2025.10.21 コラム

歯を抜かずに矯正できる!?非抜歯矯正の仕組みと限界を詳しく解説

「歯を抜かずに矯正できるなら…」と考えたことがある方は多いのではないでしょうか。健康な歯を残したまま歯並びを整えられる「非抜歯矯正」は、近年とても人気のある治療方針です。ですが、実際にその希望を叶えるためには、“見えない土台”である 骨(骨幅・顎のスペース) がどのくらいあるかを正確に把握することが欠かせません。

この記事では、

  • 非抜歯矯正の基本的な仕組み
  • 抜歯矯正との違い
  • 非抜歯が可能なケースとその限界
  • 骨幅の評価や歯科矯正用アンカースクリュー(矯正治療に使う小さなネジ)を用いた当院の取り組み

といった内容を、詳しく解説します。
まずは、ご自身の歯並びと骨の関係を知ることから始めましょう。

非抜歯矯正とは何か

非抜歯矯正とは、健康な永久歯を抜かずに歯並びを整える矯正治療のことを指します。
本来、歯をきれいに並べるためには「歯を動かすためのスペース」が必要です。ひどいガタガタの改善には従来はこのスペースを確保するために、小臼歯(4番目か5番目の歯)を抜く「抜歯矯正」が一般的でした。

しかし、最近では 「できるだけ歯を抜かずに整えたい」 という患者さんの希望や、技術の進歩によって、歯を抜かない選択肢も増えています。非抜歯矯正では、歯列を少し拡げたり、歯の傾きを調整したり、奥歯を後方へ動かすことで、抜歯せずに歯を並べることを目指します。

ただし、非抜歯が可能かどうかは、顎の骨の幅・歯の大きさ・口元のバランス など、個々の条件によって大きく異なります。無理な非抜歯は歯茎の退縮や噛み合わせの不調を招くこともあるため、慎重な診断が必要です。

ここからは、非抜歯矯正の基本をさらに理解するために、まず「抜歯矯正との違い」から見ていきましょう。

抜歯矯正との違い

従来の矯正治療では、歯並びに十分なスペースがない場合、上下の小臼歯(通常4本)を抜く「抜歯矯正」が一般的でした。
抜歯によって歯を動かす余地を確保し、歯列を整える方法です。特に出っ歯や叢生(歯の重なり)が強いケースでは、抜歯によるスペース確保が有効に働きます。

一方、非抜歯矯正 は、健康な歯を残したまま歯並びを整える方針です。歯を抜かずに整えるためには、歯列をわずかに横方向に拡大したり、歯の角度を調整したり、奥歯を後ろに動かしてスペースを作るなどの工夫が行われます。

つまり、

  • 抜歯矯正 → 「歯を抜いてスペースを作る」
  • 非抜歯矯正 → 「歯を動かす・広げることでスペースを作る」

という違いがあります。

ただし、非抜歯矯正は「すべてのケースで抜かずに済む」というわけではありません。
顎の骨幅や歯の大きさが不十分な状態で無理に非抜歯を行うと、歯が骨の外に出てしまい、歯茎の退縮・噛み合わせ不良・後戻り のリスクが高まります。

そのため、どちらの方法が適しているかは、CTなどによる精密診断を通して判断することが重要です。

非抜歯矯正を目指す理由

近年、矯正相談で最も多く聞かれる言葉のひとつが「できれば歯を抜かずに治したい」です。
この“非抜歯志向”の背景には、健康な歯をできるだけ残したい という自然な思いや、見た目・機能の両面での意識の高まりがあります。

現在ではCTを利用した診断や3Dスキャナーによる分析が進み、歯や骨の状態を詳細に正確に把握できるようになりました。その結果、従来なら抜歯が必要とされたケースでも、骨の幅や歯の角度を調整することで、非抜歯で整える ことが可能な症例が増えています。

