2025.11.28| コラム
フェイスマスク矯正とは? 子どもの受け口を骨格から治す早期治療ガイド

お子さまの受け口(反対咬合)を見て、「このまま大人になってしまうのでは…」「早く治した方がいいの?」と不安を抱えている親御さんは少なくありません。受け口は見た目だけの問題ではなく、噛み合わせのズレや発音のしづらさ、将来の顎の成長へ影響することもあり、気づいたときの対応がとても大切です。
そのなかでも成長期の力を利用して骨格から改善をめざす「フェイスマスク矯正」は、早期治療の選択肢として注目されている方法です。上顎の成長を前方へ導くことで、骨格由来の受け口に対して大きな効果が期待できます。さらに、より低年齢では筋機能を整える「プレオルソ」という治療を併用することで、口腔習癖の改善や顎の発育のサポートも可能になります。
本記事では、受け口に悩む親御さんに向けて、フェイスマスク矯正の仕組み・適応・注意点をわかりやすく解説し、早期治療がなぜ重要なのかを具体例とともに紹介します。また、成長を味方につけた治療に力を入れている当院の特徴にも触れ、今何を判断すべきかがクリアになるよう丁寧に整理していきます。
目次
受け口(反対咬合)とは — まず理解しておきたいポイント
受け口(反対咬合)とは、下の歯や下顎が上の歯より前に出て噛み合っている状態を指します。本来の正常な噛み合わせでは、上の前歯が軽く前に位置し、下の歯を包み込むように接触します。しかし受け口ではこの前後関係が逆転し、「前歯で食べ物を噛み切りにくい」「発音がしづらい」「下あごが前に見える」など、日常生活にも影響が出やすいのが特徴です。
特にお子さまの受け口は、骨格の成長とともに症状が進行しやすい点が大きなリスクです。幼少期には軽度に見えても、成長とともに下顎の前方への成長が強まり、思春期には治療が複雑化するケースも少なくありません。早い段階で状態を正しく把握し、必要に応じて治療を開始することで、将来的な負担を減らすことが可能です。
この記事ではまず、受け口の原因と放置によるリスクを整理したうえで、後半ではフェイスマスクを使用した矯正という成長期ならではの効果的な治療法に話を進めていきます。
受け口・反対咬合の主な原因
受け口(反対咬合)は一見「下あごが出ているだけ」のように見えますが、実際にはさまざまな要因が複雑に関わっています。特にお子さまの場合、**骨格・遺伝・口腔機能習癖**などが組み合わさって症状が現れることが多く、原因を正しく捉えることが治療計画の第一歩となります。
まず大きな要因となるのが 骨格的な問題 です。たとえば、上顎の成長が十分に前方へ進まない「上顎成長不足(上顎裂成長)」や、下顎が過度に前方へ成長する「下顎の過成長」などが挙げられます。成長期はこの骨格バランスが大きく変化するため、軽度の受け口が学童期〜思春期にかけて悪化するケースもあります。
次に 遺伝の影響 も無視できません。親御さんのどちらかが受け口だった場合、似た傾向の骨格が受け継がれる可能性があります。ただし遺伝だけでなく、成長環境や口腔機能による影響が重なることで症状が強く出ることもあります。
さらに近年注目されているのが、舌癖・口呼吸・頬杖・低位舌といった口腔習癖です。たとえば、舌が常に下に落ちている「低位舌」や口呼吸が続くと、上顎が十分に発育しにくく、結果的に受け口を助長するような力が働いてしまいます。これらの習癖は筋機能の問題と深く結びついており、改善しない限り治療後の後戻りにつながる場合もあります。
このように、受け口の原因は単一ではなく、**「骨格 × 機能 × 習癖」**の三つが複雑に関わります。だからこそ、お子さま一人ひとりの成長状態を丁寧に分析し、最適な治療タイミングを見極めることが重要です。
放置すると起こりやすい問題
受け口(反対咬合)をそのままにしておくと、見た目以上にさまざまな影響が積み重なっていきます。特に成長期のお子さまは、顎の成長スピードが速く、数年単位で症状が大きく進行する可能性があるため注意が必要です。
まず日常生活で多いのが、咀嚼のしにくさです。前歯で食べ物を噛み切りにくいため、奥歯で無理に噛もうとして咀嚼効率が下がり、胃腸への負担が大きくなることもあります。
見た目の面では、下顎が前に見える横顔(いわゆる“受け口”)が目立ちやすくなり、成長とともに 顔貌のアンバランス が強くなることがあります。早期に改善すれば自然なバランスに戻しやすい一方、思春期以降は骨格が固まるため治療の幅が狭くなります。
