2025.9.23| 矯正相談集
「受け口が気になる」「前歯が反対咬合になっている」とご相談いただいたK.Sさん(7歳女の子)のケース
「下の歯が前に出ている気がする」「受け口が気になる?」というように、お子様のお口の状態に不安を感じる親御様は少なくありません。
今回は、受け口傾向のあるかみ合わせを気にされて来院された7歳の女の子、K.Sさんとの初診相談時のやり取りをご紹介します。矯正治療を検討するにあたり、将来のリスクも含めた当院の考え方をお伝えできた一例です。
患者様情報
年齢 | 7歳 |
性別 | 女性 |
初診時の画像診断



永久歯の前歯が反対咬合になっていました。
上の歯並びはガタガタがあり、左上の前から2番目の歯が生えるスペースがありません。
ご相談のきっかけ
他院で矯正相談を受けた際、「受け口の治療は一度、矯正専門の歯科医院で相談されてはどうでしょうか?」と提案され、当院を紹介されて来院されました。お母様ご自身も小学生の頃、一部の前歯が反対に咬んでいた状態を矯正治療で改善されたご経験があり、お子さんも同じような状況なのではないかとご心配されていました。さらに、今後転勤による転居の可能性もあることから、「今のタイミングでどのような治療ができるのか」「治療開始が現実的なのか」といった点について、専門的な見解を求めてのご相談でした。
患者様との実際のやり取り
はじめまして。本日はどのようなところが気になって来院されましたか?
受け口と反対咬合が気になって来院しました…。特に、下の歯が前に出ているように見えるのが気になります。
はい、実際にかみ合わせを確認すると、前歯が反対咬合になっていて、奥歯の関係性も受け口傾向にあることが分かります。理想的には、上と下の奥歯のラインがきれいに重なるのが望ましいですが、今は下が前に出ています。骨格的にも下顎が上顎よりも前にあるため、受け口の骨格をしています。
なるほど、そうなんですね…。
加えて、左上の前から2番目の永久歯が生えるスペースが足りてないように思います。今後永久歯が生えそろうとスペース不足からガタガタになるリスクもあります。受け口の治療では上顎を前に引っ張ることが重要なのですが、上顎を前に引っ張ることで上の歯並びのスペースがさらに足りなくなり、将来的に永久歯を抜く必要があるかもしれません。
将来的に歯を抜くっていうのは、どのタイミングで決断するものなんですか?
多くの場合、永久歯への生え変わりが終わる12歳以降に判断します。顎の成長の程度によって状況は変わってくるので、まだ歯を抜くことが決定したわけではありませんが、将来の可能性として知っておくといいかもしれません。
装置についてはどのようなものになりますか?
基本的にはシンプルな装置を使って、上顎を前に引っ張るようにします。上の歯並びの内側に金属の固定装置(リンガルアーチ)を装着して、フェイスマスクを使って上顎を前方に引っ張ります。(上顎前方牽引)フェイスマスクは寝る時だけ装着するので、日常生活での負担は大きくはありません。
それなら子どもも安心かもしれません。
上あごの成長は10歳頃に止まってしまうので、今から治療を始めると上顎を前方に引っ張る期間を十分に取れます。矯正治療を始めるタイミングとしてはベストなタイミングです。
よくわかりました。精密検査の予約をとって帰ります。
まとめ
K.S.さんのケースでは、
・反対咬合と受け口傾向がみられたこと
・永久歯のスペース不足によるガタガタや、将来的な抜歯の可能性も視野に入れる必要があること
が診察のポイントとなりました。
今回の診察では、見た目としての「下の前歯が前に出ている印象」だけでなく、
成長発育に伴う顎の成長やかみ合わせの変化、将来的なガタガタに対する判断、使用する装置の選択肢(マウスピースを含む)など、将来的な安定性と治療の継続性を見据えたご説明を行いました。
小児矯正では、ただ歯を並べるのではなく、お子様の成長の力を利用して正しい骨格バランスを育てることが大切です。特にK.S.さんのように、早期から受け口の兆候が見られる場合は、タイミングよく適切な治療を始めることで、将来的な治療負担を軽減できる可能性があります。
「うちの子、受け口かも?」「矯正って今からでも間に合うの?」といった疑問をお持ちの方は、ぜひ一度ご相談ください。
お子様の成長を見据えた、将来につながる最適な治療法をご提案いたします。
この記事の監修者情報
吉田 尚起
日本矯正歯科学会認定医
院長である吉田なおきは、国立大阪大学歯学部、および同大学院にて矯正治療を専門に学び、博士号を取得。大学病院にて7年間にわたり研鑽を積み、300症例以上の矯正治療に携わってきました。
自身も歯並びのコンプレックスを克服した経験から、見た目の美しさだけでなく、噛み合わせや心身の健康を考えた治療を心がけています。
歯科医師全体の約3%しか取得していない日本矯正歯科学会認定医として、お子様から大人の方まで、未来の笑顔をサポートします。
