2026.2.9| コラム
矯正治療で親知らずはいつ抜くべき?タイミング・判断基準を矯正歯科医が解説

「矯正治療をするなら、親知らずは必ず抜かなければいけないの?」
「抜くとしたら、矯正前・矯正中・矯正後のいつが正解?」
矯正治療を検討し始めた多くの方が、「矯正 親知らず いつ抜く」という疑問に直面します。
インターネット上では「矯正前に抜くべき」「必ずしも抜かなくていい」などさまざまな情報があり、かえって迷ってしまう方も少なくありません。
実際のところ、親知らずの抜歯タイミングに“全員共通の正解”はなく、歯並び・顎の状態・治療計画によって判断が分かれます。
タイミングを誤ると、矯正治療が長引いたり、治療後の後戻りリスクにつながることもあるため、正しい知識を持つことが重要です。
本記事では、
- 矯正治療における親知らずの役割
- 矯正前・矯正中・矯正後それぞれの抜歯タイミング
- 抜かない選択肢が成り立つケース
- 抜歯と矯正のスケジュール管理の考え方
について、矯正歯科医の視点からわかりやすく解説します。
「自分はいつ抜くべきなのか」「本当に抜歯が必要なのか」を判断するための基準が整理できる内容です。

目次
矯正治療における親知らずの役割と基本知識
矯正治療を考える際、親知らずは「抜く・抜かない」の判断だけでなく、歯並びや治療計画全体に影響を与える存在です。
とくに成人矯正では、すでに親知らずが生えている、あるいは骨の中に埋まっているケースも多く、事前に正しく理解しておくことが重要になります。
親知らずは一番奥に生えるため、自覚症状がないまま問題を抱えていることも少なくありません。
矯正治療では歯を計画的に動かしていくため、親知らずの位置や向きが治療の妨げになるかどうかを見極める必要があります。
ここではまず、
- 親知らずとはどんな歯なのか
- なぜ矯正治療と関係が深いのか
- 自己判断が危険な理由
を基礎から整理していきます。
親知らずとはどんな歯か
親知らずは、正式には第三大臼歯と呼ばれ、前歯から数えて8番目、一番奥に生える永久歯です。
一般的には10代後半〜20代前半に生えてくることが多いですが、個人差が大きく、30代以降に生えるケースや、そもそも生えてこないケースもあります。
問題になりやすい理由は、生えるスペースが不足しやすい位置にあることです。
現代人は顎が小さくなっている傾向があり、その結果、
- 横向き・斜めに生える
- 一部だけ歯ぐきから出ている
- 骨の中に完全に埋まっている
といった状態になりやすくなります。
このような親知らずは、
たとえば
- 歯みがきがしづらく、むし歯や歯周炎を起こしやすい
- 手前の歯(第二大臼歯)を押してしまう
- といったトラブルの原因になることがあります。
といったトラブルの原因になることがあります。

親知らずが矯正治療に与える影響
矯正治療では、歯を少しずつ動かしながら歯並びと噛み合わせを整えていきます。
このとき、親知らずが奥から圧力をかけている状態だと、治療にさまざまな影響が出ることがあります。
代表的なのが、以下のようなケースです。
- 歯を後方に動かしたいのに、親知らずが邪魔でスペースが確保できない
- 矯正後に、親知らずの力で歯並びが乱れ「後戻り」しやすくなる可能性がある
- 矯正中に親知らずが動き、痛みや炎症が出る
特に注意したいのは、「今は痛みがないから問題ない」と思っている場合です。
症状がなくても、将来的に歯並びへ影響する可能性があるのが親知らずの難しいところです。
そのため、矯正治療では見た目だけでなく、レントゲンやCTで親知らずの位置を確認し、歯列全体の動きを想定した判断が求められます。
矯正歯科医の診断が重要な理由
「矯正をするなら親知らずは全部抜く」と考えている方もいますが、必ずしもそれが正解とは限りません。
逆に、「抜かなくていいと言われたから安心」と自己判断してしまうのも危険です。
なぜなら、親知らずの判断は
- 歯の生え方
- 顎の骨の形
- 矯正装置の種類
- 動かす歯の方向
など、複数の要素を総合的に見て決める必要があるからです。
たとえば、
- 今は問題がなくても、数年後に矯正後の歯並びへ影響するケース
- 抜歯のタイミングを誤ることで、治療期間が延びるケース
も実際にあります。
矯正治療を成功させるためには、「抜く・抜かない」だけでなく、
「いつ」「どの段階で」「どの歯を」抜くのかまで含めた診断が欠かせません。