さらに、噛み合わせのズレが続くことで 歯の摩耗や顎関節の負担 が蓄積し、大人になってから顎関節症につながる場合もあります。特に骨格性の受け口が進行してしまったケースでは、矯正治療だけでは改善が難しく、将来的に外科的矯正(顎の手術)を検討する必要が出てくることもあります。
このようなリスクを避けるためには、受け口を早めに見つけ、適切な治療時期にアプローチすることが大切です。次の項目では、骨格から改善を図る「フェイスマスク矯正」について詳しく解説していきます。
フェイスマスク矯正(上顎前方牽引装置)とは — 骨格から受け口を改善する早期治療
フェイスマスク矯正とは、上顎の成長を前方へ導くことで骨格から受け口(反対咬合)を改善する治療法です。特に、上顎の成長が弱く下顎が相対的に前へ見える「骨格性の受け口」に対して高い効果が期待できます。歯の角度だけを調整する一般的な矯正とは異なり、成長期ならではの「顎の骨そのものの成長力」を利用してアプローチできる点が大きな特徴です。
受け口は、見た目の印象だけでなく、噛み合わせ・咀嚼・発音・顎関節など様々な機能へ影響します。骨格性の原因がある場合、成長が進むにつれて症状が悪化することもあるため、早期の介入が治療の成否を左右します。フェイスマスクは、まさにこのタイミングで「上顎の成長を引き出す」ために用いられる治療で、成長ピーク前〜成長期に合わせて行うことで最大限の効果を発揮します。
当院でも、精密検査によって「上顎の成長不足」が認められるお子さまには早期治療を積極的に提案しており、将来の外科矯正リスクを減らすことを大きな目的として治療計画を立てています。次の見出しでは、フェイスマスクの具体的な構造や仕組みをよりわかりやすく解説していきます。
フェイスマスクの構造としくみ
フェイスマスク矯正は、口腔内装置+口腔外装置+牽引ゴムの3つを組み合わせて、上顎を前方へ導く仕組みで成り立っています。見た目は少し大がかりに見えますが、構造自体はシンプルで、成長期の骨に働きかけるための「力の方向と大きさ」を細かくコントロールできることが大きな利点です。
まず、口の中に入れる 口腔内装置(上顎に固定する装置)が軸となり、ここにフックやワイヤーが設置されます。この部分が“牽引するための土台”となり、上顎の骨へ確実に力を伝える役割を果たします。続いて、顔の外側に装着する 口腔外装置(フェイスマスク本体) が額と顎の2点で支えられ、安定したフレームを形成します。
この口腔内装置と口腔外装置をつなぐのが、前下方向へ斜め方向にかける 牽引ゴム です。ゴムの張力によって、上顎を前下方へ引き出す力がかかり、成長方向をコントロールします。特に成長期のお子さまの上顎は反応しやすく、この引く力が骨に伝わることで、上顎の位置を改善し、受け口の原因となる骨格的なズレを補正することができます。
このように、フェイスマスク矯正は「骨を動かす」という一般的な歯列矯正とは異なる性質を持ち、適切なタイミングで行うことで大きな治療効果が得られます。次では、特に重要な「適応年齢と治療のベストタイミング」について解説します。
適応年齢と治療のベストタイミング
フェイスマスク矯正がもっとも力を発揮するのは、上顎の成長が活発な6~10歳頃の成長期です。この時期は上顎骨の成長スピードが大きいことから、外から加わる力に対して反応しやすいため、「前方牽引による骨格改善」が効果的に行えます。逆に、成長がほぼ完了した中学生〜成人では、骨が固まり反応が乏しくなるため、フェイスマスク単独での効果は限定的になります。
特に重要なのは、成長ピークより前に治療をスタートできるかどうかです。受け口は下顎の成長が後から一気に加速することがあるため、上顎の成長力をしっかり引き出せる時期を逃すと、骨格の差が広がり、将来は外科矯正を併用しなければならないケースも出てきます。
また、年齢だけではなく、上顎の成長不足が明らかかどうかも重要な判断材料です。当院では、セファロ分析(頭部X線規格写真)や3Dスキャンを用いた精密検査により、「骨格のズレ」「歯の傾き」「顎の成長方向」を詳細に把握し、最適な開始時期を見極めています。成長期のタイミングと骨格的な必要性が重なったとき、フェイスマスク矯正は最も高い効果を発揮します。
次章では、この治療で実際にどのような変化が期待できるのか、具体的な効果を詳しく解説します。
期待できる効果
