2026.1.22| コラム
矯正ヘッドギアはいつから始める?年齢の目安・効果・装着期間をわかりやすく解説

「矯正治療でヘッドギアを使うと言われたけれど、いつから始めるのが正解なの?」「まだ様子を見ても大丈夫?」
お子さんの矯正相談をされた保護者の方から、このような疑問や不安の声は少なくありません。
ヘッドギアは、見た目のインパクトが強い装置である一方、顎の成長をコントロールできる貴重な矯正装置でもあります。そのため、開始する「タイミング」が治療効果を大きく左右するのが特徴です。早すぎても意味がなく、遅すぎると十分な効果が得られないケースもあります。

本記事では、
- ヘッドギアとはどんな矯正装置なのか
- いつから始めるのが適切なのか(年齢の目安)
- 装着期間や生活上の注意点
- メリット・デメリット
といったポイントを、矯正治療が初めての方にもわかりやすく解説します。
お子さんにとって後悔のない矯正治療を選ぶための判断材料として、ぜひ最後までご覧ください。
目次
ヘッドギアとは?矯正装置の基本を知ろう
ヘッドギアとは、歯の移動だけでなく「顎の成長そのもの」に働きかける顎外の矯正装置です。口の中に装着するブラケットやワイヤーとは異なり、頭部や首を支点にして力をかけることで、上顎や奥歯の位置・成長方向をコントロールします。
特に成長期のお子さんでは、顎の骨がまだ柔らかく発育途中であるため、成長の力を利用した矯正が可能です。ブラケット矯正だけでは改善が難しい「骨格的なズレ」を、将来的な負担を抑えながら整えられる点が、ヘッドギアの大きな特徴といえるでしょう。
一方で、装着時間の管理や見た目の問題など、本人とご家族の協力が不可欠な装置でもあります。そのため「どんな仕組みで、どんな症例に使われるのか」を正しく理解したうえで選択することが重要です。
ここからは、
- ヘッドギアの構造と力のかかり方
- 具体的な適応症例
- 最近の矯正治療における位置づけ
について、順に詳しく解説していきます。

ヘッドギアの仕組み
ヘッドギアは、頭部や首を支点として矯正力をかける装置で、主に「フェイスボウ」と呼ばれる金属部分と、「ネックストラップ」や「ヘッドキャップ」から構成されています。フェイスボウは口の中の奥歯(主に上顎第一大臼歯)に連結され、そこに外側から持続的な力を加える仕組みです。
この外側からの力によって、奥歯が前方へ動くのを抑えたり、上顎全体の前方成長をコントロールしたりすることが可能になります。たとえば出っ歯(上顎前突)の場合、歯だけでなく上顎骨そのものが前に出ているケースが多く、歯の表面に装着するブラケット矯正だけでは限界があります。ヘッドギアは、こうした骨格レベルの問題にアプローチできる点が大きな特徴です。
また、成長期に使用することで、顎の成長方向を調整しながら自然な噛み合わせへ導けるというメリットもあります。無理に歯を引っ張るのではなく、「成長を抑える・誘導する」という考え方に基づくため、適切な時期に使えば効率的な治療が期待できます。
ただし、効果は「装着時間」に大きく左右されます。指示された時間を守らないと十分な力が伝わらず、治療期間が延びてしまうこともあります。そのため、仕組みを理解し、なぜ必要なのかを本人・保護者ともに納得したうえで使うことが非常に重要です。

どんな症例で使う?