また、非抜歯矯正には「ほうれい線が目立たない」「口元が引っ込みすぎない」といった審美的なメリットもあり、特に女性を中心に希望される方が多い傾向です。

しかし一方で、「抜かないこと」自体が目的になってしまうと、かえって噛み合わせや骨への負担が増すこともあります。矯正治療のゴールは“抜かないこと”ではなく、美しさと機能を両立した歯並びを長く維持すること。そのためには、非抜歯・抜歯のどちらを選ぶにしても、骨の状態を踏まえた正確な診断が不可欠です。

次では、実際にどのような考え方で「非抜歯矯正」に取り組んでいるのか、当院の方針をご紹介します。

当院が考える非抜歯矯正のポリシー

当院では「非抜歯矯正」を、単に“歯を抜かない治療”と捉えてはいません。
私たちが重視しているのは、「歯を抜かずに、長期的に安定した噛み合わせを実現できるかどうか」 という視点です。

そのために、まず行うのが CTによる三次元的な骨幅の診断 です。
歯が正しく動けるだけの骨の厚みがあるか、歯根が骨の外に出てしまうリスクはないかを、画像で精密に確認します。
これにより「抜かずに安全に動かせる範囲」が明確になり、治療の限界を科学的に判断することが可能になります。

さらに、矯正用アンカースクリュー(矯正治療に使う小さなネジ) を活用して、奥歯を後方へ移動させる「遠心移動」も行っています。
これにより、歯を抜かずとも前歯を引き込むスペースを確保でき、成人の方でも自然でバランスの取れた口元を目指すことができます。

また、治療後の「後戻り」を防ぐため、保定装置(リテーナー)の設計とメインテナンス にも力を入れています。歯並びは整った瞬間がゴールではなく、その後の安定こそが本当の成功だと考えています。

このように当院では、骨・歯・噛み合わせのバランスを総合的に診断し、
「抜かずに整えられる限界を見極めたうえで、安全で美しい非抜歯矯正」をご提案しています。

非抜歯矯正が可能なケースの特徴

すべての歯並びが「抜かずに治せる」わけではありません。
非抜歯矯正が適しているかどうかは、骨のスペース・歯の大きさ・口元のバランス など、複数の条件によって決まります。

一般的に、非抜歯で矯正できるのは「歯を動かすための余地が骨の中にあるケース」です。
たとえば、顎の骨に十分な幅があり、歯が大きくねじれていない・重なりが軽度であるなどの場合は、歯列を拡げたり奥歯を後方移動させることで、美しく整えることが可能です。

一方で、骨幅が狭い・歯が大きい・口元が大きく突出しているといったケースでは、無理な非抜歯矯正を行うと歯根が骨の外に出たり、歯茎が下がったりするリスクがあります。
そのため、非抜歯矯正を希望する場合はまず CTやセファロ分析 により、骨と歯の関係をしっかり評価することが欠かせません。

ここでは、非抜歯矯正が可能と判断されやすい3つのポイントを紹介します。

顎骨(あごの骨)のスペースがあるか

非抜歯矯正を行ううえで、最も重要な判断材料が 「骨の中に十分なスペースがあるか」 です。
歯は歯槽骨(しそうこつ)という骨の中に支えられています。この骨が十分に幅が広ければ、歯を並べ替える余地がありますが、骨が薄い場合は歯を動かせる範囲が限られます。

たとえば、CTで確認したときに「下の前歯の根っこがすでに骨の外側ぎりぎりに位置している」ようなケースでは、無理に非抜歯で並べると、歯根が骨から飛び出してしまう危険性があります。
その結果、歯肉退縮(歯ぐきが下がる) や 歯の動揺(ぐらつき)、さらには 歯周病の進行 を招くこともあります。

逆に、顎骨にしっかりとした厚みがあり、歯の根の周囲に余裕がある場合は、非抜歯でも安定して歯を動かせる可能性が高まります。
特に成人矯正では、成長による骨幅の拡大が期待できないため、治療前に 骨の厚み・形・密度 を三次元的に把握することが必須です。

当院では、治療前に CT撮影による骨幅の測定 を行い、「安全に非抜歯で進められるか」を科学的に判断しています。
この診断をもとに、患者さんそれぞれに最適な治療方針をご提案します。