フェイスマスク矯正では、成長期の力を利用して上顎の位置と成長方向を整えるため、歯並びの見た目だけではなく、骨格そのものの改善 が期待できます。特に上顎の成長不足による骨格性受け口のお子さまに対しては、ほかの治療法では得られない大きなメリットがあります。
まず最も大きな効果は、上顎の前方成長を引き出せることです。牽引力が骨に伝わることで、上顎が本来進むべき大きさに近づき、上下顎の前後関係が整いやすくなります。それに伴い、前歯の噛み合わせも改善し、「前歯で噛み切りやすくなる」「発音しやすくなる」といった機能的メリットが現れます。
次に、骨格が整うことで 横顔の印象が自然に変わる 点も重要です。受け口特有の「下顎が強調される横顔」が改善され、バランスの良いフェイスラインに近づきます。これは歯だけの矯正では得られない、フェイスマスクならではの効果です。
さらに、成長期に骨格を整えることで、将来の外科的矯正(顎の手術)を回避できる可能性を高める ことも大きなポイントです。骨格性の受け口は進行するほど矯正だけでの治療が難しくなりますが、早期介入によって成長方向を正しく導くことで、成人後の治療負担を大きく減らせます。
このようにフェイスマスク矯正は、骨格改善・機能改善・顔貌バランスの向上という複数の効果が得られる治療です。次の見出しでは、具体的にどのような流れで治療が進むのかをご紹介します。
フェイスマスク矯正の流れと治療期間・費用
フェイスマスク矯正は大がかりな治療に見えますが、実際には「診断 → 装置の準備 → 使用スタート → 経過観察」という明確なステップで進みます。特に成長期のお子さまの場合、骨格の変化を正しく捉えながら進めることが重要であり、定期的なチェックによって治療効果を適切に引き出していきます。
まずは精密検査による診断から始まります。セファロ(頭部X線規格写真)や3Dスキャンで骨格のバランス・歯の傾き・顎の成長方向を分析し、上顎の成長不足がどの程度あるのかを正確に評価します。この段階でフェイスマスクが適応かどうかが判断され、治療計画が具体化されます。
装置が完成すると、医院で使用方法の説明を受け、いよいよ自宅での装着がスタートします。フェイスマスクは家庭での協力度が非常に重要な治療のため、親御さんがサポートしやすいよう、当院では装着時間の管理方法や生活上の注意を丁寧にお伝えしています。その後は 月1回程度の定期チェックを行い、骨格の変化や噛み合わせの状態を見ながら力の調整・ゴム交換の指導を続けます。
治療期間の目安は1年〜3年ほどで、成長のタイミングや骨格の状態によって長さが前後することがあります。費用は自由診療となり、一般的には「装置料+毎月の管理料」で構成されます。治療内容によって費用が変動するため、初診相談や診断時に詳細を案内しています。
ここからは、具体的な「装着時間」「治療期間の目安」「費用の考え方」をさらに詳しく解説していきます。
装着時間と使用方法
フェイスマスク矯正の効果を左右する最大のポイントは、1日あたりの装着時間です。一般的には 8〜10時間の着用 が推奨されており、特に「就寝時」を中心に、帰宅後の時間を組み合わせて使用します。学校や外出時に無理に装着する必要はなく、日常生活のリズムに合わせて取り入れられることが特徴です。
使い方はシンプルで、まず上顎に固定している口腔内装置のフックに牽引ゴムをかけ、続いて顔の外側に装着するフェイスマスクのフックに引っ掛けます。このゴムの張力が上顎を前方に導く力となるため、ゴム交換を毎日行うことが効果を維持するうえで大切です。
装着の初日やゴム交換直後は、頬や歯に軽い違和感を覚えることがありますが、多くのお子さまは数日で慣れていきます。スムーズな使用のために、当院ではご家庭での管理ポイント(装着時間の記録方法・ゴムの扱い・就寝時の姿勢など)を親御さんにもわかりやすく説明し、無理なく継続できる体制を整えています。
このように、フェイスマスク矯正は「どれだけ規則正しく使えるか」が治療効果に直結します。次の項目では、治療期間の目安と通院頻度について詳しく解説します。
治療期間・来院間隔
フェイスマスク矯正の治療期間は、一般的に1年〜3年程度が目安です。ただし、上顎の成長量・受け口の程度・成長期のタイミングによって個人差があり、数ヶ月で改善が進むケースもあれば、成長を見ながら長めに経過を見る場合もあります。治療が長期に及ぶというよりは、「骨格が正しく変化するタイミングを捉えること」が重要で、そのために定期観察を丁寧に行います。
