| 叢生(ガタガタ)の矯正相談集
「部分的な反対の噛み合わせ(交叉咬合)と歯のガタガタが気になる…」とご相談いただいたM.Fさん(10歳・女の子)のケース
「前歯がだんだんガタガタしてきた」「横から永久歯が生えてきて、八重歯にならないか心配」「一部の前歯が反対にかんでいる」――。
永久歯への生え変わりが進む小学校高学年頃になると、歯が並ぶスペースが不足し、それまで目立たなかったガタつきが急に気になり始めることがあります。
今回は、以前から歯並びのガタつきが気になり始め、矯正治療についてご相談に来られた10歳の女の子、M.Fさんとの初診相談時のやり取りをご紹介します。
現在の永久歯の生え変わりの状態や、顎を広げてスペースを確保する小児矯正、ワイヤー矯正とマウスピース型矯正装置の違いについてもお伝えします。
患者様情報
| 年齢 | 10歳 |
| 性別 | 女性 |
初診時の画像診断



上下の歯並びに大きなガタガタがあります。
左上の前から2番目の歯が上下反対に噛んでいます。(交叉咬合)
ご相談のきっかけ
M.Fさんのご家族は、以前から前歯のガタつきが気になるようになり、ご本人も歯並びをきれいにしたいと考えるようになったそうです。
特に、
「前歯のガタつきをきれいにしたい」
「これから生えてくる歯が八重歯にならないか心配」
「反対に噛んでいる前歯を治したい」
「ワイヤーとマウスピースでは、どちらが合っているのか」
といった点について詳しく知りたいと、当院へご相談くださいました。
また、保護者の方はご家族からマウスピース矯正の経験談を聞いており、ワイヤー矯正との痛みや歯磨きのしやすさ、通院頻度などの違いについても気になっていらっしゃいました。
患者様との実際のやり取り
はじめまして。今、一番気になっているところを教えていただけますか?
1年くらい前から前歯がガタガタしてきて、本人も少し気にしています。
実際にお口の中を見ると、上下ともにガタつきがありますね。特に一部の歯が内側から生えていて、これから犬歯が生えてくるスペースも少し不足しています。
これから生えてくる歯も、八重歯になる可能性がありますか?
今のスペースのままだと、その可能性はあります。これから犬歯などが生えてくるため、その歯が並べる場所をあらかじめ確保しておくことが大切です。
前歯の一部が反対になっているのも気になります。
そこも治しておきたい部分ですね。一部の前歯が通常とは反対のかみ合わせになっているので、その歯を適切な位置へ動かして、正常なかみ合わせにしていきます。
ほかに大きな問題はありますか?
今回の場合、ガタつき以外には大きな問題はそれほど認められません。
奥歯のかみ合わせを見ると、上下の奥歯が前後的に比較的良い位置でかみ合っています。そのため、骨格的に出っ歯や受け口などの不調和はありません。
それはよかったです。
そうですね。今回の矯正治療で中心になるのは、歯が並ぶスペースを作ってガタつきを改善することと、反対になっている前歯のかみ合わせを治すことです。
右下が少し痛いと言っているのですが、それは大丈夫でしょうか?
レントゲンで確認すると、その部分にはまだ乳歯が残っていて、そのすぐ下まで永久歯が生えてきています。
乳歯の根はほとんど吸収されているので、永久歯への生え変わりとしては順調な状態です。痛みが強ければ、早めに乳歯を抜くという選択肢も考えられます。
矯正治療では、ガタガタをどうやって治すのですか?
今回のように歯が並ぶ場所が足りない場合、小児矯正では「拡大治療」といって、歯列の幅を広げてスペースを確保する治療を行います。
顎を広げるということですか?
はい。上顎は成長期には左右の骨のつなぎ目がまだ成長途中なので、その時期を利用して歯列を横方向へ広げることができます。
歯だけを無理に外側へ倒すのではなく、成長を利用しながら歯が並ぶための土台を広げられることが、小児矯正の大きなメリットです。
大人になってからではできないのですか?
成長が終わってからでも歯列を広げる治療はわずかにできますが、子どもの時期のように顎の成長を利用することはできません。
ガタつきが強い場合には、成人矯正では歯を抜いたり、歯の側面を少し削ってスペースを確保したりすることがあります。そのため、成長期の今からスペースを作っておくことにはメリットがあります。
今から始めれば、全部の永久歯をきれいに並べられるのですか?