ヘッドギアは、すべての矯正治療に使われる装置ではありません。主に、歯の並びだけでなく「顎の位置や成長バランス」に問題がある症例で選択されます。代表的なのが、**上顎が前に出ているタイプの出っ歯(上顎前突)**です。
たとえば、前歯の突出が強く、上下の噛み合わせに大きなズレがある場合、歯だけを後ろに下げる治療では限界があります。このようなケースでは、ヘッドギアを用いて上顎の前方成長を抑え、下顎とのバランスを整えることで、将来的な抜歯や外科的治療を回避できる可能性が高まります。
また、**噛み合わせの分類でいう「Class II(Ⅱ級咬合)」**と診断されるケースも、ヘッドギアの代表的な適応です。これは、上の歯列が前方に位置し、下顎が相対的に後方にある状態を指します。成長期であれば、顎の発育を利用して骨格的なズレを緩和できるため、早期の介入が有効とされます。
一方で、軽度の出っ歯や、歯の傾きが原因となっている症例では、ブラケット矯正やマウスピース矯正のみで対応できることも少なくありません。そのため、「出っ歯=必ずヘッドギアが必要」というわけではなく、レントゲンや咬合分析をもとに総合的に判断することが重要です。
使われなくなってきた?最新動向
「ヘッドギアは昔の矯正装置で、今はあまり使われていないのでは?」
このように感じる保護者の方も少なくありません。確かに近年は、矯正用アンカースクリュー(インプラント矯正)やマウスピース矯正など、新しい治療法が登場し、ヘッドギアの使用頻度は以前より減ってきています。
しかしこれは、「ヘッドギアが不要になった」という意味ではありません。成人矯正では骨の成長が期待できないため、インプラント矯正など固定源を口腔内に求める方法が主流になっていますが、成長期の子どもに対しては、今もなおヘッドギアが有効なケースが存在します。
特に、
- 上顎の成長が過剰な出っ歯
- 顎の前後的なズレが大きい症例
- 将来的に外科的矯正のリスクがあるケース
では、成長の力を利用できるヘッドギアが、最も合理的で身体への負担が少ない選択肢となることもあります。
一方で、装着時間の自己管理が難しいお子さんや、軽度の症状の場合には、別の装置が選択されることもあります。現在の矯正治療では、「新しい装置=優れている」「古い装置=劣っている」という単純な考え方ではなく、年齢・成長段階・症状に応じて最適な方法を選ぶことが重視されています。
矯正ヘッドギアはいつから始める?年齢の目安
ヘッドギアによる矯正治療で最も重要なのは、「いつ始めるか」というタイミングです。なぜなら、ヘッドギアは歯を動かす装置というよりも、顎の成長をコントロールすることを目的とした装置であり、成長が止まってからでは十分な効果が期待できないからです。
一般的に、ヘッドギアの開始時期の目安は、顎の成長が活発な8歳頃とされています。この時期は、乳歯から永久歯への生え替わりが進み、骨格の成長スピードも高まる「混合歯列期」にあたります。特に上顎の前方成長が強く出やすい時期であるため、出っ歯や噛み合わせのズレが目立ち始めた場合には、矯正介入の効果が出やすいタイミングといえます。
一方で、「〇歳になったら必ず始める」という明確な年齢基準があるわけではありません。実際には、
- 顎の成長スピード
- 永久歯の萌出状況
- 噛み合わせのタイプ
- 見た目や機能面での問題の強さ
などを総合的に判断して、開始時期が決定されます。そのため、同じ8歳でも「すぐにヘッドギアが必要な子」と「経過観察でよい子」が分かれることがあります。
ここからは、
- 小児矯正の評価はいつ受けるべきか
- 症状によって開始時期がどう変わるのか
- 成人でもヘッドギアは使えるのか
といった点について、さらに詳しく解説していきます。
小児の矯正評価のタイミング
ヘッドギアを含む小児矯正を検討するうえで大切なのが、**「治療を始める時期」よりも先に「正しく評価を受ける時期」**です。多くの矯正専門医が目安としているのは、初期の永久歯が生え揃う7〜9歳頃。この時期は、将来的な歯並びや噛み合わせの問題を予測しやすく、必要に応じて最適な介入時期を判断できます。
この段階で行う矯正評価では、単に歯が並んでいるかどうかだけでなく、