来院間隔は 月1回程度が基本です。毎回のチェックでは、噛み合わせの変化、上顎の位置の改善度、ゴムの使用状況などを確認し、必要に応じて力の調整やゴムの種類の見直しを行います。特に成長期は骨格の変化が早いため、小さなズレを見逃さないよう慎重なモニタリングが欠かせません。
当院では、3Dスキャナーやセファロ分析によって毎回の変化を視覚的に確認し、親御さんにも現状をわかりやすく共有しています。これにより「どれだけ改善が進んでいるのか」「装着時間が結果にどう影響するか」が理解しやすくなり、モチベーション維持にもつながります。
治療期間と通院頻度が明確であることは、お子さまにも親御さんにも大きな安心材料になります。次の項目では、治療費の考え方について整理していきます。
費用の考え方
フェイスマスク矯正は 自由診療 となるため、費用は「装置にかかる料金」と「治療中の管理料(調整料)」の2つで構成されるのが一般的です。保険診療のように全国一律ではなく、医院ごとに料金設定が異なるため、初診相談や精密検査後に提示される見積もりを確認することが大切です。
まず大きな部分を占めるのが 装置料 です。フェイスマスク本体だけでなく、上顎に装着する口腔内装置、治療計画の立案に必要な検査費用などが含まれます。また、治療開始までの診断プロセスにはセファロ分析や3Dスキャンといった精密検査が必要になり、これらは治療計画の精度を高めるために欠かせない工程です。
治療開始後は、月1回程度の通院で 管理料(調整料) が発生します。この費用には、骨格の変化の確認、ゴムの使用状況チェック、力の調整、装置の微調整などが含まれ、治療効果を最大限に引き出すための重要なサポートが提供されます。
さらに、お子さまの場合は成長を見ながらの治療となるため、フェイスマスク矯正が完了した後も、必要に応じて別の装置や次のステップ(1期治療→2期治療)に進む場合があり、その際には追加料金が発生することがあります。いずれにしても、費用の全体像は治療開始前のカウンセリングで丁寧に説明されるため、不明点は遠慮なく相談することが大切です。
フェイスマスクだけではない — 幼児〜低学年向け「プレオルソ」との役割の違い
受け口の治療と聞くと、骨格にアプローチするフェイスマスク矯正を思い浮かべる親御さんが多いかもしれません。しかし、実際には 幼児〜低学年のお子さまには別のアプローチが適している場合 があります。それが、筋機能を整えるマウスピース型装置である プレオルソ(筋機能矯正装置) です。
フェイスマスクが「骨格の成長不足を補う力学的アプローチ」であるのに対し、プレオルソは 口周りの筋肉バランス・舌の位置・口呼吸などの“機能”を改善するアプローチ が中心です。受け口の原因は骨格だけではなく、舌癖や口呼吸といった口腔習癖によって引き起こされるケースも多いため、成長が始まる前の段階でこれらを整えることはとても重要です。
特に乳歯列〜混合歯列初期(5〜8歳頃)の段階では、顎の骨がまだ柔らかく、筋肉や舌の働きが発育に大きく影響します。この時期から正しい筋機能を習慣づけておくことで、のちのフェイスマスク治療の効率を高めたり、そもそも骨格的なズレを軽減できたりするメリットがあります。
このように、「機能を整えるプレオルソ」と「骨格を整えるフェイスマスク」はそれぞれの得意分野が異なり、お子さまの年齢・成長段階・受け口の原因によって使い分けることが大切です。次の見出しでは、まずプレオルソとはどんな装置なのかを詳しく解説します。
プレオルソとは何か(幼児期の筋機能矯正)
プレオルソとは、幼児〜小学校低学年(目安:5〜8歳頃)に使用できる、取り外し式の筋機能矯正装置です。柔らかいシリコン素材でできたマウスピース型の装置で、お口まわりの筋肉の使い方・舌の位置・唇の閉じ方など、歯並びに影響する“筋機能”を整えることを主目的としています。
受け口(反対咬合)のお子さまでは、舌が下に落ちやすい「低位舌」、口がポカンと開きやすい「口呼吸」、下顎を前に突き出す癖など、筋肉の働きに偏りがあることが少なくありません。これらの習癖は、上顎の成長を妨げたり、下顎を前に押し出す力になったりと、骨格の発育にも大きく影響します。
プレオルソを使うことで、
- 舌が正しい位置(上顎側)に収まりやすくなる
- 唇を閉じる力が整う
- 口呼吸から鼻呼吸へ誘導しやすくなる
- 下顎を前に押し出す癖を抑え、自然な噛み合わせを誘導
といった“発育の土台づくり”が期待できます。
