2025.12.12| コラム
あなたの笑顔はどっち?バッカルコリドーの広い・狭いで変わる印象

笑ったとき、歯の横にふっと現れる“黒い影”に気づいたことはありませんか。
普段は意識しにくいものの、この影──「バッカルコリドー」は、実は笑顔の印象を左右する重要な要素です。名前だけ聞くと専門的で難しそうですが、鏡の前でにこっと笑えば、誰の口元にも必ず存在する身近なスペースのこと。
本記事では、この黒い影がどのように笑顔の印象を変えるのか、なぜ人によって見え方が違うのか、そして治療で調整できるのかまで、分かりやすく解説します。読み終えるころには、ご自身の魅力的な笑顔づくりのヒントがきっと見つかるはずです。

目次
バッカルコリドーとは何なのか?
笑ったとき、口角の横にふっと現れる黒い隙間──それが「バッカルコリドー」です。専門的には“笑顔のネガティブスペース”とも呼ばれ、歯と頬の間にできる影のような空間を指します。一見すると単なる暗がりのようですが、この黒いスペースがどれくらい見えるかによって、笑顔の印象は大きく変わります。たとえば、歯が横方向までしっかり見える華やかな笑顔と、控えめで引き締まった印象の笑顔。その違いを作り出しているのが、このバッカルコリドーなのです。

また、バッカルコリドーは「美しい笑顔」の評価基準として世界的に注目されており、文化や価値観によって理想が異なる点も特徴です。たとえばハリウッドなどでは“黒い影がない”ことが魅力とされる(ハリウッドスマイル)一方、日本では自然で上品に見せる「ほどよい影」が好まれる傾向があります。このように美しさの基準は一つではなく、人によっても大きく変わるため、まずは“自分の笑顔の特徴を知ること”が魅力づくりの第一歩と言えるでしょう。
それでは次に、実際の見え方をもう少し具体的に見ていきましょう。
バッカルコリドーの見え方とは
鏡の前で思いきり笑ってみると、歯列の左右、奥歯付近に黒いスペースが見えることがあります。これがまさにバッカルコリドーです。笑顔の形や口の開き方、頬の厚み、歯列弓(アーチ)の幅など、さまざまな要素が組み合わさることで見え方が決まり、人によって印象が大きく変わります。
たとえば、アーチが広めの人では歯が横方向まで見えるため黒い影が少なく、反対にアーチが狭い人では頬との間に隙間ができやすく影が濃く見えます。また、普段は影が目立たない人でも、口を大きく開けて笑うとスペースが広く見えることがあります。このように、バッカルコリドーは“固定された形ではなく、表情と動きの中で変化する要素”と言えるでしょう。
まずは自分の笑顔を知るために、自然な笑顔と大きく笑った表情を比べてみると、影の変化に気づきやすくなります。
バッカルコリドーの別名
バッカルコリドーは専門分野で使われる用語ですが、実は複数の呼び方が存在します。学術的には「頬側空隙(きょうそくくうげき)」と呼ばれ、読んで字のとおり“頬の側にできる空間”という意味を持ちます。また、一般向けの説明では「ブラックスペース」と表現されることもあり、こちらの方がイメージしやすいかもしれません。
いずれの呼び名も指しているのは、笑顔の中で歯と頬の間に生じる黒いスペースのこと。その見え方は笑顔の印象に関わるため、矯正歯科の領域では重要な評価ポイントとされています。特にスマイルデザイン(顔全体との調和を考えた笑顔づくり)では、このスペースの幅をどの程度に保つかが、自然さ・華やかさのバランスを決める要素のひとつとなります。
笑顔の印象に与える影響
バッカルコリドーの大きさは、笑顔の印象を大きく左右する要素のひとつです。黒い影が広く見えると口元がきゅっと引き締まり、落ち着いた雰囲気を与えます。一方で影が少なく歯が横方向までしっかり見えると、華やかで開放的な「見せる笑顔」に近づきます。
魅力の基準には個人差があり、文化によって理想像が異なる点も特徴です。たとえばアメリカでは影が少ない“ハリウッドスマイル”が好まれるのに対し、日本では自然でやわらかい印象を与えるほどよい影を美しいと感じる方も多くいます。
このように、バッカルコリドーは「正解が一つではない」表情の個性。次は、影が広い場合・狭い場合にどのような印象の違いが生まれるのか、具体的に見ていきましょう。