- 上下の顎の大きさや前後関係
- 顎の成長方向(前に伸びやすいか、下に成長しやすいか)
- 永久歯が生えるためのスペースの有無
- 噛み合わせのズレが今後悪化する可能性
といった骨格レベルのチェックが重視されます。たとえば、見た目では軽い出っ歯に見えても、レントゲン診査を行うと上顎の成長が強く、将来的に大きなズレが生じる可能性が分かることもあります。
重要なのは、「この時点で必ず治療を始める必要はない」という点です。矯正評価の目的は、今すぐ治療が必要か、成長を見守るべきかを見極めることにあります。結果として「経過観察」が選択されるケースも多く、早めに相談することで、適切なスタート時期を逃さずに済みます。

症状別の開始時期の違い
ヘッドギアの開始時期は、年齢だけで一律に決まるものではなく、症状の種類や重症度によって大きく異なります。同じ7〜10歳前後のお子さんでも、噛み合わせのタイプによって「早めに始めたほうがよいケース」と「少し様子を見られるケース」に分かれます。
代表的なのが出っ歯(上顎前突)です。上顎が前方に大きく成長している場合、顎の成長が活発になる8〜10歳頃にヘッドギアを使用することで、上顎の過度な前方成長を抑え、下顎とのバランスを整えやすくなります。このタイミングを逃すと、歯を抜いて引っ込める治療や、将来的に外科的矯正が検討される可能性が高まることもあります。
一方、受け口(下顎前突)の場合は考え方が異なります。下顎の成長が強いケースでは、上顎の成長を促す装置(フェイスマスクなど)が優先されることが多く、ヘッドギアが第一選択とならない場合もあります。そのため、開始時期も6〜8歳頃とやや早めに設定されることがあります。
また、軽度の出っ歯や歯の傾きが主な原因の場合は、急いでヘッドギアを使わず、経過観察ののちにブラケット矯正やマウスピース矯正で対応できるケースも少なくありません。このように、症状の背景が「骨格なのか」「歯並びなのか」を見極めることが、開始時期を判断するうえで非常に重要です。
成人でも可能?大人のヘッドギア
結論から言うと、成人でもヘッドギアを装着すること自体は可能ですが、小児期と同じ効果は期待できません。その理由は、成人ではすでに顎の成長がほぼ完了しており、ヘッドギア本来の目的である「顎の成長コントロール」ができないためです。
成長期の子どもでは、ヘッドギアによって
- 上顎の前方成長を抑える
- 奥歯の位置を成長とともに誘導する
といった骨格レベルの調整が可能ですが、成人の場合は骨の成長がないため、主に「歯の移動補助」という限定的な役割になります。そのため、現在の成人矯正では、ヘッドギアの代わりに矯正用アンカースクリュー(インプラントアンカー)など、口腔内で強固な固定源を確保できる方法が主流です。
ただし、まれに
- 外科的矯正を回避・補助する目的
- 特殊な噛み合わせで、他の固定源が使いにくい場合
などで、補助的にヘッドギアが検討されることもあります。しかし、装着時間や生活への影響を考えると、大人に積極的に選ばれる装置ではないのが実情です。
そのため、成人の方が「子どもの頃にヘッドギアを勧められたがやらなかった」と後悔されるケースも少なくありません。成長期にしか使えない治療手段があるという点は、小児矯正を検討するうえで非常に重要なポイントといえるでしょう。
実際の治療開始前のステップ
ヘッドギア矯正は、「とりあえず装着してみる」という治療ではありません。開始前の診査・診断が治療結果を大きく左右する矯正装置だからこそ、事前のステップが非常に重要です。特に小児矯正では、現在の歯並びだけでなく、これから起こる成長変化を見越した判断が求められます。
治療開始前には、歯科検診だけでなく、レントゲン撮影や咬合(噛み合わせ)の分析を通して、ヘッドギアが本当に必要かどうかを慎重に見極めます。たとえば、見た目は出っ歯に見えても、骨格に大きな問題がなければ別の装置で対応できることもありますし、逆に早期介入が将来の治療負担を大きく減らすケースもあります。
また、ヘッドギアは装着時間の自己管理が不可欠なため、お子さん本人の理解度や生活リズムも重要な判断材料です。治療計画は「医学的に正しい」だけでなく、「現実的に続けられるかどうか」まで含めて立てる必要があります。