矯正前に親知らずを抜くタイミングとは?
矯正治療を検討する際、もっとも多く選ばれるのが「矯正前に親知らずを抜く」ケースです。
これは単に慣習ではなく、治療計画を立てやすくし、矯正をスムーズに進めるうえで合理的な理由があります。
矯正は「歯をどう動かすか」を事前に細かく設計する治療です。
その設計段階で親知らずが障害になると、計画の修正や治療期間の延長につながる可能性があります。
ここでは、
- なぜ矯正前に抜歯することが多いのか
- 抜歯の時期の目安
- 知っておきたいメリットと注意点
を整理して解説します。
なぜ矯正前に抜くことが多いのか
矯正前に親知らずを抜く最大の理由は、歯を動かすためのスペースと自由度を確保するためです。
たとえば、
- 奥歯を後方に下げたい
- 歯列全体をバランスよく並べたい
といった場合、親知らずが残っていると、歯の移動が制限されることがあります。
また、矯正装置の設計上も、
- 親知らずがあることでワイヤーやマウスピースの計画が複雑になる
- 治療途中で「やはり抜いたほうが良い」と判断が変わる
といった事態を避けやすくなります。
最初から抜歯を済ませておくことで、矯正計画を一貫した流れで進めやすくなる点が、矯正前抜歯が選ばれる大きな理由です。

抜歯の時期目安
矯正前に親知らずを抜く場合、多くは精密検査と治療計画が固まった後、装置を装着する前に行われます。
一般的な流れとしては、
- 初診相談
- レントゲン・CTなどの精密検査
- 矯正治療計画の説明
- 親知らずの抜歯
- 抜歯後の回復期間
- 矯正装置の装着
という順番になります。
抜歯から矯正開始までの期間は、1〜2週間程度が目安になることが多く、
腫れや痛みが落ち着いてから装置を付けるのが一般的です。
ただし、親知らずの状態(埋伏している・難易度が高いなど)によっては、
回復期間をやや長めに取るケースもあります。
メリットと注意点
矯正前に親知らずを抜くことには、明確なメリットがあります。
メリット
- 歯の移動スペースを確保しやすい
- 矯正計画を途中で変更するリスクが少ない
- 矯正後の後戻りリスクを抑えやすい
一方で、注意点も理解しておく必要があります。
注意点
- 抜歯後、一時的に腫れや痛みが出る
- 抜歯をしたら歯は戻ってこない
- 両側同時に抜く場合は負担が大きくなることもある
たとえば、大事な予定が続く時期に抜歯を行うと、
「思ったより腫れてしまった」「食事がつらかった」
と感じることもあります。
また、親知らずを将来悪くなってしまう歯の代わりの歯(移植する歯)として残しておくこともあります。
そのため、矯正治療全体のスケジュールと生活リズムを踏まえた計画が大切です。
矯正中・矯正後の親知らず抜歯のケース
すべての矯正治療で、必ずしも「矯正前」に親知らずを抜くとは限りません。
実際には、矯正を始めてから影響が出てきた場合や、矯正終了後の安定性を考えて抜歯を検討するケースもあります。
とくに成人矯正では、治療開始時点では問題がなくても、
歯の移動に伴って親知らずの存在が無視できなくなることがあります。
ここでは、
- 矯正中に抜歯するケース
- 矯正後に抜歯するケース
- その際に注意すべきポイント
を順に解説します。

矯正中に抜歯する場合
矯正中の親知らず抜歯は、治療を進めるなかで「影響が出てきた」と判断された場合に行われます。
たとえば、
- 矯正開始後に親知らずが生えてきて、痛みが出てきた
- 親知らずを抜いた後の炎症反応を利用して、早く歯を動かしたい(大臼歯の遠心移動に有効)
といったケースです。