歯の大きさ・傾斜・ガタガタの程度

非抜歯矯正が可能かどうかを左右するもうひとつの要素が、歯のサイズと歯列の重なり具合(叢生:そうせい) です。

歯1本1本の横幅が大きい、あるいは前歯のねじれや傾斜が強い場合は、歯を並べるためのスペースが大きく不足します。
このようなケースでは、非抜歯で対応しようとすると、歯を外側へ無理に倒すように動かす必要があり、結果として歯ぐきの退縮や口元の突出が起こるリスクがあります。

一方で、歯の重なりが軽度〜中程度で、歯列全体のアーチ(U字型)が比較的整っている場合には、歯を抜かずにスペースを確保できる可能性が高まります。
たとえば、軽度、中程度の叢生(重なり1〜5mm程度)であれば、

  • 歯列の拡大(アーチの幅をわずかに広げる)
  • 歯の間を少し削るIPR(歯の1本あたり0.3〜0.5mmのエナメル質削除)
  • 奥歯を矯正用アンカースクリューで後方移動させる

といった方法の組み合わせで、抜歯せずに理想的な歯並びを目指すことができます。

このように、非抜歯矯正を希望される場合には、まず「歯の大きさと重なりの程度」を正確に測定することが重要です。
当院では、歯列模型や3Dスキャナーによる歯列分析を行い、非抜歯で可能なスペース確保量をミリ単位で評価しています。

口元・横顔のバランスに過度な突出がない

非抜歯矯正が適しているかを判断する際には、歯並びだけでなく 口元(Eライン)や横顔のバランス も大切な指標になります。

たとえば、もともと「出っ歯(上顎前突)」や「口ゴボ(上下の前歯と唇が前に出ている状態)」が強い方の場合、歯を抜かずに歯列を整えると、前歯の位置がさらに前方へ移動してしまうことがあります。
その結果、口元の突出感が増してしまう ことがあり、「歯並びは整ったけれど横顔の印象が変わらなかった(むしろ強調された)」というケースも見られます。

一方、もともと口元のバランスが良く、横顔が自然なラインを描いている方は、非抜歯矯正でも審美的な調和を保ちやすい傾向があります。
この場合、歯を抜かずにわずかな拡大や歯列調整で十分な改善が期待できます。

成人矯正では、歯の移動量に限界があるため、「骨格的にどの位置が美しいラインなのか」を正確に把握することが大切です。
当院では、セファロ分析(頭部X線規格写真) をもとに、唇の位置・鼻や顎とのバランス・Eラインとの関係を詳細に評価し、「抜かない方が良いか」「抜いた方が口元が自然に見えるか」を科学的に判断しています。

見た目の美しさと機能性を両立させることが、当院の非抜歯矯正の基本方針です。

非抜歯矯正の“限界”とリスク

非抜歯矯正は「健康な歯を抜かずに整えられる」という大きな魅力がありますが、同時に明確な限界とリスクも存在します。
それを理解せずに「抜かずに並べたい」という希望だけで治療を進めると、結果的に歯ぐきや骨に負担をかけ、見た目にも不自然な仕上がりになってしまうことがあります。

特に成人矯正では、成長による顎骨の拡大が期待できないため、歯を動かせる範囲=骨の中にあるスペースによって治療の限界が決まります。
無理な拡大や歯の傾斜移動は、骨からの逸脱(歯根が骨の外に出る)や歯肉退縮を引き起こし、長期的な歯の安定性を損なうことにつながります。

また、非抜歯矯正はスペースが限られるため、出っ歯や重度の叢生 の改善効果には制約があり、希望通りに口元を引き込めないケースもあります。
「抜かない」ことを優先するあまり、顔全体のバランスや噛み合わせの安定を犠牲にしてしまっては本末転倒です。

ここでは、非抜歯矯正で注意すべき3つの代表的なリスクと、その原因について詳しく見ていきましょう。

骨の幅が不足している場合のリスク

非抜歯矯正で最も注意すべきなのが、骨の量(骨幅・形・密度) が不足している場合のリスクです。
歯は歯槽骨という骨の中に包まれていますが、この骨が薄かったり狭かったりすると、歯を動かせる「安全な範囲」が非常に限られます。

