2025.8.29| 矯正相談集
「受け口が気になる…」とご相談いただいたY.Tさん(10歳女の子)のケース
「前歯が下の歯より後ろに隠れてしまっている」「受け口かもしれない」…そんなお子様のお口の状態に不安を抱えて来院されるご家族も多くいらっしゃいます。
今回は、「受け口が気になる」と来院された10歳の女の子、Y.Tさんとの初診時のやり取りをご紹介します。歯並びだけではなく、骨格や将来的な成長を踏まえた相談内容についてもお伝えします。
患者様情報
年齢 | 10歳 |
性別 | 女の子 |
初診時の画像診断



前歯の咬み合わせが反対(反対咬合)になっています。骨格的にも受け口の骨格をしています。
右上の前から3番目の歯(犬歯)の先端が前から2番目の歯(側切歯)の根っこに向かって進んでいます。
ご相談のきっかけ
学校の歯科検診で「受け口」を指摘されたことをきっかけに、不安を感じて当院へご相談にいらっしゃいました。
特に、
- 「どういった治療が必要なのか」
- 「今はどういう状態なのか」
といった点を知りたいとのことでした。
患者様との実際のやり取り
はじめまして。今日はどんなところが気になって来られましたか?
はい。前歯が下の歯より後ろになっていて、受け口じゃないかと気になっています。
拝見しましたが、確かに下の前歯が上の前歯を覆いかぶさるように反対にかみ合っています。これは一般的に「受け口」と呼ばれる状態ですね。遺伝的な要素も関わりやすいので、ご家族の歯並びについて伺いましたが、お父さんが受け口気味とのこと。お父さんの要素を多く受け継いだのかもしれません。
そうなんですね。受け口が続くと、将来的にどんな影響がありますか?
受け口の場合、歯並びだけでなく骨格的な要因が関わっていることが多いです。Y.Tさんも、下顎の成長が大きいので、上顎とのバランスがずれている可能性が高いです。このまま成長が進むと、かみ合わせだけでなく顔立ちにも影響してくる場合があります。
なるほど…。治療は今すぐ必要なんでしょうか?
結論から言うと、まだ成長期であるため、すぐに受け口に対して外科的な治療をする必要はありません。ただ、上の歯の永久歯の生え方に少し気になる点があり、特に犬歯(前から3番目の歯)が正しい位置に生えにくい傾向があります。放置すると隣の歯(前から2番目の歯)の根っこに悪影響を与えてしまう可能性もあるため、その歯を適正な位置に誘導することを目的とした処置は早めに考えた方が良いかと思います。
誘導って、どんな治療になるんですか?
歯ぐきの下に隠れている歯を少し見えるようにして、小さなボタンをつけて、ゴムでゆっくり引っ張ってあげる方法です。歯は1か月に少ししか動かないので、半年から1年ほどかけて位置を整えていきます。大掛かりなものではありませんが、将来その歯を守るためには大切な治療になります。
その後、受け口自体はどうしていくんですか?
骨格的な受け口は、成長の影響を強く受けるため、小児期の治療で完全に改善するのは難しいケースが多いです。将来的に大きな改善を目指す場合には、成長が止まる高校生以降に手術を伴う治療を検討することになります。ただし、これは「必ずしなければいけない治療」ではなく、見た目やかみ合わせをどこまで理想に近づけたいかによって選択するものです。
なるほど、そういう理由なんですね!一度、家族で検討してきます。
まとめ
Y.Tさんのケースでは、
- 現時点での大きな課題は「犬歯の生え方」であり、早めの処置が望ましい
- 受け口自体は骨格性の影響が強く、将来的に手術を含む治療の可能性もある
- ただし、それは必須ではなく、ご本人やご家族の希望に応じて検討できる
という相談結果になりました。
小児矯正では、単に歯を並べるのではなく、成長や骨格のバランスを見据えて「今必要なこと」と「将来考えられること」を整理することがとても大切です。お子様の歯並びやかみ合わせでご不安がある場合は、ぜひ早めにご相談ください。
この記事の監修者情報
吉田 尚起
日本矯正歯科学会認定医
院長である吉田なおきは、国立大阪大学歯学部、および同大学院にて矯正治療を専門に学び、博士号を取得。大学病院にて7年間にわたり研鑽を積み、300症例以上の矯正治療に携わってきました。
自身も歯並びのコンプレックスを克服した経験から、見た目の美しさだけでなく、噛み合わせや心身の健康を考えた治療を心がけています。
歯科医師全体の約3%しか取得していない日本矯正歯科学会認定医として、お子様から大人の方まで、未来の笑顔をサポートします。
