2026.7.18| 出っ歯の矯正相談集
「顎が小さく、歯並びと出っ歯が気になる…」とご相談いただいたR.Hさん(8歳・女の子)のケース
「顎が小さいと言われた」「上下の歯がガタガタしている」「少し出っ歯になっている気がする」――。
お子様の永久歯への生え変わりが進むと、歯が並ぶスペースや前歯の位置が気になり、矯正治療を検討される保護者の方は少なくありません。一方で、矯正歯科によって提案される装置が異なり、「どの治療方法を選べばよいのか分からない」と迷われることもあります。
今回は、顎の小ささや歯並びのガタつき、前歯の出っ歯傾向についてご相談に来られた8歳の女の子、R.Hさんとの初診相談時のやり取りをご紹介します。
成長期に歯列を広げる目的や、ワイヤー矯正とマウスピース型矯正装置の違い、過去に外傷を受けた前歯の管理についてもお伝えします。
患者様情報
| 年齢 | 8歳 |
| 性別 | 女性 |
初診時の画像診断



上下の歯並びにガタガタがあります。
出っ歯さんの咬み合わせをしています。
ご相談のきっかけ
R.Hさんは、以前から「顎が小さい」と指摘されており、永久歯が並ぶスペースや出っ歯傾向について相談するため、複数の矯正歯科を受診されていました。
受診した医院によって、顎を広げる装置やヘッドギア、取り外しのできる装置など、異なる治療方法を提案されたそうです。
保護者の方は、
「ワイヤーとマウスピースのどちらが合っているのか」
「ヘッドギアを使わずに治療できるのか」
「今から始めるメリットがあるのか」
といった点について、専門的な意見を聞きたいと当院へご相談くださいました。
患者様との実際のやり取り
はじめまして。今、一番気になっているところを教えていただけますか?
顎が小さいと言われていて、いくつか矯正歯科へ相談に行きました。顎を広げる装置やヘッドギア、取り外しのできる装置などを提案されたのですが、どれがいいのか分からなくて。
実際にお口の中を確認すると、上下の歯並びに少しガタつきがあります。また、上の前歯が前方へ傾いているため、出っ歯傾向も見られます。
やっぱり、少し出っ歯になっているんですね。
はい。ただし、上下の顎の骨格的なずれが非常に大きいというより、前歯の傾きによる影響が強いと考えられます。
奥歯のかみ合わせは右側では比較的良好ですが、左側では上の奥歯が少し前方にあります。治療では、歯並びのガタつきだけでなく、この左右差や前歯の位置も整えていく必要があります。
上の前歯は、以前けがをしたことがあります。
どのようなけがでしたか?
7歳頃に転んで、前歯の1本が抜けてしまいました。すぐに歯科医院で元に戻してもらいました。もう1本は抜けなかったのですが、後から神経が死んでしまい、最近、神経の治療が終わったところです。
分かりました。外傷を受けた歯は、矯正治療を行う際にも慎重に経過を確認する必要があります。歯の根や周囲の骨の状態を確認しながら、無理のない力で動かしていきます。
前歯の歯茎の高さが左右で違うことも気になっています。
外傷の影響によって、一方の前歯が少し深い位置にあるため、歯の見える長さや歯茎の高さに違いが出ている可能性があります。
今後、歯がさらに生えてくることで左右差が目立ちにくくなることもあるため、まずは経過を確認してよいと思います。将来的にも差が残る場合には、歯茎の形を整える処置を検討することがあります。
レントゲンでは、ほかに気になるところはありますか?
これから生えてくる永久歯は確認できています。ただし、上の犬歯の一部が、本来生えてほしい位置より少し内側や後方にあります。下の犬歯にも、やや内側に位置している歯が見られます。
このままだと、内側から生えてくるんですか?
その可能性はあります。ただ、永久歯の位置は生えるまでの間に変化することもあります。今の時点で必ず内側から生えると決まっているわけではありません。
まずは歯が並ぶスペースを確保しながら経過を見て、実際にどの位置から生えてくるかを確認することが大切です。
今の時期には、どのような治療をするのでしょうか?
大きな目標は、歯列を少し広げて永久歯が並ぶスペースを確保することと、前歯の出っ歯傾向を改善することです。
成長期には顎や歯列の成長を利用できるため、今の時期に治療を始めるメリットがあります。成長が進んでからでは、顎の幅や上下の顎のバランスに働きかける治療が難しくなることがあります。
他院ではヘッドギアを提案されました。どのような装置ですか?
ヘッドギアは、お口の中の装置と、就寝時に頭や首の周囲へ装着するバンドを組み合わせて使用します。上顎や上の奥歯が前方へ進みすぎないようにコントロールしながら、上下のかみ合わせのバランスを整える装置です。
寝るときにつけられるのでしょうか?