たとえば、前歯を並べるために外側(唇側)へ動かした際、骨の外へ歯根が出てしまうと、歯肉退縮(歯ぐきが下がる) や 歯根露出 を引き起こすことがあります。
一見すると歯並びは整っていても、歯の支えが失われてしまうため、長期的には歯周病や歯の動揺につながることもあるのです。

また、骨の形態や厚みが左右で異なる場合には、歯の移動方向によってリスクが変わるため、個別に骨の3D評価を行う必要があります。
特に成人では、成長による骨再生が期待できないため、矯正前の「骨量の確認」が非常に重要です。
この診断によって、「安全に非抜歯で治療可能か」「抜歯を併用すべきか」を見極め、リスクの少ない治療計画 を立てています。

無理な非抜歯矯正は短期的には整って見えても、10年後・20年後の安定を損なう可能性があります。
だからこそ、骨の状態を見極めた“科学的な非抜歯矯正”が欠かせないのです。

無理な拡大・傾斜での設計がもたらすリスク

非抜歯矯正を行う際に、スペースを確保するための代表的な方法のひとつが「歯列の拡大」や「歯の傾斜移動」です。
しかし、骨の許容量を超えた拡大や傾斜は、短期的には整って見えても、長期的にはさまざまなトラブルを引き起こす可能性があります。

たとえば、歯列を横に大きく広げすぎると、歯が骨の外側に出てしまい、歯ぐきが下がる(歯肉退縮)歯の根が露出する歯周病リスクが高まる といった問題が起こることがあります。
また、歯を無理に傾けてスペースを作ると、噛み合わせが不安定になり、前歯で正しく噛めなくなったり、顎関節(TMJ)に負担がかかるケースもあります。

見た目の面でも、過度な拡大は口元が前に出て「口ゴボ」のような印象になることがあり、せっかく歯並びが整っても顔全体のバランスが崩れてしまうことがあります。

矯正治療において最も大切なのは、歯並び・骨・口元の調和を保ちながら整えること
そのため、非抜歯矯正では「どこまで広げられるか」「どの角度まで傾けられるか」を、CTやセファロ分析を通じて事前に精密に設計する必要があります。

当院では、治療後10年先を見据えた歯列設計を行い、無理な拡大や傾斜を避けた長期安定型の非抜歯矯正を徹底しています。

非抜歯矯正でスペースを作る方法

歯を抜かずに歯並びを整えるためには、「どのようにスペースを確保するか」 が鍵となります。
非抜歯矯正では、歯列全体のバランスを保ちながら、少しずつ隙間を生み出すためのさまざまなアプローチが存在します。

代表的な方法には以下の3つがあります。

  1. 歯列の幅をわずかに拡げる「アーチ拡大」
  2. 歯と歯の間を少し削る「IPR(インタープロキシマル・リダクション)」
  3. 奥歯を後ろへ移動させる「遠心移動(矯正用アンカースクリュー併用)」

これらの方法は単独で行う場合もありますが、多くは患者さんの骨や歯の状態に合わせて組み合わせて使うことで、無理のないスペース確保を実現します。

ただし、どの手法にも限界があり、過度に行うと歯ぐきや骨に負担をかけてしまう恐れがあります。
そのため、各手法の特徴と注意点を理解したうえで、最適な組み合わせを見極めることが大切です。

ここでは、それぞれのスペース確保法について詳しく見ていきましょう。

歯列の幅の拡大

「アーチ拡大」とは、歯列のU字型の弧を少し広げて、歯を並べるためのスペースを作る方法です。
もともと歯並びが内側に狭く、歯が重なっているようなケースでは、この方法で数ミリ程度の余裕を生み出すことができます。

特に子どもや成長期の患者さんでは、上顎の骨がまだ柔らかく成長が続いているため、装置を使って顎そのものを広げる「拡大装置」なども有効です。
しかし、成人の場合はすでに骨の成長が終わっているため、骨ごと広げることは難しく、**歯の傾斜移動による“見かけ上の拡大”**が中心となります。