また、乳歯列期〜混合歯列初期は骨格が柔らかく、筋機能の改善がそのまま顎の正しい成長につながりやすい時期です。この段階から無理のない方法で習癖改善に取り組むことで、将来的なフェイスマスク矯正の効果を高められるだけでなく、そもそも骨格性の受け口が進行しにくい環境をつくることができます。
プレオルソで改善が期待できるケース
プレオルソは、受け口治療のすべてに万能というわけではありませんが、適応するケースでは大きな改善が期待できる装置です。特に、骨格そのもののズレが大きいわけではなく、筋機能や口腔習癖が原因として影響している場合に有効です。
まず、軽度〜中等度の受け口のお子さまに向いています。上顎の成長不足が強くなく、噛み合わせを誘導するだけで改善が見込める場合、プレオルソを継続的に使用することで前歯の当たり方が徐々に整い、自然な噛み合わせに近づけることができます。
次に、舌癖や口呼吸があるケースではプレオルソが非常に効果的です。
たとえば、
- 舌が下に落ちてしまい上顎を押し上げる力が弱い
- 口が半開きで唇を閉じる力が弱い
- 鼻呼吸がしにくく、常に口呼吸になっている
こうした機能的な問題は、放置していると上顎の成長が抑えられたり、下顎が前に出る癖を助長するため、将来的に骨格性の受け口へ進行しやすくなります。プレオルソはこれらの習癖を改善する働きがあるため、「受け口の悪化を防ぐ」「顎の正しい成長を促す」ために重要な役割を果たします。
さらに、幼児〜低学年でまだ歯列が柔軟な時期には、プレオルソで筋機能を整えるだけで噛み合わせが自然に改善するケースもあります。この段階で適切に介入することで、成長期に本格的な骨格矯正が必要になるリスクを減らすことができ、親御さんの負担も軽減できます。
フェイスマスクとの使い分け
受け口と一言でいっても、原因が「骨格」なのか「筋機能」なのかによって、最適な治療法は大きく変わります。ここで重要になるのが、プレオルソとフェイスマスクの役割の違いを正しく理解し、年齢や症状に合わせて使い分けることです。
まず 骨格性の受け口が強い場合 や、精密検査で「上顎の成長不足」が明らかな場合は、フェイスマスク矯正が優先されます。フェイスマスクは上顎を前方へ導く“骨格に働きかける治療”であり、成長期の力を利用できる時期に行うことで、将来的な外科矯正のリスクを大きく減らせます。
一方で、軽度の受け口や機能的な要因が大きいケースでは、プレオルソが効果的に働きます。舌の位置や口呼吸、下顎を前に出す癖などが原因となっている場合は、筋機能を整えることで噛み合わせが自然に改善することもあり、骨格への大きなアプローチを行う前に、まず“発育の土台”を整える必要があります。
また、年齢によって適応が異なる点も大切です。幼児〜低学年では骨格が柔軟な反面、筋機能の影響を受けやすいためプレオルソとの相性が良く、成長期〜小学校中学年ではフェイスマスクに適したタイミングを迎えます。
それぞれの装置は「どちらか一方」ではなく、お子さまの状態に応じて段階的に選択されるのが理想です。
併用や治療ステップの考え方
受け口の治療では、「今どの成長段階にいるか」「原因が骨格か機能か」を見極めたうえで、プレオルソとフェイスマスクを段階的に使い分けることが効果的です。実際の臨床でも、以下のように“ステップを踏む治療”がよく選択されます。
① 低年齢期(3〜8歳頃):プレオルソで“発育の土台”を整える
乳歯列〜混合歯列初期のお子さまは、顎が柔らかく筋機能の影響を強く受けます。この時期にプレオルソを活用し、
- 舌の正しい位置づけ
- 鼻呼吸への誘導
- 唇を閉じる力のトレーニング
- 噛み込みの改善
といった習癖の改善を先に行うことで、顎の自然な成長を引き出す土台が整います。
② 成長期(8〜10歳):フェイスマスクで“骨格”を改善
筋機能が整い、成長が本格的に進み始めるタイミングで、上顎の成長不足が見られる場合はフェイスマスクを追加します。
プレオルソで習癖を整えておくことで、フェイスマスクの効果が出やすくなり、
- 上顎の前方成長をしっかり引き上げる
- 骨格性受け口の進行を防ぐ
といった結果につながりやすくなります。
フェイスマスク矯正のメリット・デメリット
フェイスマスク矯正は、成長期だからこそ可能な“骨格へのアプローチ”ができる反面、装着時間や年齢条件などに注意が必要な治療です。ここでは、判断材料として押さえておきたいメリットとデメリットを整理し、ご家庭での検討に役立つようまとめます。
