2026.1.26| 矯正相談集
「永久歯が後ろから生えてきていて…」とご相談いただいたH.Sさん(5歳・男の子)のケース
「下の前歯が後ろから生えてきている気がする」「顎が小さいと言われた」
5歳頃は、生え変わりが早いお子様もいて、突然永久歯が見えてきて驚かれる親御様も少なくありません。
今回は、永久歯の生え方を心配されて来院された5歳の男の子、H.Sさんとの初診相談時のやり取りをご紹介します。
当院では、すぐに本格矯正に進むのではなく、プレオルソ(マウスピース型の機能矯正装置)を使った土台づくりについてもご説明しました。
患者様情報
| 年齢 | 5歳 |
| 性別 | 男性 |
初診時の画像診断



上下の歯並びにガタガタがありました。
下あごを右に偏って噛む癖があり、噛み合わせが不安定でした。
ご相談のきっかけ
H.Sさんは、同じ幼稚園の保護者の方から当院を勧められ来院されました。
かかりつけの歯科医院では「顎が小さいので広げた方がいいかも」「プレオルソという装置がある」と言われたものの、まだ具体的な話に進む前だったそうです。実際に永久歯が後ろから見え始めて心配になり当院に来院されたとのことでした。
患者様との実際のやり取り
一番気になっているのは、永久歯が後ろから生えてきているところですか?
そうです。歯医者さんでも指摘されていて…。顎が小さいから広げた方がいいと言われて、プレオルソの話も聞いたんですけど、ピンとこなくて。
でも急に歯が出てきて、これは早めに相談しないと…と思って。
なるほど。まず確認したいのは、乳歯は自然に抜けましたか?抜歯はしてないですか?
抜こうかなと思って歯医者に行ったんですけど、早く抜きすぎると横の歯が寄ってくると言われて。結局自然に抜けました。
それが一番いいです。自然に抜けたのは理想的ですね。
よかったです。それと上のすき間は心配いらないんでしょうか?
上の歯の少しのすき間ですね。実は悪いことじゃなくて、乳歯の時期はちょっとすきっ歯くらいがちょうどいいんです。
あとから大きい永久歯が生えてくることで、隙間は閉じていきます。
ただ、下の歯並びはスペースがないため、将来的にガタガタになりそうです。
下は永久歯が大きめで、今の時点でもスペースが足りない感じがあります。横の歯もこれから生えてくるので、さらにスペースが足りなくなりそうですね。
では、もう矯正を始めた方がいいんでしょうか?
ワイヤーで並べたり、顎をしっかり広げる本格的な矯正は、だいたい8歳くらいから行います。
今はまだ乳歯が多いので、本格的なワイヤー矯正は行いません。
じゃあ今は何ができますか?
今できることが、先ほど話に出たプレオルソです。
永久歯が並びやすい環境を整える装置です。
正直、プレオルソが何をしてくれるのかが分からなくて…。
そうですよね、いちばん分かりにくいところだと私も思います。
歯は、外側から唇、内側から舌に押される力のバランスの中で並びます。
しかし、口呼吸や舌の位置が低いと、唇に押される力が大きくなり、そのバランスが崩れて顎が狭くなりやすいんです。
舌の位置は上あごにスポットと呼ばれる正しい位置があるのですが、そこに舌が位置づくことで鼻呼吸がしやすくなり、顎の成長も助けられます。
プレオルソは、その舌・唇・呼吸の環境を整えるのがメインの装置です。
歯も少しは動くんですか?
歯並びを広げたり、歯が生える方向を誘導することができます。
環境が整うことで、ガタガタの悪化を防いだり、将来の矯正がスムーズになります。
どれくらいつけるんですか?
基本は 寝る時+日中の1〜2時間です。
幼稚園にはつけていかないので、家でお風呂の時間やアニメを見る時間に使うご家庭が多いです。
最初は寝る時につけられない子も多いですが、日中で練習して、数ヶ月かけて慣れていくことで夜間にも装着していきましょう。
わかりました。ありがとうございます。検査の予約をとって帰ります。
まとめ
H.Sさんのケースでは、
・「永久歯が後ろから生えてきていること」と「顎がやや小さく、将来的に歯並びが乱れやすい点」に対して、
・すぐに本格的な矯正を始めるのではなく、プレオルソを用いて口腔周囲の環境(舌の位置・口呼吸・噛む位置)を整えることが有効であること
・歯を無理に動かすのではなく、成長を妨げないように見守りながら、将来の矯正につなげていくことが重要であること
という相談結果になりました。
今回の診察では、見た目としての「永久歯が後ろから生えてきている不安」だけでなく、
顎の成長段階や乳歯と永久歯の関係、口呼吸や舌の癖といった歯並びの土台となる要素についてもご説明しました。
また、プレオルソでできること・できないことを整理し、今できる対応と、将来的な選択肢を含めたお話を行っています。
小児矯正では、歯を早く並べることだけが目的ではありません。
成長期だからこそ顎や口周りの環境を整え、歯が自然に並びやすい土台を作ることがとても大切です。
H.Sさんのように、生え変わりが早く進んでいるお子様では、早い段階で環境を整えておくことで、将来の矯正がよりスムーズになる可能性があります。
お子様の歯の生え方や顎の成長について少しでも気になることがあれば、ぜひ一度ご相談ください。
お子様の成長に合わせた、無理のない最適な治療のタイミングを一緒に考えていきましょう。
この記事の監修者情報
吉田 尚起
日本矯正歯科学会認定医
院長である吉田なおきは、国立大阪大学歯学部、および同大学院にて矯正治療を専門に学び、博士号を取得。大学病院にて7年間にわたり研鑽を積み、300症例以上の矯正治療に携わってきました。
自身も歯並びのコンプレックスを克服した経験から、見た目の美しさだけでなく、噛み合わせや心身の健康を考えた治療を心がけています。
歯科医師全体の約3%しか取得していない日本矯正歯科学会認定医として、お子様から大人の方まで、未来の笑顔をサポートします。