その際に注意が必要なのが、骨の範囲を超えた拡大をしないことです。
無理に横方向に広げすぎると、歯根が骨の外側へ飛び出してしまい、歯肉退縮や歯の揺れといったトラブルを招くリスクがあります。

当院では、CTで骨の厚みを測定し、「安全に拡大できる範囲」をミリ単位で確認したうえで、アーチ拡大量を慎重に設定します。
また、マウスピース型矯正でも、歯列の拡大量をコントロールし、無理のないスペース確保を実現しています。

このように、アーチ拡大は非抜歯矯正の基本的な方法のひとつですが、骨の形と厚みを考慮した設計が成功の鍵になります。

歯を少し削る:IPR

「IPR(インタープロキシマル・リダクション)」とは、歯と歯の間のエナメル質(表面の硬い層)を わずかに削ることでスペースを確保する方法 です。
1本あたり約0.3〜0.5mm程度、数本分で合計3〜5mmほどの隙間をつくることができるため、抜歯を避けつつ歯並びを整える際に非常に有効 です。

IPRのメリットは、歯を抜かずにスペースを作れるだけでなく、歯列全体のバランスを自然に整えられる点にあります。
たとえば、軽度の叢生(歯の重なり)や前歯のわずかなねじれなどは、IPRだけで十分に改善できる場合もあります。
また、マウスピース型矯正でも、歯の移動スペースを確保する目的で頻繁に用いられています。

一方で、削りすぎるとエナメル質が薄くなり、知覚過敏や虫歯リスク が高まる恐れがあるため、経験豊富な矯正医による精密な操作が必要です。
当院では、IPRの厚みを0.1mm単位で管理し、必要最小限の処置 にとどめています。さらに、研磨を行い、虫歯や摩耗を防ぐケアを徹底しています。

このようにIPRは、非抜歯矯正において非常に効果的な「ミリ単位の微調整技術」です。
歯の健康を守りながら美しい歯列を作るために、科学的根拠に基づいた計画的な削合が不可欠です。

奥歯の後方移動

非抜歯矯正で確保できるスペースを最大限に広げる方法のひとつが、奥歯の遠心移動(後方移動) です。
この際に活躍するのが、矯正用アンカースクリュー(矯正治療に使う小さなネジ) と呼ばれる小さなチタン製の固定装置です。

矯正用アンカースクリューを使った遠心移動

矯正用アンカースクリュー、歯ぐきの骨に小さく固定し、矯正力をかける「支点」として利用します。
これにより、奥歯を効率的に後ろへ動かし、前歯を引き込むためのスペースを作ることが可能になります。

従来の矯正では、ゴムやワイヤーで奥歯を後方へ引こうとすると、前歯も一緒に動いてしまう“引っ張り合い”が起こりやすいという欠点がありました。
しかしマイクロインプラントを使うことで、固定源を骨に直接取るため、前歯を動かさずに奥歯だけを確実に移動 させることができます。

成人でも適用でき、非抜歯矯正におけるスペース確保法として非常に有効です。
また、2mm前後の遠心移動であれば、骨の許容量の範囲内で安全に行えることが多く、自然な口元の引き込みにもつながります。

親知らず(第三大臼歯)との関係と抜歯の検討

ただし、奥歯のさらに奥に「親知らず(第三大臼歯)」がある場合、奥歯を後方に動かすスペースが物理的に足りなくなることがあります。
そのため、遠心移動を計画する際には、親知らずの位置と向き を事前にCTで確認することが重要です。

親知らずが斜めに生えている、または奥歯に接触している場合には、親知らずの抜歯を行ってから遠心移動を行う ケースもあります。
これにより、より大きなスペースを確保でき、安全かつ確実に非抜歯矯正を進めることができます。

当院では、矯正用アンカースクリューと親知らずの状態を総合的に評価し、抜歯を回避しながらも骨の安全域を超えない治療設計 を行っています。

非抜歯矯正のメリット・デメリット

非抜歯矯正は、「健康な歯を抜かずに歯並びを整えたい」という希望を叶える選択肢として、多くの方に注目されています。
しかし、どんな治療法にも**良い面(メリット)と注意すべき面(デメリット)**があり、それらを理解したうえで選択することが大切です。

