避けたいからIPRをする」という判断では、長期的に安定した結果は得られません。

一般的にIPRが適応されやすいのは、歯の重なりが軽度〜中等度のケースです。たとえば、前歯に少しデコボコがある、歯列がわずかに狭い、といった状態であれば、歯と歯の間を合計で数mm調整することで、抜歯をせずに歯を整えられる可能性があります。特に、歯のサイズがやや大きめな方や、歯の形が角ばっている方は、IPRによる微調整が有効になることがあります。

一方で、**重度の叢生(歯の重なりが非常に強い状態)**や、顎の骨格的なズレが大きいケースでは、IPRだけで十分なスペースを確保することは困難です。このような状態で無理にIPRを行うと、歯が前方に押し出されて口元が突出したり、噛み合わせが不安定になったりするリスクが高まります。そのため、抜歯矯正を含めた別の選択肢が検討されます。

また、歯周病の進行がある場合や、エナメル質がもともと薄い場合も、IPRは慎重な判断が必要です。歯や歯周組織の健康状態を無視して治療を進めることはできません。

このように、IPRの適応は**「削れるかどうか」ではなく、「削っても将来にわたって安定するか」**が基準になります。精密検査と丁寧なカウンセリングを通じて、自分に合った治療法を選ぶことが大切です。

抜歯矯正との比較(メリット・デメリット)

矯正治療を検討する際、多くの方が迷うのが
「非抜歯(IPRを含む)で進めるべきか」「抜歯矯正を選ぶべきか」
という点です。どちらが良い・悪いという単純な話ではなく、歯並びの状態・骨格・仕上がりのゴールによって最適な選択は変わります。

抜歯矯正は、歯を抜くことで大きなスペースを確保できるため、重度の歯列不正にも対応できる確実性があります。一方、非抜歯矯正(IPR含む)は、歯を残しながら整えるというメリットがある反面、適応には限界があります。

ここでは、両者の違いを「スペースの作り方」「治療の負担や見た目」「選択の考え方」という観点から整理していきます。

スペースの作り方の違い

矯正治療では、「歯をどうやって並べるスペースを作るか」が治療方針を大きく左右します。
非抜歯矯正(IPRを含む)と抜歯矯正では、このスペース獲得の考え方が根本的に異なります。

抜歯矯正の場合、主に小臼歯などを抜くことで、1本あたり6〜8mm程度の大きなスペースを確保できます。この空間を利用して、重なり合った歯を整えたり、前に出ている歯を後方へ移動させたりすることが可能です。そのため、歯のガタつきが強いケースや、口元の突出感をしっかり改善したい場合には、抜歯矯正が有効な選択肢となります。

一方、非抜歯矯正では、複数の方法を組み合わせて少しずつスペースを作るのが特徴です。
具体的には、

  • 歯列をわずかに広げる
  • 歯の傾きを調整する
  • IPR(歯と歯の間を0.数mmずつ削る)

といった方法を積み重ね、全体で数mmのスペースを確保します。IPRはこの中の一手段であり、「抜歯ほどの大きな変化は必要ないが、わずかな調整が必要」というケースで力を発揮します。

つまり、大きなスペースが必要な場合は抜歯矯正、微調整で対応できる場合は非抜歯矯正という考え方が基本になります。無理に非抜歯にこだわると、歯が前方に押し出されたり、噛み合わせが不安定になったりするため、スペース量の見極めが非常に重要です。

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治療の負担・見た目の違い

非抜歯矯正(IPRを含む)と抜歯矯正では、治療中の負担感や見た目の印象にも違いがあります。矯正治療は数年単位で続くことが多いため、日常生活への影響をイメージしておくことが大切です。

まず治療の身体的・心理的負担という点では、非抜歯矯正のほうが比較的軽く感じられるケースがあります。抜歯矯正では、治療開始前後に抜歯処置が必要となり、腫れや痛み、食事のしづらさを一時的に感じることがあります。一方、IPRは歯を抜く処置がないため、治療開始時のハードルが低く、「矯正に踏み出しやすい」と感じる方も少なくありません。

治療期間中の見た目にも違いが出ることがあります。抜歯矯正では、歯を大きく動かす過程で一時的に隙間が目立つことがあります。もちろん最終的には閉じていきますが、治療途中の見た目が気になる方もいます。非抜歯矯正では、歯の移動量が比較的少ないため、治療途中の変化が穏やかで、周囲に気づかれにくい場合があります。

また、マウスピース矯正との相性もポイントです。非抜歯矯正+IPRは、マウスピース矯正と組み合わせやすい治療設計であることが多く、装置が目立ちにくい点を重視する成人の方に選ばれやすい傾向があります。仕事や人前に出る機会が多い方にとっては、大きなメリットといえるでしょう。

ただし、抜歯矯正は「負担が大きい代わりに確実性が高い」という側面があります。歯並びや口元の改善をしっかり行いたい場合には、見た目や一時的な負担よりも、治療結果の安定性を優先すべきケースもあります。

どちらを選ぶべき?選択のポイント

非抜歯矯正(IPRを含む)と抜歯矯正のどちらを選ぶべきかは、「抜きたくないかどうか」だけで決めるものではありません。大切なのは、歯並びの状態と治療後の安定性、そしてご自身の価値観を総合的に考えることです。

まず重要なのが、歯を並べるために必要なスペース量です。歯の重なりが軽度〜中等度で、IPRや歯の移動による微調整で対応できる範囲であれば、非抜歯矯正が現実的な選択肢になります。一方、歯のガタつきが強い場合や、前歯の突出感をしっかり下げたい場合には、抜歯による十分なスペース確保が必要になることがあります。