多くのお子様が就寝中に使用できています。見た目の印象から大変そうに感じられることがありますが、慣れれば寝られないほど負担の大きい装置ではありません。
マウスピースでも治療できますか?
今回の歯並びであれば、ワイヤーを中心とした治療と、マウスピース型矯正装置を使用する治療のどちらも選択肢になります。
マウスピース型矯正装置では、歯列を広げること、ガタつきを整えること、前歯の位置を改善することを一つの装置で並行して進められる可能性があります。
マウスピースなら、ヘッドギアは使わなくてもよいのですか?
現在の歯並びや出っ歯の程度であれば、マウスピース型矯正装置で歯列の拡大や前歯の位置を調整し、ヘッドギアを使わずに進められる可能性があると考えています。
ただし、詳しい検査結果や治療中の歯の動きによっては、治療方法を調整することがあります。
ワイヤーとマウスピースでは、どのような違いがありますか?
ワイヤー矯正では、まず歯列を広げる装置を使用し、その後に前歯へワイヤーをつけて並べるなど、治療をいくつかの段階に分けて進めることがあります。必要に応じて、ヘッドギアも併用します。
マウスピース型矯正装置では、歯列を広げながら歯を並べ、前歯の位置も同時に調整できるため、治療期間を短縮できる可能性があります。
先生としては、どちらがおすすめですか?
今回のガタつきや拡大量であれば、どちらの方法でも治療目標を目指せると考えています。
ただ、R.Hさんは8歳で、装置の着脱や管理を頑張れる年齢になっており、マウスピース型矯正装置であれば歯列の拡大と配列を同時に進めやすいため、治療期間を短くできる可能性があります。その点では、マウスピース型矯正装置はおすすめしやすい選択肢です。
今から治療を始めるメリットはありますか?
はい。今は永久歯への生え変わりが進み、成長も利用できる時期です。歯列を広げてスペースを確保したり、前歯の位置や上下の顎のバランスを整えたりする治療は、成長期だからこそ行いやすいものです。
何もしないまま待つと、犬歯などが内側から生え、ガタつきが強くなる可能性があります。今の時期に環境を整えておくことには、大きなメリットがあると考えています。
分かりました。本人とも相談しながら、治療方法を検討してみます。
まとめ
R.Hさんのケースでは、
・「上下の歯並びのガタつき」と「前歯の出っ歯傾向」に対して、成長期を利用して歯列を広げ、永久歯が並ぶスペースを確保しながら前歯の位置を整える小児矯正が有効と考えられること
・過去に外傷を受けた前歯の状態や、これから生えてくる犬歯の位置を慎重に確認しながら、無理のない治療計画を立てることが重要
という相談結果になりました。
今回の相談では、見た目としての「歯並びのガタつき」や「出っ歯」といったお悩みだけでなく、奥歯のかみ合わせの左右差や、これから生えてくる永久歯の位置についても詳しく確認しました。また、ワイヤー矯正とマウスピース型矯正装置の違いや、ヘッドギアの必要性、第一期治療後に第二期治療が必要となる可能性についてもご説明しています。
小児矯正では、今見えている前歯をきれいに並べるだけでなく、顎や歯列の成長を利用しながら、永久歯が生えやすい環境を整えることが重要です。特にR.Hさんのように、永久歯が並ぶスペースがやや不足し、一部の犬歯が内側や後方に位置しているケースでは、適切な時期に歯列を広げることで、将来のガタつきを軽減できる可能性があります。
また、R.Hさんの上の前歯には外傷歴があるため、歯の根や周囲の組織の状態を確認しながら、慎重に治療を進める必要があります。装置については、ワイヤー矯正とマウスピース型矯正装置のどちらも選択肢となりますが、治療期間や見た目だけでなく、お子様が無理なく装着や管理を続けられるかどうかも含めて選ぶことが大切です。
お子様の顎の小ささや歯並び、出っ歯でお悩みの方は、ぜひ一度ご相談ください。成長や永久歯への生え変わり、生活環境なども考慮しながら、お子様にとって無理のない最適な治療方法を一緒に考えていきましょう。
この記事の監修者情
吉田 尚起
日本矯正歯科学会認定医
院長である吉田なおきは、国立大阪大学歯学部、および同大学院にて矯正治療を専門に学び、博士号を取得。大学病院にて7年間にわたり研鑽を積み、300症例以上の矯正治療に携わってきました。
自身も歯並びのコンプレックスを克服した経験から、見た目の美しさだけでなく、噛み合わせや心身の健康を考えた治療を心がけています。
歯科医師全体の約3%しか取得していない日本矯正歯科学会認定医として、お子様から大人の方まで、未来の笑顔をサポートします。