非抜歯矯正は、身体的・心理的な負担が少なく、口元の自然なラインを保ちやすいという魅力があります。
一方で、歯を抜かない分、スペース確保の限界があり、症例によっては理想的な仕上がりが難しいケースも存在します。

ここでは、非抜歯矯正のメリットとデメリットを整理しながら、どんな方に向いている治療法なのかをわかりやすく解説します。

メリット(健康な歯を残す)

非抜歯矯正の最大のメリットは、何といっても 「健康な歯を残せる」 という点です。
矯正のために機能している歯を抜かずに済むことで、将来的にも噛む力をバランスよく維持でき、歯列全体の寿命を延ばすことにつながります。

また、抜歯を伴わない分、身体的・心理的な負担が少ない ことも大きな魅力です。
抜歯後の腫れや痛みがなく、通院当日のストレスも軽減されます。さらに、抜歯費用がかからないため、トータルの治療費を少し抑えられるケースもあります。

審美面でも、非抜歯矯正は 口元の自然なボリュームを保てる という利点があります。
抜歯矯正では歯を後方に大きく引くため、口元が引っ込みすぎて「老けて見える」と感じる方もいますが、非抜歯では適度なふくらみが残り、横顔の印象がやわらかくなります。
特に、女性の患者さんにとっては「唇のハリが残る」「笑ったときの輪郭が自然」といった点が好まれる傾向です。

さらに、近年ではマウスピース型矯正の発展により、非抜歯で対応できる症例が増えています。
軽度〜中等度の叢生であれば、マウスピース矯正でも十分に美しい歯並びを実現可能です。

このように、非抜歯矯正は「できるだけ自分の歯を残しながら、自然な笑顔を保ちたい」という方に最適な選択肢といえます。

デメリット(リスク)

非抜歯矯正には多くのメリットがありますが、同時にいくつかの注意すべきデメリットや限界も存在します。
これらを正しく理解しておくことで、後悔のない治療選択につながります。

まず大きなデメリットは、スペース確保に限界があるという点です。
抜歯を行わない分、歯を動かせる範囲は骨の厚みや歯列の拡大量によって制限されます。
そのため、重度の叢生(歯の重なりが大きい)や、強い出っ歯・口元の突出感があるケースでは、非抜歯矯正では十分な改善が難しい場合があります。

また、無理に歯を外側へ傾けて並べようとすると、歯根が骨の外に出てしまう ことで歯ぐきが下がったり(歯肉退縮)、歯周病を悪化させたりするリスクもあります。
こうした「無理な非抜歯」は、短期的には整って見えても、数年後に後戻りや噛み合わせの崩れを起こすことが少なくありません。

さらに、非抜歯矯正では後戻りのリスクにも注意が必要です。
狭い骨の中に無理やり歯を収めると、矯正後に歯が元の位置へ戻ろうとする力が強く働きます。
そのため、治療後の保定(リテーナー) を適切に行い、歯並びを安定させることが不可欠です。

このように、非抜歯矯正には「骨の許容範囲」「歯の移動限界」「メンテナンスの重要性」といった要素が密接に関わります。
成功の鍵は、これらを見極めながら、“無理のない非抜歯”を選ぶ判断力 にあります。

適切な診断・治療計画の重要性

非抜歯矯正を成功させるための最大のポイントは、正確な診断と計画立案 にあります。
「抜かずに治せるかどうか」は見た目だけでは判断できず、骨・歯・噛み合わせ・顔貌 など、複数の要素を総合的に評価する必要があります。

そのため、非抜歯矯正を希望される方には、まず CT(3D画像)による骨幅の確認 が欠かせません。
歯を動かすためのスペースが骨の中に十分あるか、歯根が骨外へ逸脱するリスクがないかを詳細に分析します。
また、セファロ分析(頭部X線規格写真) により、顎の角度や前歯の傾斜、口元の突出度を測定し、横顔のバランスも客観的に評価します。