次に考えたいのが、仕上がりのイメージと長期的な安定性です。非抜歯矯正は歯を残せる反面、無理な設計をすると後戻りや噛み合わせの不安定さにつながることがあります。抜歯矯正は治療の負担がある一方で、歯列や口元を根本から整えやすく、結果が安定しやすいケースも多くあります。

また、ライフスタイルや治療中の優先事項も判断材料になります。
・治療中の見た目をできるだけ目立たせたくない
・仕事やイベントとの兼ね合いを重視したい
・多少時間がかかっても確実な結果を求めたい

このような希望によって、適した治療法は変わってきます。

最終的には、「非抜歯か抜歯か」という二択ではなく、自分の歯並びに対して無理のない方法はどれかを専門的に見極めることが重要です。そのためにも、精密検査と丁寧なカウンセリングを受けたうえで、複数の選択肢を比較しながら治療方針を決めることが大切です。

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よくある質問(Q&A)

「歯を削る」と聞くと、治療内容を理解する前に不安が先に立ってしまう方も少なくありません。
この章では、IPR(削る矯正)について患者さんから特に多く寄せられる質問をQ&A形式で整理します。事前に疑問を解消しておくことで、治療方針の説明もより理解しやすくなります。

削った後のむし歯リスクは?

「歯を削ると、むし歯になりやすくなるのでは?」という質問は非常に多いです。
結論から言うと、適切に処置され、正しいケアが行われていれば、むし歯リスクは大きく高まりません

IPRでは、削った後に歯の表面をなめらかに研磨します。これにより、プラーク(歯垢)が付着しやすい状態を防ぎ、通常の歯と同じように清掃できる環境を整えます。また、削る量自体が非常に少ないため、歯の耐久性が大きく損なわれることもありません。

ただし、矯正中は装置の影響で歯磨きが難しくなるため、もともとむし歯リスクは上がりやすい時期です。IPRの有無にかかわらず、フロスや歯間ブラシを含めたセルフケア、定期的なチェックが重要になります。

矯正装置によって削る必要は変わる?

PRの必要性は、ブラケット矯正かマウスピース矯正かによって変わることがあります
特にマウスピース矯正では、事前に歯の動きをデジタル上で細かく設計するため、IPRが治療計画に組み込まれるケースが比較的多く見られます。

これは、マウスピース矯正が「歯を少しずつ、計画通りに動かす」治療法であるため、ミリ単位のスペース調整が結果に直結しやすいからです。一方、ワイヤー矯正では歯の移動自由度が高く、必ずしもIPRを行わなくても対応できる症例もあります。

ただし、「マウスピース=必ず削る」「ワイヤー=削らない」というわけではありません。どの装置であっても、歯並びの状態と治療ゴールに応じて必要性が判断されます

処置はどのタイミングで行う?

IPRは、矯正治療の途中段階で行われることが多い処置です。
治療開始前にまとめて削るケースもあれば、歯の移動状況を見ながら、数回に分けて行うこともあります。

たとえば、歯がある程度動いてきた段階で「あと少しスペースが足りない」と判断された場合、そのタイミングでIPRを行うことで、無理のない歯の移動が可能になります。治療の進行に合わせて調整することで、削る量を最小限に抑えられるというメリットもあります。

重要なのは、IPRが行き当たりばったりで実施される処置ではないという点です。治療計画に基づき、必要なタイミングと量が事前に想定されたうえで行われます。

まとめ

非抜歯矯正で用いられるIPR(歯を削る処置/ストリッピング)は、「歯を抜かずに歯並びを整えたい」と考える方にとって、有力な選択肢の一つです。歯と歯の間を0.1〜0.5mm程度、計画的に調整することでスペースを確保し、軽度〜中等度の歯列不正であれば抜歯を回避できる可能性があります。

「歯を削る」と聞くと不安を感じやすいものですが、IPRはエナメル質のごく表層のみを扱う処置であり、強い痛みが出ることはほとんどなく、安全性も管理された治療です。一方で、削れる量には限界があり、すべての症例に適応できるわけではありません。歯並びの状態や骨格、将来の安定性を考慮せずに無理に非抜歯を選ぶことは、かえってリスクになることもあります。

重要なのは、

  • 非抜歯(IPR含む)が本当に適しているのか
  • 抜歯矯正の方が安定した結果につながるのか
    精密検査と専門的な視点で見極めることです。非抜歯と抜歯は優劣ではなく、「その人に合っているかどうか」で選ぶべき治療法です。

「自分の歯並びは削る矯正で対応できるのか」「抜歯が必要と言われたが他の選択肢はないのか」など、少しでも疑問や不安がある場合は、早い段階でカウンセリングを受けることが安心につながります。検査結果をもとに複数の治療方針を比較し、納得したうえで矯正治療を進めていきましょう。

歯並びは見た目だけでなく、噛み合わせや将来の歯の健康にも大きく関わります。
まずは相談から、一人ひとりに合った無理のない治療計画を見つけてみてください。

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この記事の監修者情報

吉田 尚起

日本矯正歯科学会認定医

院長である吉田なおきは、国立大阪大学歯学部、および同大学院にて矯正治療を専門に学び、博士号を取得。大学病院にて7年間にわたり研鑽を積み、300症例以上の矯正治療に携わってきました。

自身も歯並びのコンプレックスを克服した経験から、見た目の美しさだけでなく、噛み合わせや心身の健康を考えた治療を心がけています。

歯科医師全体の約3%しか取得していない日本矯正歯科学会認定医として、お子様から大人の方まで、未来の笑顔をサポートします。

〒560-0056 大阪府豊中市宮山町1丁目1−47

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