小児矯正では、まず歯列を広げて永久歯が生えやすい環境を作り、前歯のガタつきや反対のかみ合わせを改善します。
ただし、まだ奥の乳歯が残っていて、永久歯への生え変わりも途中です。そのため、今の小児矯正だけで永久歯すべてを細かく整えて完成させるわけではありません。
小児矯正が終わった後に、もう一度矯正することがあるんですか?
はい。矯正治療は大きく分けると二段階あります。
成長期に顎や歯列の環境を整える第一期治療と、永久歯がすべて生えそろった後に細かな歯並びやかみ合わせまで整える第二期治療です。
第一期治療後の状態に十分満足できれば、そこで経過観察とする場合もあります。一方、より細かな歯並びまで整えたい場合には、第二期治療へ進みます。
娘には、ワイヤー矯正とマウスピース矯正のどちらがおすすめですか?
今回については、「絶対にこちら」というほど大きな差はありません。どちらでも治療目標を目指せると考えています。
そのため、ご本人がどちらの装置なら頑張って続けられそうかも大切です。M.Fさん自身がマウスピースに興味を持っていて、学校での着脱などを管理できそうであれば、マウスピース型矯正装置は良い選択肢だと思います。
今のうちに矯正をするメリットは大きいですか?
はい。M.Fさんは現在10歳で、まだ顎の成長を利用できる時期です。
今の時期に歯列を広げて永久歯が並ぶスペースを確保できれば、将来さらにガタつきが強くなってから治療するよりも、抜歯や歯を削ってスペースを作る治療を避けられる可能性があります。
また、現在反対になっている前歯も、早めに正常な位置へ改善しておくことにはメリットがあります。
本人も歯並びを治したいと言っているので、検査の予約を取って帰ります。
まとめ
M.Fさんのケースでは、
・「上下の前歯のガタつき」と「一部の前歯の反対咬合」に対して、成長期を利用して歯列を広げ、永久歯が並ぶスペースを確保しながらかみ合わせを整える小児矯正が有効と考えられること
・ワイヤー矯正とマウスピース型矯正装置のどちらも選択肢となり、ご本人の生活や装置の管理のしやすさも考慮しながら治療方法を選ぶことが重要
という相談結果になりました。
今回の相談では、見た目としての「前歯のガタつき」や「八重歯になりそうな永久歯」といったお悩みだけでなく、一部の前歯が反対にかんでいることや、奥歯のかみ合わせ、これから生えてくる永久歯の位置についても詳しく確認しました。また、ワイヤー矯正とマウスピース型矯正装置それぞれのメリット・デメリットや、学校生活での装置の管理についてもご説明しました。
小児矯正では、今見えている前歯をきれいに並べるだけでなく、顎や歯列の成長を利用しながら、これから生えてくる永久歯のスペースを確保することが重要です。特にM.Fさんのように、骨格的な大きな問題はないものの、永久歯が並ぶスペースが不足しているケースでは、成長期に歯列を広げることで、将来的なガタつきを軽減し、抜歯や歯を削ってスペースを作る治療を避けられる可能性があります。
また、M.Fさんの場合はワイヤー矯正とマウスピース型矯正装置のどちらでも治療を検討できます。マウスピース型矯正装置では、歯列の拡大と前歯の配列を並行して進められる可能性がある一方、学校での着脱や装着時間をご本人が管理する必要があります。装置の見た目だけでなく、お子様自身が無理なく継続できる方法を選ぶことが大切です。
お子様の前歯のガタつきや反対のかみ合わせ、これから生えてくる永久歯のスペースでお悩みの方は、ぜひ一度ご相談ください。成長や永久歯への生え変わり、ご本人の希望や学校生活も考慮しながら、お子様にとって無理のない最適な治療方法を一緒に考えていきましょう。
この記事の監修者情
吉田 尚起
日本矯正歯科学会認定医
院長である吉田なおきは、国立大阪大学歯学部、および同大学院にて矯正治療を専門に学び、博士号を取得。大学病院にて7年間にわたり研鑽を積み、300症例以上の矯正治療に携わってきました。
自身も歯並びのコンプレックスを克服した経験から、見た目の美しさだけでなく、噛み合わせや心身の健康を考えた治療を心がけています。
歯科医師全体の約3%しか取得していない日本矯正歯科学会認定医として、お子様から大人の方まで、未来の笑顔をサポートします。