これらのデータをもとに、

  • 「非抜歯で安全に整えられるか」
  • 「抜歯を併用した方が仕上がりが美しく長期安定するか」
    を見極めるのが専門矯正医の役割です。

診断の質が治療結果を大きく左右するため、安易に「抜かずにできます」と断言する医院よりも、きちんと骨の状態を数値で説明してくれる医院 を選ぶことが重要です。

当院では、こうした精密診断に基づき、非抜歯・抜歯いずれの方針も含めて複数のプランをご提示しています。
そのうえで、患者さまのご希望と医学的な安全性の両立を図り、最も長期的に安定する矯正計画をご提案しています。

非抜歯矯正を成功へ導くカギは、“感覚ではなく科学的根拠に基づく診断”です。

当院の「非抜歯矯正」差別化ポイント

非抜歯矯正は、どの医院でも同じ結果が得られるわけではありません。
治療の成功には、骨の状態を見極める診断力安全に歯を動かす技術力、そして治療後の安定を見据えた設計力 が欠かせません。

当院では、成人の非抜歯矯正をより安全に、そして長期的に美しく保つために、以下の3つの軸で治療を行っています。

精密診断(CT・骨幅測定)に基づく治療計画

当院の非抜歯矯正の根幹となるのは、「骨の状態を可視化した精密診断」 です。
非抜歯で歯を並べる場合、見た目の歯列だけでなく、その奥にある 歯槽骨の厚み・形・角度・密度 を正確に把握することが欠かせません。

当院では、治療前に 歯科用CTスキャン を用いて、歯根がどの位置にあり、どの方向にどのくらい動かせるかを三次元的に分析します。
これにより、従来の二次元レントゲンでは見落としがちな「骨の限界ライン」や「歯根と骨の距離」を明確に把握できるため、無理のない安全な治療計画を立てることが可能になります。

また、CT分析に加えて、セファロ分析(頭部X線)や3Dスキャナーによる歯列模型解析も併用し、

  • 顎の骨格と歯の位置関係
  • 口元のバランス(Eライン)
  • 将来的な後戻りリスク

といった要素をすべて数値化します。

これらのデータを基に、非抜歯で安全に動かせる範囲を正確に見極め、
「骨に無理をかけずに美しい歯並びをつくる」ことを最優先に治療計画を立てています。

つまり当院では、感覚や経験だけに頼らず、“科学的根拠に基づく非抜歯矯正” を実現しているのです。

奥歯の後方移動・矯正用アンカースクリュー併用によるスペース確保

当院では、抜歯を避けながらも十分なスペースを確保するために、矯正用アンカースクリューを活用しています。
これは、歯ぐきの骨に小さなチタン製のスクリューを一時的に埋め込み、矯正の「固定源(アンカー)」として使用する技術です。

従来の矯正では、奥歯を後方に引こうとすると、前歯も一緒に動いてしまう“引っ張り合い”の力が働くため、歯の移動量に制限がありました。
しかし、矯正用アンカースクリューを支点に用いることで、奥歯だけを効率的かつ安全に後方へ移動させることができます。
これにより、抜歯をせずとも前歯を引き込むスペースを作り出すことが可能です。

特に成人矯正では、骨が硬く歯の移動量が限られるため、この「遠心移動(奥歯を後ろに動かす)」が非常に有効です。
また、親知らずがある場合には、その位置や角度をCTで確認し、必要に応じて親知らずの抜歯を併用することで、後方へのスペースを確保します。

矯正用アンカースクリューによる治療は、痛みが少なく、通常は局所麻酔で10分前後で完了します。
また、治療後はスクリューを簡単に除去でき、跡もほとんど残りません。

当院では、矯正用アンカースクリューを適切な位置に設置するため、CTガイド下での精密な埋入を行い、
骨の厚み・歯根の位置を避けながら、患者様一人ひとりに合わせた安全設計を徹底しています。

この技術により、「抜かずに整える」ための選択肢を大人の方にも提供できるようになりました。

よくある質問(Q&A)

