2025.10.6| 矯正相談集
「歯のガタガタが気になる…」とご相談いただいた患者様のケース
「前歯が重なっている」「歯が生えるスペースが足りない気がする」…このような歯並びに関するご相談は、成長期のお子様をお持ちの親御様から多くいただきます。
今回は、「歯がガタガタしてきたのが気になる」とご相談いただいた患者様との初診時のやり取りをご紹介します。見た目だけでなく、将来のかみ合わせや顎の成長も考えた当院の相談内容についてお伝えします。
患者様情報
年齢 | 小学生 |
性別 | 女の子 |
初診時の画像診断



永久歯が生えるスペースが足りません。上下の歯並びに将来的に重度のガタガタが予想されます。左下の前から2番目の歯がなかなか生えてきていませんでした。
上下の前歯の前後的な距離が大きく、出っ歯傾向がありました。
ご相談のきっかけ
患者様は、他院で「下の前歯が生えるスペースが足りず、なかなか生えていないため矯正治療を検討した方がいい」とアドバイスを受け、当院に来院されました。かかりつけの歯科医院では左下の前歯が生える手助けとして歯茎の処置を提案されましたが、今後の歯並びや矯正の必要性について専門的な診断を受けたいと考え、当院を受診されました。
患者様との実際のやり取り
こんにちは。今日はどのようなところが気になっていますか?
歯がガタガタしていて、スペースが足りないような気がして心配です…。
拝見しましたが、確かに患者様は歯の並ぶスペースがかなり不足している状態です。今後新しい歯が生えてくるとさらに混み合ってしまう可能性がありますね。
特に下の前歯は約4mm〜6mmのスペースが不足しています。このままでは自然に整うのは難しいので、歯並びを広げてスペースを確保してあげる治療が必要になると思います。
歯並びを広げるって、どのような治療になるんですか?
お口の中に「床拡大装置」と呼ばれる装置を装着し、ネジを少しずつ回して横幅を広げていきます。週に1回ほどのペースで調整していくことで、顎と歯並び全体が少しずつ横に広がっていき、歯が並ぶための十分なスペースを確保できるようになります。
同年代のお子さんでも装着している方が多く、成長期である今(8~10歳)は顎の成長を活かせる非常に良いタイミングです。
治療はどれくらいの期間かかりますか?
まず顎を広げてスペースを確保するのに約半年〜1年かかかります。その後、歯をきれいに並べるために1〜2年ほどかけていきます。患者様は歯の生え変わりが同世代のお子さんに比べてゆっくりなので、永久歯が生え揃う小学校高学年〜中学生頃まで経過は見ていく予定です。
将来的に永久歯の矯正治療(Ⅱ期治療)は必要になりますか?
今の段階でしっかりと顎を広げて土台を整えられれば、ある程度のガタガタは改善します。しかし、すべての歯の歯並びを綺麗に整えてあげるには永久歯の矯正(二期治療)が必要になります。
説明ありがとうございます。検査の予約をとって帰ります。
まとめ
患者様のケースでは、
・「歯列のガタつき」や「前歯の突出」に対して、歯並びの拡大と歯列矯正を組み合わせてスペースを確保し、整った歯並びへ導くこと
・生え変わりの時期や成長スピードに合わせて治療を進めることで、自然な発育を妨げずに理想的な歯列・かみ合わせを実現することが重要です。
今回の診察では、現時点での「歯の重なり」や「スペース不足」といった見た目の問題だけでなく、今後生えてくる永久歯との関係性や顎の成長を考慮しながら、治療計画についてご説明しました。
小児矯正では、単に歯を並べるだけでなく、成長に合わせて「歯が並ぶための環境」を整えてあげることが非常に大切です。顎の成長期である今の時期だからこそできる治療がありますので、お子様の歯並びやスペース不足が気になる方は、ぜひ一度ご相談ください。将来を見据えた最適な治療方法を一緒に考えていきましょう。
この記事の監修者情報
吉田 尚起
日本矯正歯科学会認定医
院長である吉田なおきは、国立大阪大学歯学部、および同大学院にて矯正治療を専門に学び、博士号を取得。大学病院にて7年間にわたり研鑽を積み、300症例以上の矯正治療に携わってきました。
自身も歯並びのコンプレックスを克服した経験から、見た目の美しさだけでなく、噛み合わせや心身の健康を考えた治療を心がけています。
歯科医師全体の約3%しか取得していない日本矯正歯科学会認定医として、お子様から大人の方まで、未来の笑顔をサポートします。