ここからは、
- 初回検査で具体的にどこをチェックするのか
- その結果をもとに、どのように治療計画が決まるのか
について、順に解説していきます。
初回検査で見るポイント
ヘッドギア矯正を検討する際、初回検査では「今の歯並び」だけを見ることはありません。むしろ重要なのは、これから先の成長によって噛み合わせがどう変化するかを見極めることです。そのため、複数の観点から総合的な評価が行われます。
まず確認されるのが、歯の萌出状況です。乳歯と永久歯がどの程度入れ替わっているか、今後どの歯がいつ頃生えてくるかを把握することで、治療開始の適切なタイミングを判断します。特に上顎の前歯や奥歯の位置関係は、ヘッドギア適応を考えるうえで重要なポイントです。
次に行われるのが、顎骨の成長評価です。レントゲン検査(側面セファロなど)を用いて、上顎と下顎の前後関係、成長方向、骨格的なズレの有無を分析します。たとえば、歯が前に出ている原因が「歯の傾き」なのか「上顎の骨格的突出」なのかによって、治療方針は大きく変わります。
さらに、咬合(噛み合わせ)のタイプ判定も欠かせません。上下の歯がどの位置で噛み合っているか、将来的に悪化するリスクがあるかを確認し、Class II(Ⅱ級咬合)などの骨格的特徴が認められる場合には、成長期に介入する意義が高まります。
これらの検査結果を踏まえたうえで、「今すぐヘッドギアが必要か」「少し成長を見てから開始するか」「別の装置が適しているか」を判断します。初回検査は治療のスタートではなく、最適な選択をするための情報収集の場と考えるとよいでしょう。
治療計画の立て方
初回検査で得られた情報をもとに、ヘッドギア矯正の具体的な治療計画が立てられます。この段階で重要なのは、「ヘッドギアを使うかどうか」だけでなく、いつから・どのくらいの期間・どの装置と組み合わせるかまで含めて考えることです。
まず判断されるのが、治療開始のタイミングです。顎の成長がこれから活発になると予測される場合は、数か月〜1年ほど経過観察を行い、ベストな時期を待って開始することもあります。逆に、すでに成長のピークに入りつつある場合は、治療効果を逃さないために早めの開始が提案されることもあります。
次に検討されるのが、装置の組み合わせです。ヘッドギア単独で使用するケースもありますが、多くの場合は、
- 床矯正装置
- 部分的なブラケット矯正
- マウスピース型装置
などと併用しながら、歯列と顎の両方を段階的に整えていきます。たとえば「顎の成長コントロールはヘッドギア、歯の並びは別の装置で調整する」といった役割分担をすることで、無理のない治療が可能になります。
さらに、治療計画では生活面への配慮も欠かせません。学校生活や習い事、就寝時間などを考慮し、無理なく装着時間を確保できるかどうかを確認します。医学的に理想的な計画であっても、続けられなければ意味がないため、現実的に実行できる計画かどうかが重視されます。
このように、ヘッドギア矯正の治療計画は一律ではなく、お子さん一人ひとりの成長・症状・生活環境に合わせて立てられます。だからこそ、十分な説明と納得のうえで治療を進めることが、満足度の高い結果につながります。
ヘッドギアの装着方法と期間
ヘッドギア矯正は、「どのくらい正しく装着できるか」が治療効果を大きく左右します。どれほど理想的な治療計画を立てても、装着時間や使い方が不十分だと、期待した効果が得られません。そのため、装着方法と期間の目安を事前に理解しておくことがとても重要です。
ヘッドギアは基本的に、自宅で装着する取り外し式の装置です。学校や外出時に常時つける必要はなく、主に就寝時間を中心に使用するケースが多いため、日常生活への影響を最小限に抑えながら治療を進められます。
一方で、「夜だけつければいいから簡単」と思われがちですが、実際には毎日の積み重ねが非常に重要です。装着時間が不足すると治療期間が延びたり、十分な顎のコントロールができなくなったりすることもあります。
ここからは、
- 1日にどれくらい装着するのか
- 全体でどの程度の期間が必要なのか
- 装着中に注意すべきポイント
について、具体的に解説していきます。
1日の装着時間は?