非抜歯矯正は「歯を抜かずに治せる」という魅力から多くの方が関心を持たれますが、
一方で「自分の歯並びでもできるのか」「後戻りしないのか」など、さまざまな不安や疑問を抱く方も少なくありません。

ここでは、患者さんからよく寄せられる3つの質問にお答えします。
非抜歯矯正を検討するうえでの参考にしてください。

Q1.「歯を抜かない方がいいって聞きましたが、なぜ抜かない選択が難しいのですか?」

A.
確かに「歯はできるだけ抜かない方が良い」という考え方は理想的です。
しかし、歯を並べるための骨のスペースが足りない場合、無理に非抜歯で治療すると、歯根が骨の外に出てしまい、歯ぐきが下がったり歯がグラグラしたりするリスクがあります。

つまり、抜かないこと自体が“正しい”のではなく、安全に抜かずに整えられる状態かどうかを見極めることが大切です。
CTやセファロによる精密診断で骨の厚みや歯の傾斜を確認し、非抜歯でも問題がないかを判断するのが正しいアプローチです。

Q2.「口元が出てしまうのでは?」

A.
非抜歯矯正では、歯を抜かない分、前歯が少し前方に出やすくなる傾向があります。
特に元々「出っ歯」「口ゴボ」といった症状がある場合、口元の突出感が残ることがあります。

しかし、矯正用アンカースクリューによる奥歯の後方移動や、IPR(歯を少し削る)を併用することで、前歯を引き込みながら自然な口元ラインを整えることが可能です。
当院では、横顔のEライン(鼻先と顎先を結ぶライン)を分析し、審美的にもバランスの取れた仕上がりを目指しています。

Q3.「治療期間は抜歯より短いですか?」

A.
非抜歯矯正は、歯を抜かない分スタートが早く、初期段階の処置はスムーズに進むことが多いです。
抜歯矯正に比べて動かす距離が少ない場合は治療期間が短くなるケースもあります。

当院では、治療の効率を高めるために**デジタルシミュレーション(3D治療計画)**を導入し、治療期間をできる限り短縮する工夫をしています。

まとめ:非抜歯矯正を成功させるために大切なこと

「歯を抜かずに整えたい」という想いは、誰にとっても自然で大切な願いです。
しかし、非抜歯矯正を成功させるためには、骨の状態・歯列のバランス・口元の調和といった医学的な条件をきちんと満たすことが前提となります。

無理に抜かずに並べようとすると、短期的には歯並びが整って見えても、長期的には歯ぐきの退縮や噛み合わせの不調、さらには歯周病リスクを招くこともあります。
そのため、非抜歯矯正を選ぶ際は、「抜かないこと」よりも「抜かずに安全にできるか」を重視することが大切です。

当院では、

  • CTによる骨幅・骨量の精密診断
  • 矯正用アンカースクリューを用いた安全な遠心移動
  • 治療後の保定とメインテナンスによる長期安定化

といった一連のシステムで、成人の方にも安心して非抜歯矯正を受けていただける環境を整えています。

「自分の歯をできるだけ残したい」「抜かずに整える方法を知りたい」とお考えの方は、
まずは一度、無料相談 で現在の歯と骨の状態を確認してみましょう。

無理のない、そして長く安定する“あなたに合った矯正プラン”を一緒に見つけていきましょう。
お気軽にご相談ください。

この記事の監修者情報

吉田 尚起

日本矯正歯科学会認定医

院長である吉田なおきは、国立大阪大学歯学部、および同大学院にて矯正治療を専門に学び、博士号を取得。大学病院にて7年間にわたり研鑽を積み、300症例以上の矯正治療に携わってきました。

自身も歯並びのコンプレックスを克服した経験から、見た目の美しさだけでなく、噛み合わせや心身の健康を考えた治療を心がけています。

歯科医師全体の約3%しか取得していない日本矯正歯科学会認定医として、お子様から大人の方まで、未来の笑顔をサポートします。

〒560-0056 大阪府豊中市宮山町1丁目1−47

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休診日火曜・日曜・祝日

  • 最寄駅:大阪モノレール 柴原阪大前駅
  • 阪急バス「桜井谷停留所」より徒歩10秒