このような場合、最初は経過観察としていても、
治療の妨げになる可能性が高いと判断されれば、途中で抜歯を行います。
矯正中に抜歯すること自体は珍しいことではありません。
積極的に矯正治療中に親知らずを抜歯して、歯を動かす場合もあります。
矯正後に抜歯するケース
矯正治療が完了したあとに、親知らずの抜歯を行うケースもあります。
これは、治療中は影響が少ないと判断されたものの、将来的なリスクを考慮する場合です。
代表的なのは、
- 矯正後の後戻りのリスクを減らしたい
- 保定期間中に親知らずが動きそう
- 将来トラブルを起こしやすい位置にある
といった判断がなされたケースです。
矯正後は歯並びが整った状態のため、
「せっかくきれいに並んだ歯を、長く安定させたい」という目的で
あえて治療後に抜歯を選択することもあります。
この場合、矯正装置はすでに外れているため、
抜歯そのものは矯正治療に直接影響しにくい一方、
保定装置(リテーナー)の使用管理がより重要になります。
注意すべきポイント
矯正中・矯正後に親知らずを抜く場合、共通して注意したいのが
**「治療全体の流れを止めないこと」**です。
具体的には、
- 抜歯後の腫れや痛みを見越した通院スケジュール調整
- 必要に応じた装置の再調整
- 保定期間中の後戻り対策
などを、事前にしっかり確認しておくことが大切です。
「矯正中だから抜けない」「矯正が終わったからもう関係ない」
という単純な話ではなく、
どの段階でも、親知らずは歯並びに影響しうる存在だと理解しておくと安心です。
親知らずを抜かない選択肢と条件
矯正治療を考えるとき、「親知らず=必ず抜歯」というイメージを持つ方は少なくありません。
しかし実際には、すべてのケースで親知らずを抜く必要があるわけではありません。
歯並びや噛み合わせ、親知らずの状態によっては、
抜歯をせずに矯正治療を進める方が適している場合もあります。
大切なのは、「抜く・抜かない」を感覚で決めるのではなく、
矯正治療に与える影響があるかどうかを冷静に見極めることです。
問題のないまっすぐ生えている親知らず
親知らずが以下のような状態であれば、必ずしも抜歯の対象にはなりません。

