2025.12.3| 矯正相談集
「前歯のガタガタと犬歯の生え方が気になって…」とご相談いただいたK.Nさん(12歳・男の子)のケース
前歯のガタガタが増えてきた気がする」「犬歯の生え方が心配」…
お子様のお口の中が大人の歯に生え変わるタイミングで、不安を感じてご相談に来られる親御様は少なくありません。
今回は、「前歯のガタガタ」と「犬歯の生え方」を気にされて来院された12歳の男の子、K.Nさんとの初診相談時のやり取りをご紹介します。
単に歯をきれいに並べるだけでなく、「犬歯の生え方の問題」や「将来のかみ合わせの安定」まで考えた当院の相談内容についてお伝えします。
患者様情報
| 年齢 | 12歳 |
| 性別 | 男性 |
初診時の画像診断



レントゲンより、右上の前から3番目の歯(犬歯)が右上の前から2番目の歯(側切歯)の歯根に向かって生えてきています。
左上の前から3番目の大人の歯が生えていますが、子供の歯もまだ残っています。
上の歯並びにガタガタがあります。
下顎が左にずれて噛んでいます。
ご相談のきっかけ
K.Nさんは、
- 「前歯のガタガタが気になってきた」
- 「八重歯っぽい歯が変なところから生えそうで心配」
といった理由でご相談に来られました。
これまで矯正相談を受けたことはなく、かかりつけの歯科医院でも矯正の詳しい話は出ていなかったとのことです。
お母様は、「歯並びは気になっていたけれど、なかなか相談に行く機会がなかった」とお話しくださいました。
今回は、K.Nさんご自身も「ちょっと気になっている」とのことで、一緒に矯正についてのお話を聞きに来てくださいました。
患者様との実際のやり取り
はじめまして。今、一番気になっているところはどこですか?
前歯のガタガタと、この八重歯っぽいところですね。
拝見すると、たしかに前歯のガタガタは上下にありますね。それから、下の真ん中が少し左にずれています。
完全に真ん中に合わせるのは難しいんでしょうか?
骨の形が関係しているので、ミリ単位の完全な修正は難しいことがあります。
ただ、今より整えることはできます。
そして今回、一番問題として注目したいのは右上の犬歯です。
本来の場所ではなく内側に傾いていて、隣の歯の根に当たり始めています。
根っこに当たるとどうなりますか?
進行すると、隣の歯の根が溶けて抜かなければならないケースもあります。
今はまだ軽度で接しているだけですが、早めに犬歯を正しい位置へ誘導してあげたほうがいいと思います。
どう治すんですか?
流れはシンプルです。
手前の乳歯を抜いてスペースを作り、歯ぐきを少し開いて、犬歯に小さな“ボタン”をつけます。それから装置とつなぎ、ゆっくり正しい位置へ引っ張っていきます。
通院は月1回、期間は約半年〜1年です。
なるほど。ガタガタと出っ歯は治りますか?
12歳は上あごの成長がほぼ終わりかけになるので、骨格を大きく変えることは難しいですが、ガタガタを整えたり、出っ歯が悪化しないようにするといった調整は可能です。
もし今矯正を始めるのであれば、第一段階の小児矯正で、犬歯の正しい位置への誘導とガタガタや前突の悪化防止を行います。
そして永久歯がそろった時点で、全ての大人の歯をきれいに整えるという流れになります。
まずは歯を守るための治療ですね。家族に一度相談してみます。
まとめ
K.N.さんのケースでは、
・「右上犬歯の萌出異常(内側への過度の傾斜)」と「前歯のガタガタ」に対して、
犬歯の早期誘導(牽引)と小児矯正による歯列の調整が有効であること
・犬歯を無理に引っ張るのではなく、
隣接する永久歯の根を傷つけないように、成長・スペース・歯の角度を慎重に見極めながら治療計画を立てることが重要であること
という相談結果になりました。
今回の診察では、見た目としての「前歯のガタガタ」や「八重歯の生え方」といったお悩みだけでなく、犬歯が隣の歯の根に接触して生じるリスク、治療開始の適切なタイミング、今行うべき小児矯正の役割、さらに将来的に必要となる可能性のある第二段階矯正(成人矯正)まで、長期的な視点を見据えたご説明を行いました。
小児矯正では、単に歯を並べるだけでなく、これから生えてくる永久歯が正しい位置に並ぶための“土台づくり”が非常に重要です。特にK.Nさんのように、骨格には大きな問題がなく、犬歯の向きやスペース不足が中心となるケースでは、必要なタイミングで適切に誘導治療を行うことで、歯の寿命を守りながら無理のない仕上がりを目指すことが可能です。
お子様の八重歯やガタガタ、永久歯の生え方に不安を感じている方は、ぜひ一度ご相談ください。
成長に合わせた最適な治療方法を、無理なく一緒に考えていきましょう。
この記事の監修者情報
吉田 尚起
日本矯正歯科学会認定医
院長である吉田なおきは、国立大阪大学歯学部、および同大学院にて矯正治療を専門に学び、博士号を取得。大学病院にて7年間にわたり研鑽を積み、300症例以上の矯正治療に携わってきました。
自身も歯並びのコンプレックスを克服した経験から、見た目の美しさだけでなく、噛み合わせや心身の健康を考えた治療を心がけています。
歯科医師全体の約3%しか取得していない日本矯正歯科学会認定医として、お子様から大人の方まで、未来の笑顔をサポートします。
