2026.7.18 叢生(ガタガタ)の矯正相談集

「前歯の噛み合わせが反対になっている…」とご相談いただいたM.Aさん(5歳・女の子)のケース

「前歯が生えたときから、かみ合わせが反対になっている」「受け口は、いつから治療を始めればよいのか分からない」――。

お子様の受け口を乳歯の時期から指摘されていても、「永久歯に生え変わるまで様子を見てよいのか」「早く治療した方がよいのか」と、治療を始めるタイミングに悩まれる保護者の方は少なくありません。

今回は、前歯の反対咬合についてご相談に来られた5歳の女の子、M.Aさんとの初診相談時のやり取りをご紹介します。

現在のかみ合わせを改善するためのプレオルソによる治療や、顎の成長を見ながら今後検討する可能性がある治療についてもお伝えします。

患者様情報

年齢5歳
性別女性

初診時の画像診断

反対咬合です。

下の歯並びに隙間があります。(空隙歯列弓)

ご相談のきっかけ

M.Aさんは、前歯が生えた頃からかみ合わせが反対になっていたそうです。

定期検診を受けていた歯科医院でも受け口について指摘されていましたが、「いずれ矯正治療を考えましょう」と言われており、具体的にいつから治療を始めればよいのか分からなかったとのことでした。

保護者の方は、

「5歳の今から治療を始めた方がよいのか」
「もう少し大きくなるまで待っても大丈夫なのか」
「どのような装置を使って治すのか」

といった点について詳しく知りたいと、当院へご相談くださいました。

患者様との実際のやり取り

はじめまして。今、一番気になっているところを教えていただけますか?

歯が生えたときから、前歯が反対になっていました。定期検診でも診てもらっていましたが、いつから矯正を始めればいいのか分からなくて。

実際にお口の中を確認すると、下の前歯が上の前歯よりも前にある反対咬合、いわゆる受け口の状態ですね。

やっぱり受け口なんですね。

はい。ただ、上下の歯並びには今のところ大きなガタつきはありません。乳歯の間に隙間があることも、これから大きな永久歯が生えてくるためには良い状態です。

レントゲンでは、どのようなことが分かりますか?

レントゲンでは、現在生えている乳歯の下に、これから生えてくる永久歯が確認できました。現時点では、歯が足りない、または余分な歯があるといった問題はなさそうです。
また、奥には6歳臼歯という最初の永久歯が生え始めています。生えたばかりの奥歯は歯ブラシが届きにくく、永久歯の中でも虫歯になりやすい歯なので、ご家庭でも意識して磨いてあげてください。

分かりました。受け口は、今から治した方がいいのでしょうか?

受け口は、できれば成長の早い時期に一度改善しておくことが大切です。上顎と下顎では、成長が活発になる時期が異なります。
幼児期から小学校低学年頃は、上顎の成長を促しやすい時期です。この時期に前歯のかみ合わせが反対のままだと、下の歯や下顎によって上顎の前方への成長が妨げられることがあります。

もっと早く治療を始めた方がよかったのでしょうか?

3歳や4歳では、装置を使うこと自体が難しいお子様も少なくありません。M.Aさんは5歳で、装置の使用を検討できる年齢になっているため、今からでも十分治療を始める意味があります。
現在は、かみ合わせる際に前歯が当たることを避けるため、下顎を少し前へ動かしている可能性もあります。このような場合は、前歯の位置を改善することで、下顎が本来の位置へ戻りやすくなることがあります。

どのように前歯を治すのですか?

まずは、プレオルソという取り外しのできる装置をご提案します。柔らかい素材でできたマウスピースのような装置をお口に入れ、下の前歯を内側へ、上の前歯を前方へ動きやすくして、反対になっているかみ合わせを改善していきます。

下の歯を内側に動かしても大丈夫ですか?

M.Aさんの下の歯には現在、適度な隙間があります。そのため、下の前歯を少し内側へ動かすための余裕があり、プレオルソによる改善を期待しやすい状態だと考えています。

プレオルソには、歯を動かす以外の効果もあるんですか?

はい。プレオルソは、歯の位置を整えるだけでなく、舌や唇など、お口の周りの筋肉を良い状態へ導くことも目的としています。
舌は本来、上顎の内側にある「スポット」と呼ばれる位置に置かれていることが理想です。舌が正しい位置にあることで、上顎の成長を内側から支える役割も期待できます。
プレオルソを装着すると、舌を正しい位置へ置く練習になり、装置を入れたまま唇を閉じることで、お口の周りの筋肉を使うトレーニングにもなります。

どれくらいで受け口は治りますか?

