2025.8.31| 矯正相談集
「ガタガタが出そう」と心配されて来院されたO.Mさん(8歳女の子)のケース
「歯が少しガタガタしてきた気がする」「子供の歯並びで隙間がなくて、大人の歯に生え変わった時に隙間が足りないのでは…」
そんな不安を感じて来院される親御様も多くいらっしゃいます。
今回は、上の歯並びに不安を感じて来院された8歳の女の子、O.Mさんの初診時のやり取りをご紹介します。お子様の歯並びの現状をどう捉え、今後どのように治療を進めていくのか。当院での相談内容についてお伝えいたします。
患者様情報
年齢 | 8歳 |
性別 | 女の子 |
初診時の画像診断



上あごの前歯の歯並びにガタガタ(叢生)があります。
前歯の上下の歯は前後的に距離があり、少し出っ歯の傾向があります。
ご相談のきっかけ
前歯に軽いガタつきがあり、「このまま進むともっとひどくなるのではないか」「八重歯になってしまわないか」とご心配されていました。さらに、お友達から「子どもの矯正では、早い時期から上顎を広げる装置を使うことがある」と聞き、矯正治療について詳しく話を聞きたいとのことで当院へご相談にいらっしゃいました。ご家族としては、できれば歯を抜かずに整えてあげたいというご意向もありました。
患者様との実際のやり取り
今、一番気になっているところを教えていただけますか?
はい、少し歯がガタガタしてきているのが気になっていて…。以前通っていた歯科医院の先生からは「乳歯の歯の隙間が小さいから、将来的に隙間が足りなくなるかもしれない」と言われたことがあって。
そうですね。確かにスペースがやや足りない印象はありますが、今すぐ大きな問題になるほどではありません。現時点で歯が大きくズレて八重歯や重度のガタガタが出てしまう心配は少ないと思います。ただ、このままだと将来的に多少のガタつきは出てきそうですね。
そうなんですね。実際、歯を抜かないと矯正治療は難しいですか?
今の状態であれば、抜かずにきれいに歯を並べれる可能性が高いです。ただ、歯並びを広げてあげる「拡大装置」を使った方が、将来の永久歯のスペースをしっかり確保できると思います。
なるほど…。拡大装置ってどういうものですか?
上あごの真ん中には「正中口蓋縫合」という部分があり、まだお子さんの年齢では骨が完全に固まっておらず、ヒビが入っている状態です。ここに刺激を加えてあげることで、あごの幅を少し広げて、歯がきれいに並ぶためのスペースを作ることができます。夜だけ装着することも可能ですが、できるだけ長い時間つけると効果が出やすいですね。
なるほど、装置で広げた後はどうなるんですか?
拡大はおよそ1年ほど行います。その後は歯並びを安定させるために保定を続けます。さらに、前歯4本などは拡大装置だけでは完全に整わないので、部分的にワイヤー矯正を組み合わせていくのが理想です。
ネットで「拡大すると出っ歯になることがある」と見たんですが、それは大丈夫ですか?
確かに強いガタガタを無理に並べると、前に歯並びが広がって出っ歯になることがあります。ただ、O.Mさんの場合はガタガタの程度がそれほど強くないので、その心配はありません。むしろ少し広げることで隙間ができ、今より前歯の位置が少し引っ込んできれいになる可能性が高いです。
なるほど、そういう理由なんですね!一度、家族で検討してきます。
まとめ
O.Mさんのケースでは、
- 現時点での課題は「前歯周辺のガタつきとスペース不足」であり、拡大装置による対応が有効である
- 将来的には、必要に応じて前歯部分のワイヤー矯正を併用することで、より整った見た目に仕上げられる
- 抜歯をせずに整える可能性が高く、ご家族のご希望にも沿った治療計画が立てられる
という相談結果になりました。
今回の診察では、「ガタガタが出そう」という見た目の不安だけでなく、顎の成長期だからこそできる治療法についてご説明しました。小児矯正は、歯を抜くことなく顎の成長を利用して土台を整えられる大きなチャンスです。永久歯が生え揃う前の時期に始めることで、将来的なかみ合わせの安定につながります。
この記事の監修者情報
吉田 尚起
日本矯正歯科学会認定医
院長である吉田なおきは、国立大阪大学歯学部、および同大学院にて矯正治療を専門に学び、博士号を取得。大学病院にて7年間にわたり研鑽を積み、300症例以上の矯正治療に携わってきました。
自身も歯並びのコンプレックスを克服した経験から、見た目の美しさだけでなく、噛み合わせや心身の健康を考えた治療を心がけています。
歯科医師全体の約3%しか取得していない日本矯正歯科学会認定医として、お子様から大人の方まで、未来の笑顔をサポートします。