ヘッドギア矯正で安定した効果を得るためには、1日の装着時間をしっかり守ることが非常に重要です。一般的には、1日あたり8〜10時間程度の装着が推奨されるケースが多く、主に「夜間〜自宅で過ごす時間帯」を中心に使用します。
多くのお子さんの場合、
- 夕食後〜就寝前
- 就寝中
といった流れで装着することで、学校生活や友人関係への影響を最小限に抑えることができます。日中ずっと装着する必要はないため、「見た目が気になって学校に行けないのでは」と過度に心配する必要はありません。
ただし、注意したいのが「毎日続けること」です。
「今日は疲れたから外してしまった」「週末だけ多めにつければいい」という使い方では、力が安定して伝わらず、治療効果が出にくくなります。ヘッドギアは弱い力を長時間・継続的にかけることで効果を発揮する装置のため、装着時間が不足すると治療期間が延びてしまうこともあります。
そのため、治療をスムーズに進めるには、
- 装着する時間帯を毎日ほぼ固定する
- 寝る前のルーティンに組み込む
- 保護者の方が声かけや確認を行う
といった工夫が大切です。無理なく生活に組み込める装着習慣を作ることが、ヘッドギア矯正成功のカギといえるでしょう。
治療期間の平均
ヘッドギアの装着期間の目安は、おおよそ1年〜3年程度とされるケースが一般的です。ただし、この期間はあくまで平均的な目安であり、顎の成長スピードや症状の程度、装着状況によって前後します。
たとえば、
- 顎の成長がこれから大きく伸びる時期に適切に開始できた場合
- 指示された装着時間を毎日しっかり守れている場合
には、比較的短期間で目的を達成できることもあります。一方で、装着時間が不足したり、成長のピークを過ぎてから開始した場合には、予定より長く装着が必要になるケースも少なくありません。
また、ヘッドギアの役割は「噛み合わせや顎の成長バランスを整えること」であり、歯並びを最終的に仕上げる装置ではない点も重要です。そのため、ヘッドギアの使用が終了したあとに、
- ブラケット矯正
- マウスピース矯正
などの**本格矯正(第2期治療)**へ移行することもあります。この場合、ヘッドギア期間は「将来の治療をスムーズにするための準備段階」と位置づけられます。
治療期間については、開始前のカウンセリングで**「どこまでをヘッドギアで行い、その後どう進むのか」**をしっかり確認しておくことが大切です。全体像を理解しておくことで、途中で不安を感じにくくなり、治療にも前向きに取り組みやすくなります。
装着中の注意点
ヘッドギア矯正を安全かつ効果的に進めるためには、装着中の注意点をしっかり理解しておくことが大切です。正しく使えば大きな問題はありませんが、使い方を誤るとトラブルやケガにつながる可能性もあります。
まず注意したいのが、装着するタイミングです。ヘッドギアは基本的に「自宅で安静に過ごす時間」や「就寝中」に使用する装置であり、学校や外出時、友だちと活発に遊ぶ場面では装着しません。特に、走ったりふざけたりする状況での装着は、転倒時に顔や口元を傷つけるリスクがあるため避ける必要があります。
次に重要なのが、着脱は必ず保護者の方が確認することです。慣れてくるとお子さん一人で装着できるようになりますが、フェイスボウの向きがずれていたり、ゴムの力が左右で不均等になっていたりすると、十分な効果が得られないことがあります。特に治療初期は、毎回正しく装着できているかを一緒に確認すると安心です。
また、装着中に
- 強い痛みが続く
- 装置が変形・破損した
- 口の中や皮膚に傷ができた
といったトラブルが起きた場合は、無理に使い続けず、早めに歯科医院へ相談することが大切です。我慢して使用を続けると、治療の妨げになるだけでなく、安全面のリスクも高まります。
ヘッドギアは「正しく・安全に・継続する」ことで初めて効果を発揮する装置です。装着ルールを守り、気になることがあればすぐ相談できる環境を整えておくことで、安心して治療を進めることができます。
ヘッドギア治療によるメリット・デメリット
ヘッドギア矯正は、成長期だからこそ得られる大きなメリットがある一方で、生活面での負担や注意点も存在します。治療を始めてから「思っていたのと違った」と後悔しないためには、良い点・大変な点の両方を事前に理解しておくことが大切です。
特に保護者の方にとっては、「本当に今やる意味があるのか」「子どもが続けられるのか」といった判断が必要になります。ここでは、ヘッドギア治療のメリット・デメリットを公平な視点で整理します。
メリット
ヘッドギア治療の最大のメリットは、顎の成長を利用できる点にあります。成長期に上顎の過度な前方成長をコントロールすることで、歯だけでなく骨格バランスそのものを整えやすくなります。
たとえば、出っ歯(上顎前突)のお子さんでは、
- 将来的な抜歯矯正の回避
- 顎の骨を切る外科的矯正のリスク軽減
- 口元の突出感の改善
といった効果が期待できることがあります。これは、大人になってからでは選択できない治療アプローチです。
また、顎の位置関係が整うことで、後の本格矯正(第2期治療)がシンプルになり、治療期間や負担が軽くなる可能性もあります。早期に土台を整えておくことで、将来の治療を「やりやすくする」という意味でも大きな価値があります。
デメリット
一方で、ヘッドギアには本人と家族の協力が不可欠というデメリットがあります。決められた装着時間を毎日守らなければ効果が出にくく、自己管理が難しいお子さんの場合は負担に感じやすいこともあります。
また、装置が顔の外に出るため、
- 見た目が気になる
- 友だちに見られたくない
- 寝るときに違和感がある
といった心理的・生活的なハードルが生じることもあります。特に高学年になるほど、見た目への意識が強くなり、装着に抵抗を感じるケースもあります。
ただし、近年は「夜間中心の装着」によって、学校生活への影響を最小限に抑える工夫がされています。デメリットを理解したうえで、本人が納得して取り組めるかどうかが、治療成功の大きなポイントになります。
患者さん・保護者からのよくある質問(FAQ)
ヘッドギア矯正については、治療を検討する段階で多くの疑問や不安が生まれます。ここでは、実際に患者さん・保護者の方からよく寄せられる質問をもとに、ポイントをわかりやすく整理します。
Q1:ヘッドギアは必ず必要ですか?