- まっすぐ正常な向きで生えている
- 上下でしっかり噛み合っている
- 歯みがきがしやすく、清掃状態が良い
- 周囲の歯や歯ぐきに炎症がない
たとえば、奥歯まできれいに並んでおり、
親知らずが「他の奥歯と同じように機能している」場合には、
矯正治療の邪魔にならないケースもあります。
このような場合、無理に抜歯を行うよりも、
現状を活かした治療計画のほうが身体的な負担が少なく済むこともあります。
矯正治療の影響が少ない場合
親知らずが存在していても、
歯を動かす方向や範囲によっては影響がほとんど出ないケースもあります。
たとえば、
- 歯列を大きく後方へ動かす必要がない
- 軽度の歯並び改善が目的
- 部分矯正で奥歯をほとんど動かさない
といった治療内容では、
親知らずが矯正計画に直接関与しないこともあります。
このようなケースでは、
「今すぐ抜く必要はないが、将来的な変化には注意する」
というスタンスで治療を進めることが多くなります。
定期観察しながらの対応
親知らずを抜かない選択をする場合、重要なのが定期的な経過観察です。
たとえば、
- 矯正中に親知らずが動いてきていないか
- 歯ぐきの腫れや違和感が出ていないか
- 矯正後の歯並びに圧力をかけていないか
といった点を、定期検診やレントゲンで確認していきます。
「今は問題がない」状態でも、
時間の経過とともに状況が変わる可能性があるのが親知らずの特徴です。
だからこそ、抜歯しない場合でも
放置せず、管理し続けることが前提になります。
抜歯と矯正のスケジュール管理
親知らずの抜歯と矯正治療は、それぞれ単独でも身体への負担がある治療です。
そのため重要になるのが、「いつ抜くか」だけでなく、「どうスケジュールを組むか」という視点です。
タイミングを誤ると、
- 痛みや腫れが長引く
- 矯正装置の装着が遅れる
- 通院や日常生活に支障が出る
といったストレスにつながることもあります。
ここでは、回復期間の目安や、矯正との上手な組み合わせ方を整理します。
抜歯後の腫れ・治癒の目安
親知らずを抜いた後の経過は、歯の生え方や抜歯の難易度によって異なります。
一般的な目安としては、
- 腫れや痛みのピーク:抜歯後2〜3日
- 日常生活に支障が出にくくなる:1週間前後
- 歯ぐきが落ち着く:1〜2週間
程度と考えられます。
たとえば、
- まっすぐ生えている親知らず
- 抜歯時間が短いケース
では回復も比較的早い傾向があります。
一方で、骨の中に埋まっている場合などは、腫れが長引くこともあるため、余裕を持った計画が必要です。
矯正装置の装着タイミング
矯正装置は、抜歯後の痛みや炎症が落ち着いてから装着するのが基本です。
多くの場合、
- 抜歯から1〜2週間後に矯正開始
- 状態によっては、さらに1週間ほど様子を見る
といった流れになります。
無理に早く装置を付けてしまうと、
- 抜歯部位の痛みが強くなる
- 口が開けづらく調整がつらい
といった問題が起こることもあります。
そのため、
「できるだけ早く矯正を始めたい」気持ちと、「回復を優先する」判断のバランスが大切です。
実際の治療スケジュール例
一例として、矯正前に親知らずを抜く場合のスケジュールモデルを紹介します。
- 初診相談・検査
- 治療計画の説明
- 親知らずの抜歯
- 約1〜2週間の回復期間
- 矯正装置の装着
- 定期調整(約月1回)
このように、抜歯は矯正治療の一部として組み込まれるのが一般的です。
仕事や学校、イベントなどがある場合は、
「この週は抜歯を避けたい」「連休中に抜きたい」
といった希望を事前に伝えることで、無理のない計画を立てやすくなります。
よくある質問(FAQ)
ここでは、実際によく寄せられる質問をQ&A形式で整理します。
事前に疑問点を解消しておくことで、矯正治療への不安を減らし、納得したうえで治療に進みやすくなります。
痛みや腫れはどれくらい続く?
親知らずの抜歯後の痛みや腫れには個人差がありますが、多くの場合は数日〜1週間程度で落ち着きます。
一般的には、
- 抜歯当日〜翌日:違和感や軽い痛み
- 2〜3日目:腫れのピーク
- 1週間前後:日常生活にほぼ支障なし
という経過をたどることが多いです。
処方された痛み止めを適切に使用し、
- 無理に触らない
- 強いうがいを避ける
などの指示を守ることで、回復はスムーズになります。
年齢による治療への影響は?
親知らずの抜歯自体は、年齢だけで可否が決まるものではありません。
ただし、一般的には若い方が回復が早い傾向があります。
たとえば、
- 20代前半:骨がやわらかく、治癒が比較的早い
- 30代以降:骨が硬くなり、腫れが長引くこともある
という傾向はありますが、
大切なのは年齢よりも「親知らずの状態」です。
矯正治療を始めるタイミングで適切に判断すれば、
年齢に関わらず安全に治療を進めることが可能です。
矯正後の後戻り防止には?
矯正後の後戻りは、親知らずだけが原因ではありません。
そのため、親知らずの管理とあわせて、総合的な対策が重要になります。
具体的には、
- 保定装置(リテーナー)を指示通り使用する
- 定期的な経過観察を受ける
- 親知らずが後方から圧力をかけていないか確認する
といった点が大切です。
「矯正が終わったから安心」ではなく、
矯正後のケアこそ歯並びを守る重要な期間だと考えるとよいでしょう。
まとめ
矯正治療における親知らずの抜歯は、
「必ず抜くべき」「必ず残すべき」と一律に決められるものではありません。
- 矯正前に抜くことで治療がスムーズに進むケース
- 矯正中・矯正後に状況を見て抜歯するケース
- 条件が整っていれば抜かずに経過観察するケース
など、判断はすべてケースバイケースです。
重要なのは、
「矯正 親知らず いつ抜くか」を自己判断せず、治療計画全体の中で考えること。
親知らずの状態、歯の動かし方、将来の安定性まで見据えた診断が、矯正治療の満足度を大きく左右します。
「自分の場合はどうなるのか」「本当に抜歯が必要なのか」と迷っている方は、
まずは検査・カウンセリングで現状を正しく知ることが第一歩です。
不安や疑問を一つずつ整理しながら、
将来まで安心できる矯正治療を進めていきましょう。
この記事の監修者情報
吉田 尚起
日本矯正歯科学会認定医
院長である吉田なおきは、国立大阪大学歯学部、および同大学院にて矯正治療を専門に学び、博士号を取得。大学病院にて7年間にわたり研鑽を積み、300症例以上の矯正治療に携わってきました。
自身も歯並びのコンプレックスを克服した経験から、見た目の美しさだけでなく、噛み合わせや心身の健康を考えた治療を心がけています。
歯科医師全体の約3%しか取得していない日本矯正歯科学会認定医として、お子様から大人の方まで、未来の笑顔をサポートします。