広いバッカルコリドーの印象
バッカルコリドーが広いと、笑ったときの黒い影がはっきり見えるため、口元が引き締まってシャープな印象を与えやすくなります。頬と歯列の間にできるスペースが強調されることで、輪郭がすっきり見えたり、落ち着いた“大人っぽさ”を感じさせるケースもあります。
たとえば、歯列の横幅がやや狭い方や、頬の張りがしっかりしている方ではこの影が広く見える傾向があり、微笑んだときと大きく笑ったときで影の出方が変わることも特徴です。
ただし「広い=悪い」という意味ではなく、上品で控えめな雰囲気が好まれる文化圏では肯定的に受け取られることも多く、魅力の一部として自然に調和しているケースも少なくありません。

狭いバッカルコリドーの印象
「バッカルコリドーが狭い、つまり黒い影がほとんど見えない場合、笑ったときに横方向まで白い歯がしっかり見えるため、明るく華やかな印象になります。いわゆる“ハリウッドスマイル”に近いイメージで、口元全体が大きく開いているように見えることから、エネルギッシュでポジティブな印象を与える傾向があります。
特にアーチ幅が広い方や、頬のラインがスリムな方は影が出にくく、写真映えしやすいと感じることも多いでしょう。また、舞台・接客・メディアなど「笑顔を魅力として表現したい」職業では、このタイプの笑顔が好まれる傾向にあります。
ただし、影が少ない笑顔が“必ずしも理想”というわけではなく、自然さや上品さを大切にしたい場合は、適度なバッカルコリドーが調和することもあります。笑顔の魅力は、あくまでその人の雰囲気とのバランスが鍵になります。

個人差と好みの違い
バッカルコリドーの“理想の広さ”には明確な正解がありません。顔立ち・歯列の形・頬の厚み・笑い方など、個々の条件によって見え方が異なるため、同じ広さであっても人によって印象が変わるからです。また、美的価値観は文化的背景によっても左右されます。
たとえば、自然で穏やかな笑顔が好まれる日本では「ほどよい影がある笑顔」が上品とされやすい一方、明るく歯をしっかり見せる笑顔が高く評価される欧米では「影が少ない=理想的」と捉えられる傾向があります。
このように、バッカルコリドーは“個性としての幅”を持った要素であり、好みや目的によって評価が変わります。大切なのは、文化的価値観に縛られることではなく、自分がどう見られたいか、どんな笑顔を目指したいかという点を大切にすることです。

バッカルコリドーができる理由(原因)
バッカルコリドーがどの程度見えるかは、偶然ではなく「歯列の幅」「歯並び」「噛み合わせ」「頬や唇の形」「笑い方」など複数の要素が関わって決まります。とくに大きな影響を与えるのが歯列弓(アーチ)の横幅で、上顎の幅が狭いと頬との間に空間ができやすく、黒い影が広く見える傾向があります。また、頬の厚みや口の開け方でも影の出方は変化するため、同じ人でも表情によって印象が大きく変わります。
つまりバッカルコリドーは、骨格・歯列・筋肉・表情が組み合わさって生まれる“口元の個性”。次の項目では、それぞれの要因をさらに具体的に掘り下げていきます。
歯列弓の幅の影響
バッカルコリドーの見え方を左右する最も大きな要因が、上顎の歯列弓(アーチ)の横幅です。上顎の幅が狭いと、奥歯が前方から見えにくくなり、歯と頬の間に黒いスペースが生じやすくなります。これは歯列全体が内側にまとまっているため、頬の位置との差が大きくなり、影が強調されるからです。
一方で、歯列弓が広い人は歯が横方向までしっかり見えるため、黒い影は少なく、明るく開放的な笑顔に見えます。矯正治療でアーチ幅を適度に広げることで影が目立ちにくくなるケースもあり、笑顔の印象を調整する上でも重要な指標とされています。