装置をしっかり使用できれば、数か月で前歯のかみ合わせが改善するお子様もいます。ただし、装着できる時間や歯の動き方には個人差があるため、治療期間を正確に決めることはできません。
まずは前歯の反対咬合を改善し、上顎が成長しやすい環境を整えることが第一の目標です。

一度治れば、もう受け口にはならないのでしょうか?

前歯のかみ合わせが改善しても、顎の骨格的なずれが残っている場合には、成長とともに再び反対咬合が現れることがあります。
特に下顎は、思春期頃に大きく成長することがあります。そのため、治療後も定期的にレントゲンなどで上顎と下顎の成長を確認していくことが重要です。

その場合は、どのような治療をするのですか?

小学校低学年頃になり、上顎の成長が不足していると判断した場合には、上顎を前方へ引っ張る治療を検討することがあります。
お口の中の装置と、就寝時に使用するフェイスマスク型の装置を組み合わせ、下顎の成長に負けないように上顎の前方への成長をサポートしていきます。

下顎を後ろに下げる治療ではないんですか?

矯正治療によって下顎の成長そのものを止めたり、後ろへ下げたりすることは難しいとされています。そのため、成長期の受け口では、上顎の成長を促し、上下の顎のバランスを整えることを目指します。

将来、手術が必要になることもあるのでしょうか?

受け口は、下顎の成長量によって将来の状態が変わります。早い時期から治療を行っても、成長期に下顎が大きく伸びた場合には、成人後に外科手術を伴う矯正治療が必要となる可能性もあります。
ただし、今からできる治療を行い、上顎が成長しやすい環境を整えておくことには意味があります。将来的に大がかりな治療が必要になる可能性をできるだけ減らすためにも、成長を継続して確認していきましょう。

今すぐ行うのは、プレオルソだけですか?

まずはプレオルソを使い、前歯のかみ合わせを改善することから始めます。その後は成長を確認し、必要があれば上顎の成長を促す小児矯正へ移行します。
さらに永久歯への生え変わりが進み、歯並びにガタつきが生じた場合には、ワイヤー矯正やマウスピース型矯正装置による治療が必要になることもあります。
一度にすべての治療を決めるのではなく、その時点で必要な治療について、成長や歯の生え変わりを確認しながらご相談していきます。

分かりました。まずはプレオルソから前向きに考えてみたいです。

まとめ

M.Aさんのケースでは、
・「前歯のかみ合わせが反対になっている反対咬合」に対して、プレオルソを使用して前歯の位置や舌・口周りの筋肉の状態を整えることが有効と考えられること
・前歯のかみ合わせを早期に改善し、上顎が成長しやすい環境を整えながら、今後の顎の成長を継続して確認することが重要

という相談結果になりました。

今回の相談では、現在の「前歯の反対咬合」だけでなく、上顎と下顎では成長が活発になる時期が異なることや、反対のかみ合わせが上顎の成長に与える可能性についても詳しくご説明しました。また、プレオルソの使用方法や期待できる効果、治療後に再び受け口が現れる可能性、将来的に必要となることがある上顎の成長を促す治療についてもお話ししています。

小児の受け口治療では、今見えている前歯のかみ合わせを治すだけでなく、これからの顎の成長や永久歯への生え変わりまで見据えて、経過を確認することが重要です。特にM.Aさんのように、下の前歯を内側へ動かすための隙間があり、装置の使用を検討できる年齢に達しているケースでは、プレオルソを適切に使用することで、前歯のかみ合わせを改善し、上顎が成長しやすい環境を整えられる可能性があります。

お子様の受け口や前歯のかみ合わせでお悩みの方は、ぜひ一度ご相談ください。成長や歯の生え変わりを確認しながら、お子様にとって無理のない最適な治療方法と開始時期を一緒に考えていきましょう。

この記事の監修者情

吉田 尚起

日本矯正歯科学会認定医

院長である吉田なおきは、国立大阪大学歯学部、および同大学院にて矯正治療を専門に学び、博士号を取得。大学病院にて7年間にわたり研鑽を積み、300症例以上の矯正治療に携わってきました。

自身も歯並びのコンプレックスを克服した経験から、見た目の美しさだけでなく、噛み合わせや心身の健康を考えた治療を心がけています。

歯科医師全体の約3%しか取得していない日本矯正歯科学会認定医として、お子様から大人の方まで、未来の笑顔をサポートします。

〒560-0056 大阪府豊中市宮山町1丁目1−47

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