まず大きなメリットとして挙げられるのは、上顎の成長を引き出して骨格から受け口を改善できる点です。歯の角度を動かす一般的な矯正だけでは得られない、前後的な骨格バランスの改善が期待でき、将来的に外科矯正(顎の手術)を避けられる可能性を高めます。また、前歯で食べ物を噛み切りやすくなるなど、噛む機能の向上や横顔の改善もメリットとして実感されやすいところです。
一方で、デメリット・限界も存在します。もっとも大きいのは、装着時間に左右される治療であることです。1日8〜10時間の使用が基本となるため、お子さま本人の頑張りとご家族のサポートが欠かせません。また、成長期を過ぎると骨が反応しにくくなり、フェイスマスク単独では十分な改善が期待できない場合があります。骨格のズレが大きいケースや治療開始が遅れたケースでは、フェイスマスクよりも他の矯正方法や外科的治療を検討することがあります。
このように、フェイスマスク矯正は“適切な年齢で、適切な期間、しっかり使用できるかどうか”が成功の鍵となる治療です。次の項目では、どのようなケースにフェイスマスク矯正が向いているのか、判断の目安を詳しく解説します。
メリット
フェイスマスク矯正の最大のメリットは、成長期の「骨の反応しやすさ」を活かして、受け口の根本原因である骨格のズレを早期に改善できる点です。歯だけではなく顎の位置そのものへ働きかけるため、一般的な矯正治療では得られない効果が期待できます。
まず大きいのは、上顎の成長を前方に導けることです。これにより、上下顎の前後バランスが整い、前歯の噛み合わせが大きく改善されます。「前歯で噛み切りづらい」「発音しにくい」といった受け口特有の不便が軽減し、咀嚼・発音・口元の見た目といった日常的な機能が向上します。
次に、骨格改善により 横顔(顔貌)のバランスが整うことも大きなメリットです。受け口のお子さまに見られやすい、下顎が前に強調される輪郭が緩和され、自然で調和の取れた顔つきへ近づきます。これは成長期にしか得られない、フェイスマスク矯正ならではの効果です。
さらに、早期に骨格のズレを補正しておくことで、将来的な外科的矯正(顎の手術)を避けられる可能性が高まる点も重要です。骨格性の受け口は進行するほど治療の難易度が上がるため、成長期に正しい方向へ誘導しておけば、大人になってから複雑な治療を行う必要が減らせます。
このようにフェイスマスク矯正は、「機能・見た目・将来の負担」の3つを同時に改善できる、早期治療の大きなメリットを備えています。
デメリット・限界
フェイスマスク矯正は成長期の骨格に大きな効果を発揮する一方で、治療の特性上いくつかのデメリットや限界も存在します。治療を前向きに進めるためには、メリットと同じくらい、これらのポイントを事前に理解しておくことが大切です。
まず最も大きなデメリットは、装着時間の確保が必須であることです。1日8〜10時間の使用が必要となるため、お子さま自身の協力度や、ご家族のサポートが治療結果に直結します。とくに就寝中の使用を前提とはいえ、日々の生活リズムに組み込む必要があり、最初は“頑張りが必要な治療”であることは否めません。
また、見た目や違和感が気になりやすい点もデメリットといえます。フェイスマスクは顔の外側につける装置のため、外出時に使用しないのが通常ですが、初めの頃は頬の圧迫感や引っ張られる感覚に慣れるまで時間がかかることがあります。ただし多くのお子さまは数日〜数週間で慣れ、就寝時中心の使用で問題なく続けられるようになります。
さらに重要なのが、適応年齢に限りがあることです。骨格が柔らかく上顎が成長しやすい成長期(10歳)を過ぎると、牽引の反応が弱くなり、フェイスマスク単独では十分な改善が得られにくくなります。治療開始が遅れると、ワイヤー矯正の併用や、場合によっては外科的矯正が必要になる可能性もあります。
このように、フェイスマスク矯正には「努力が必要」「年齢が限られる」という特性がありますが、適切なタイミングで始められれば、骨格改善という大きなメリットを得られる治療です。
こんな場合にフェイスマスク矯正が適している
フェイスマスク矯正は、誰にでも適応できる治療ではありません。特に「成長期に上顎の成長を前方へ導く必要があるかどうか」が重要な判断基準になります。ここでは、フェイスマスク矯正が効果を発揮しやすいケースをわかりやすく整理し、受診のタイミングを判断するための指標をお伝えします。
まず最も適しているのは、上顎の成長不足が明らかで、骨格性の受け口が中等度以上のケースです。このタイプでは、歯の角度だけを整えても根本的な改善が難しく、骨格に直接アプローチできるフェイスマスクが大きな効果を発揮します。