頬や唇とのバランス
バッカルコリドーの見え方は、歯列の幅だけでなく「頬」や「唇」との位置関係にも大きく影響されます。たとえば、頬の厚みがしっかりしている方は、笑ったときに頬が内側へ押し込む力が強く働き、歯との間にスペースが生じやすくなります。その結果、黒い影がやや広く見えることがあります。反対に、頬の脂肪が少なくフェイスラインがシャープな方では、影が出にくく口元が明るく見える傾向があります。
また、唇の動きや開き方も影を左右する要素です。唇が横方向に大きく開くタイプの笑い方では歯がよく見え、バッカルコリドーが狭まりやすい一方、縦に開く笑い方では頬と歯の距離が生まれ、影が強調されることがあります。このように、骨格だけでなく軟組織の特徴も影の出方を決める重要なポイントとなっています。
笑い方の違い
バッカルコリドーは、骨格や歯列だけでなく「どんな笑い方をするか」でも大きく見え方が変わります。たとえば、口を縦方向に大きく開けて笑うタイプの方では、頬がやや内側に引き込まれ、歯列との間にスペースが生まれやすく、黒い影が強調される傾向があります。一方、口角を横に広げるように笑う方では、歯が横方向までよく見えるため、影が狭くなり華やかな印象になりやすいのが特徴です。
このように、同じ人でも「自然な微笑み」「大笑い」「作り笑い」など表情の違いによって影の幅が変化するため、写真写りが日によって違って見えるのは珍しくありません。まずは普段どのような笑い方をしているかを知ることで、自分のバッカルコリドーの特徴がより把握しやすくなります。
矯正治療でバッカルコリドーは変えられる?
バッカルコリドーは生まれつきの骨格や頬の形に左右される部分もありますが、矯正治療によって“見え方をコントロールできるケース”があります。とくに歯列の横幅や歯の位置関係を調整することで、笑ったときに歯がどれだけ見えるかが変化し、影の広さを適度に整えられる場合があります。ただし、上顎だけを無理に広げると噛み合わせのバランスを崩すリスクがあるため、全体の調和を見ながら慎重に計画することが重要です。
小児期と成人では治療可能な範囲にも違いがあり、成長を利用できる子どもの方が改善の幅が広がる点も特徴です。次の項目では、どのような装置や治療方法で影の印象を整えられるのかを詳しく見ていきます。

アーチワイヤーや拡大装置の活用
バッカルコリドーを小さく見せたい場合、矯正治療では上顎の横幅を適度に広げるアプローチが取られることがあります。代表的なのが、クワドヘリックスや急速拡大装置といった拡大装置、あるいはアーチワイヤーを利用した側方拡大です。これらの装置は、上顎の歯列弓を横方向へ広げることで奥歯が前方から見える範囲を増やし、笑顔の中に占める“黒い影”を緩和する効果が期待できます。
たとえば、アーチ幅が狭く奥歯が内側に倒れ込んでいるケースでは、ワイヤーの調整によって歯を外側へ適度に傾け、自然な幅を確保することで影のバランスが整うことがあります。拡大装置を用いる場合は、骨の成長を利用しながらゆっくりと幅を広げていくため、特に小児期に効果が得られやすい点が特徴です。

大人と子どもの違い
バッカルコリドーの改善に関しては、「大人」と「子ども」でアプローチできる範囲が大きく異なります。最大の違いは、上顎の骨がまだ成長途中かどうかという点です。
小児期は上顎の骨が柔らかく、中央の“口蓋正中縫合”が完全には閉じていないため、骨ごと横方向に広げることが可能です。そのため、拡大装置を使えば歯列の幅を効率的に広げられ、バッカルコリドーの改善に直結しやすくなります。
一方、成人では骨がすでに固く成長が終了しているため、広げられるのは主に“歯の位置”であり、骨格レベルの拡大には制限があります。歯のみを外側へ動かす方法は後戻りのリスクもあるため、どこまで影響を与えられるかは個々の症例によって異なります。
つまり、小児期はバッカルコリドー改善のチャンスが大きく、成人では“可能な範囲で無理なく整える”ことが現実的なアプローチとなります。
噛み合わせとのバランス
バッカルコリドーを小さく見せたいからといって、上顎だけを大きく広げればよいわけではありません。矯正治療では常に「上下の噛み合わせのバランス」が最優先であり、この調和が崩れると、見た目だけでなく機能面にも支障が出てしまいます。
たとえば、上顎の横幅だけを過度に広げると、下顎の歯列弓との幅が合わなくなり、奥歯がうまく噛み合わない“交叉咬合”のリスクが生じます。これは長期的には咀嚼の偏りや顎関節の負担につながることもあるため、慎重な診断が欠かせません。
そのため、バッカルコリドー改善を目的とする場合でも、歯列の幅・歯の角度・上下顎の位置関係を総合的に評価し、無理のない範囲で調整する必要があります。影の見え方だけで治療方針を決めるのではなく、“噛める状態”との両立が、矯正治療における最も重要なポイントです。