A:すべての出っ歯・噛み合わせ不正に必要なわけではありません。
歯の傾きが原因の場合は、ブラケット矯正やマウスピース矯正のみで対応できることもあります。ヘッドギアは、骨格的なズレがあり、成長コントロールが有効と判断された場合に選択される装置です。
Q2:痛みはありますか?
A:強い痛みが続くことは少ないのが一般的です。
装着初期や調整後に違和感や軽い圧迫感を覚えることはありますが、多くの場合は数日で慣れます。強い痛みが続く場合は、装着方法や力の調整が必要なこともあるため、早めに歯科医院へ相談しましょう。
Q3:学校生活に支障は出ませんか?
A:基本的には支障はほとんどありません。
ヘッドギアは主に夜間や自宅での装着が中心となるため、学校に装着して行く必要はありません。見た目や友人関係への影響を最小限に抑えながら治療が可能です。
Q4:装着時間を守れなかった日はどうなりますか?
A:1日だけで大きな問題になることはありませんが、積み重なると影響が出ます。
ヘッドギアは継続が重要な装置です。装着時間が不足する日が続くと、治療期間が延びたり、効果が弱まる可能性があります。無理のない装着習慣を作ることが大切です。
Q5:途中でやめることはできますか?
A:可能ですが、治療計画の見直しが必要になります。
やむを得ない理由で中断することはできますが、その後の噛み合わせや治療方針に影響が出ることがあります。中止を考える場合は、必ず歯科医師と相談したうえで判断しましょう。
まとめ
ヘッドギアを用いた矯正治療は、顎の成長をコントロールできる「成長期ならではの治療法」です。特に出っ歯や噛み合わせのズレが骨格的な要因による場合、歯だけを動かす矯正では限界があり、ヘッドギアが大きな役割を果たすことがあります。
開始時期の目安は、顎の成長が活発な7〜10歳頃が中心ですが、実際には年齢だけで判断するものではありません。永久歯の生え替わり状況や顎の成長方向、噛み合わせのタイプによって、**「今すぐ始めるべきか」「経過観察でよいか」**は大きく変わります。そのため、早い段階で矯正専門的な評価を受けることが重要です。
また、ヘッドギアは
- 装着時間を守る必要がある
- 見た目や生活面での配慮が必要
といった側面もありますが、適切な時期に正しく使えれば、将来の抜歯や外科的矯正のリスクを減らせる可能性があります。これは、大人になってからでは選択できない大きなメリットです。
「本当に今やるべきなのか」「うちの子に合っているのか」と迷われた場合は、まずは相談・カウンセリングを受け、現状と将来の見通しを知ることから始めてみましょう。治療の流れや装着期間を事前に理解しておくことで、不安を軽減し、納得のいく矯正治療につなげることができます。
この記事の監修者情報
吉田 尚起
日本矯正歯科学会認定医
院長である吉田なおきは、国立大阪大学歯学部、および同大学院にて矯正治療を専門に学び、博士号を取得。大学病院にて7年間にわたり研鑽を積み、300症例以上の矯正治療に携わってきました。
自身も歯並びのコンプレックスを克服した経験から、見た目の美しさだけでなく、噛み合わせや心身の健康を考えた治療を心がけています。
歯科医師全体の約3%しか取得していない日本矯正歯科学会認定医として、お子様から大人の方まで、未来の笑顔をサポートします。