次に、成長ピーク前〜成長期に治療開始できることが重要なポイントです。上顎は成長の初期に反応しやすく、適切な時期を逃すと牽引力に対する骨の反応が弱くなります。タイミングを捉えられたかどうかが、治療結果を左右します。
さらに、フェイスマスク矯正は ご家族のサポートが治療成功の鍵となります。装着時間の管理や習慣化が必要な治療のため、自宅での見守りや励ましが欠かせません。「協力して治療を進めていける環境にあるか」も大切な判断材料となります。
これらを踏まえたうえで、次の項目では具体的な3つの目安に沿って、フェイスマスク矯正が適しているケースをさらに詳しく解説していきます。
上顎の成長不足が明らか・受け口が中等度以上
フェイスマスク矯正がもっとも大きな力を発揮するのは、骨格的に上顎の成長が不足しているタイプの受け口です。精密検査で上顎が標準より後方に位置している場合や、横顔のバランスから明らかな上顎後退が確認される場合は、フェイスマスクによる前方牽引が有効となります。
中等度以上の受け口では、単に歯の角度を調整するだけでは改善が難しく、放置すると下顎の成長がさらに進んで骨格のズレが大きくなることがあります。こうしたケースで成長期にフェイスマスクを行うと、上顎の成長方向を適切に促し、上下顎の前後関係を根本から整えることができます。
当院でも、セファロ分析により上顎骨の位置や成長方向を詳細に評価し、必要性が高いお子さまに早期治療をご提案しています。成長期のうちにアプローチすることで、将来的な外科矯正の回避にもつながりやすく、お子さまの負担を最小限に抑えることが可能です。
成長ピーク前〜成長期に治療開始できる
フェイスマスク矯正が効果を最大限に発揮するためには、「いつ始めるか」 が非常に重要です。特に受け口は、成長とともに下顎の前方成長が強まりやすいため、成長ピークの前に上顎の成長を確実に促しておくことが治療成功の鍵になります。
一般的に上顎は 8〜10歳頃に大きく成長し、このタイミングは外からの牽引に反応しやすい“ゴールデンタイム”ともいえます。この時期にフェイスマスクを開始すると、上顎が前方へ移動しやすく、骨格的な改善が効率良く進みます。一方、成長が止まりつつある中学生後半〜成人では、骨が硬くなり反応が乏しくなるため、フェイスマスク単独での大きな改善は難しくなります。
また、早期に治療を始めることで、“下顎の成長が強くなる前に上顎の成長を追いつかせる”ことができ、受け口の悪化を未然に防ぐという意味でも大きなメリットがあります。当院では、セファロ分析を用いて成長段階を見極め、最適なタイミングを逃さないよう治療計画を立てています。
このように、成長期のタイミングを捉えて治療を開始できるかどうかが、フェイスマスク矯正の成果を左右します。
家族が装着時間管理をサポートできる
フェイスマスク矯正は、「どれだけ毎日しっかり使えるか」 が治療成果に直結する治療です。そのため、装置の装着時間(1日8〜10時間)を安定して確保できるかどうかは非常に重要なポイントになります。そして、ここではお子さま本人だけでなく、ご家族のサポートが不可欠です。
とくに初めのうちは、装着に慣れなかったり、ゴムの交換を忘れてしまったり、遊びや学校の予定で使用時間が乱れやすかったりすることがあります。そんなとき、「今日は少し短かったから寝る前にもう少し頑張ろうね」といった声かけや、装着時間を一緒にチェックしてあげることで、治療の継続が格段にスムーズになります。
また、フェイスマスクは主に自宅・就寝時に使用する装置のため、家庭でのリズムに合わせた使い方の工夫も大切です。当院では、親御さんも管理しやすいよう、
- 装着時間の記録方法
- 使用のコツ
- ゴム交換のタイミング
などを丁寧に説明しています。
こうした家庭での協力体制がしっかり整うことで、フェイスマスク矯正はより確実に、より短期間で効果を発揮します。
よくある質問(FAQ)
受け口の治療、とくにフェイスマスク矯正については、初めて耳にする内容も多く、親御さんから多くの質問をいただきます。ここでは、治療を検討する際に特に多い疑問を取り上げ、事前に知っておきたいポイントをまとめました。治療前の不安を少しでも解消し、お子さまにとって最適な選択ができるように、分かりやすくお答えしていきます。
次の見出しでは、実際に寄せられる質問のうち、まず「大人でもフェイスマスク矯正ができるのか?」について詳しく解説します。
大人でもフェイスマスク矯正できる?