バッカルコリドーを自分でチェックする方法
バッカルコリドーは、特別な機器がなくてもご自宅で簡単に確認できます。鏡の前で笑ったときの歯と頬の間にある黒い影の広さを比べるだけで、自分の笑顔の特徴がつかめます。自然な微笑みと大きく開けた笑顔では影の出方が変わるため、2種類の笑顔で比較するのがポイントです。また、写真で左右差を見ると、普段では気づきにくい影のバランスも客観的に把握できます。
自分のバッカルコリドーを知ることは、理想の笑顔づくりの第一歩。次に紹介するチェック方法を通して、あなた自身の“影の特徴”を具体的に見ていきましょう。
自然な笑顔でのチェック
まずは普段の“自然な笑顔”で、バッカルコリドーがどの程度見えているかを確認します。意識して口角を引き上げるのではなく、軽く微笑むようなイメージで鏡を見てみましょう。このとき、歯と頬の間にできる黒い影がどれくらいの幅で見えているかを観察します。
自然な笑顔は、日常生活や会話の中で最も多く相手に見られる表情です。そのため、この段階で影が広いのか狭いのか、左右差があるのかを知ることは、自分の笑顔の“基準値”を把握する上でとても重要です。まずは力を入れず、普段どおりの表情でチェックしてみてください。
大きく笑ったときのチェック
次に、口を大きく開けて笑ったときのバッカルコリドーを確認してみましょう。自然な笑顔に比べて頬の筋肉が強く引き上がり、歯列がより広く露出するため、黒い影の見え方が大きく変わることがあります。
このとき、自然な笑顔より影が広くなるか、狭くなるかをチェックすることで、あなたの笑い方の特徴が把握しやすくなります。たとえば、縦方向に口が開きやすい方は影が目立ちやすく、逆に横方向に広がる笑い方の方は影が減る傾向があります。
「大きく笑うとどう変わるか」を知ることで、写真写りや人前での笑顔の見せ方にも活かせるはずです。
写真比較の活用
バッカルコリドーをより客観的に把握したい場合、写真で左右を比較する方法がとても有効です。スマートフォンで正面から笑顔の写真を撮影し、自然な笑顔・大きく笑った表情の2種類を並べて見比べてみましょう。静止画にすることで、鏡では気づきにくい影の幅や左右差が明確に見えます。
たとえば、片側だけ影が広く映っている場合は、頬の左右差や歯列の傾きが影響している可能性があります。また、笑い方にクセがある場合も、写真ではっきりわかることがあります。
このように写真比較は、自分の笑顔を“第三者目線”で捉えるための大きなヒントになります。矯正相談を検討している方は、撮影した写真を持参するとより具体的なアドバイスが得られやすくなります。
まとめ:あなたの笑顔をどう魅力的に見せるか
バッカルコリドーは、笑顔の印象を左右する重要な要素のひとつです。黒い影の広さによって、笑顔が引き締まって見えたり、華やかに見えたりと、口元の印象は大きく変わります。影の幅は、歯列弓の広さや頬・唇の形、そして笑い方といった複数の要因が組み合わさって決まるため、「広い・狭いのどちらが正解」というものではありません。自分がどんな笑顔を理想とするか、そしてどのように見られたいかによって、目指すバランスも変わります。
矯正治療では、歯列の横幅や噛み合わせを整えることで、バッカルコリドーの見え方を調整できるケースもあります。ただし、影だけに着目するのではなく、上下の噛み合わせや骨格との調和を見ながら進めることが大切です。小児期は骨格を広げられる可能性が高いため改善の幅が広く、成人でも無理のない範囲で印象の調整が可能です。
「もっと華やかに見える笑顔になりたい」「自分の影が広いのか狭いのか判断できない」──
そんなお悩みがあれば、一度矯正専門の歯科医院で相談してみてください。専門家があなたの笑顔の特徴を丁寧に分析し、理想の表情に近づくための最適な方法をご提案します。どうぞ安心してカウンセリングをご利用ください。

この記事の監修者情報
吉田 尚起
日本矯正歯科学会認定医
院長である吉田なおきは、国立大阪大学歯学部、および同大学院にて矯正治療を専門に学び、博士号を取得。大学病院にて7年間にわたり研鑽を積み、300症例以上の矯正治療に携わってきました。
自身も歯並びのコンプレックスを克服した経験から、見た目の美しさだけでなく、噛み合わせや心身の健康を考えた治療を心がけています。
歯科医師全体の約3%しか取得していない日本矯正歯科学会認定医として、お子様から大人の方まで、未来の笑顔をサポートします。