結論からお伝えすると、成人ではフェイスマスク矯正は行いません。フェイスマスクは、骨がまだ柔らかく成長の勢いがあるお子さまだからこそ反応が得られる治療であり、上顎が前方へ成長しやすい“成長期の力”を利用して骨格を改善する仕組みになっています。
大人の場合、すでに骨格の成長が完了しているため、牽引力をかけても骨が動きにくく、十分な前方成長を引き出すことはできません。そのため、成人の反対咬合治療では、**ワイヤー矯正やマウスピース矯正、場合によっては外科矯正(顎の手術)**を併用するのが一般的です。
当院でも、成人の受け口治療は精密検査で骨格のズレを評価したうえで、最適な治療方法をご提案しています。
成長期のような骨格へのアプローチが難しい分、大人の場合は「歯列を精密に整える」方向での治療が中心となります。まずは相談いただき、現在の噛み合わせに対してどの治療法が最適かを知ることが大切です。
痛みはある?
フェイスマスク矯正の痛みについて、親御さんから最も多く寄せられるのが「痛がらないでしょうか?」「続けられるか心配です」という不安です。結論としては、強い痛みを伴う治療ではありませんが、初期に軽い違和感を感じることが多いと言えます。
フェイスマスクは、上顎に取り付けた口腔内装置と顔の外側に装着するマスク本体をゴムで連結し、上顎を前方へ引っ張る仕組みです。そのため、装着開始直後やゴムを交換した直後には、ほほの圧迫感や引っ張られる感じなど、軽い違和感が生じることがあります。しかし、この感覚は数日以内に慣れるお子さまがほとんどです。
当院でも、装置による痛みが最小限になるよう調整し、急な痛みが生じた場合にもすぐ対応できるようサポート体制を整えています。 また、装置の装着時間を主に「就寝時」にするため、生活への負担を最小限に抑えて治療を継続できる点も安心材料です。
痛みが大きく続く治療ではありませんが、違和感を乗り越えるためにはご家族の励ましとサポートが大切です。
学校や外出時はどうする?
フェイスマスク矯正は、基本的に自宅で使用する治療です。そのため、学校や外出時に装置をつけたまま過ごす必要はありません。装置の見た目が気になる、友達に聞かれないか心配といった不安を抱くお子さまでも、安心して続けられる点が大きなメリットです。
装着のメインとなるのは 就寝時。これに加え、帰宅後の時間に使用することで、1日8〜10時間という推奨装着時間を無理なく確保できます。外出先で装着しないため、学校生活や習い事に干渉することはほとんどありません。
さらに、当院では装置の扱いや生活の工夫について、親御さんにも分かりやすく説明し、家庭で継続しやすいようサポートしています。 そのため、「学校ではどうしたらいいのか」という心配は多くの場合、初回の指導で解消できます。
学校や外出時には普段どおりで問題なく、日常生活との両立がしやすい治療です。
まとめ:成長期を味方につけた受け口治療で、将来の負担を軽減する
受け口(反対咬合)は、見た目だけでなく咀嚼・発音・顔貌のバランスにも影響するため、早期発見・早期治療がとても重要です。とくに、骨格性の受け口では成長とともに症状が進行しやすく、思春期以降は治療法が限られてくることもあります。
本記事で紹介した フェイスマスク矯正 は、成長期の“上顎が最も反応しやすい時期”に行うことで、骨格から受け口を改善できる治療です。適切な年齢で始めることで、将来的な外科矯正(顎の手術)を回避できる可能性も高まり、噛み合わせや顔貌バランスの改善にも繋がります。
一方、より低年齢のお子さまには プレオルソ(筋機能矯正) が有効です。舌の癖・口呼吸・唇の閉じる力など、お口周りの筋機能を整えることで発育の土台をつくり、成長期の骨格治療へスムーズにつなげることができます。
「プレオルソで習癖改善 → 成長期にフェイスマスクで骨格改善」という段階的な治療は、多くのお子さまに適した非常に理想的な流れです。
当院では、3Dスキャナー・セファロ分析を用いた精密検査により、お子さま一人ひとりの骨格・成長段階・口腔機能を正確に評価し、最適な治療開始時期をご提案しています。また、親御さんが安心してサポートできるよう、丁寧な説明と相談しやすい体制を整えています。
「うちの子は治療が必要?」「今がベストタイミング?」と迷われたら、まずは一度ご相談ください。
無料の初診相談では、お口の状態や成長の見極めを丁寧に行い、最適な治療プランをご案内いたします。
受け口のお悩み、どうぞお気軽にご相談ください。
この記事の監修者情報
吉田 尚起
日本矯正歯科学会認定医
院長である吉田なおきは、国立大阪大学歯学部、および同大学院にて矯正治療を専門に学び、博士号を取得。大学病院にて7年間にわたり研鑽を積み、300症例以上の矯正治療に携わってきました。
自身も歯並びのコンプレックスを克服した経験から、見た目の美しさだけでなく、噛み合わせや心身の健康を考えた治療を心がけています。
歯科医師全体の約3%しか取得していない日本矯正歯科学会認定医として、お子様から大人の方まで、未来の笑顔をサポートします。
