2026.2.28| 矯正相談集
「下の前歯が内側に入ってきていて…」とご相談いただいたI.Yさん(6歳・男の子)のケース
「下の前歯が内側に入りかけている気がする」「このままガタガタがひどくなるのでは?」…
6歳頃は、前歯の生え変わりが始まったばかりで、歯並びが大きく変化する時期です。見た目の変化に不安を感じてご相談に来られる親御様も少なくありません。
今回は、「下の前歯が内側に入ってきている」と指摘を受けてご相談に来られた 6歳の男の子との初診相談時のやり取りをご紹介します。
当院では、今の歯並びだけでなく、これから生えてくる永久歯と顎の成長を見据えた“適切なタイミング”を重視して治療方針をご説明しました
患者様情報
| 年齢 | 6歳 |
| 性別 | 男性 |
初診時の画像診断



下の前歯が内側から生えてきています。
上の歯並びにはスペースがありますが、下の歯並びにはスペースがありません。
ご相談のきっかけ
I.Yさんは、他院で「下の前歯が内側に入り始めている」と言われ、
「この先、もっとガタガタになってしまうのでは?」と心配になり来院されました。
患者様との実際のやり取り
気になっているところは、下の歯が少し内側に入ってきているところでお間違いないですか?
はい、そこが気になります。このまま放っておくと、すごくガタガタになりますか?
最終的にこうなると断定はできないんですが、心配されているイメージは、
『このままスペースが足りずに将来ガタガタが強くなるかもしれない』ということだと思います。
ただ、今この時期は、見た目は不安定でも実際は舌の力で勝手に歯並びが整ってくる要素も大きいんです。
例えば、乳歯が抜けるとスペースができて、舌に押されて永久歯が自然に前へ並んでくれることもよくあります。
そして大事なのは、永久歯がちゃんと全部あるかどうかです。
I.Yさんは、永久歯の本数は揃っていそうなので、そこは一安心ですね。
歯が足りないわけではないんですね。
はい。歯の本数が足りないと治療方針が変わることも多いのですが、今回はそこは問題なさそうです。
今はまだ6歳で、これから生え変わりが続きます。
この段階で“よくある矯正治療”みたいにワイヤーなどで歯を動かすには、生えている永久歯の本数が少ないので効果的ではありません。逆に治療期間が長くなってしまうこととなります。
じゃあ、今すぐ広げる装置とかはまだ早いですか?
そうですね。顎を積極的に広げる治療は、だいたい 8〜9歳頃にスタートするのが最も効率が良いことが多いです。
生え変わりも進んで、必要な歯が揃ってくる時期なので、短い期間で効果を出しやすいんです。
今は何もしなくてもいいんですか?
何もできないのかというとそうではなくて、今できるのは“お口の使い方”を整えることです。
マウスピースみたいな装置ですか?
はい。プレオルソのような装置で、舌の位置・口呼吸・唇や頬の筋肉の使い方を整えて、歯が並びやすい環境をつくっていく目的です。
歯並びを綺麗に並べる装置というより、矯正の準備段階の装置ですね。
これだけで“完璧な歯並び”にはなりませんが、お口の環境が良くなることで、将来のガタガタが軽くなったり、矯正がスムーズになったりするメリットがあります。
では、治療は今から始めれるんですね。
そうですね。流れとしては、まずプレオルソで口腔環境を整えて、その後8〜9歳頃に顎を広げる・スペースを作る治療に進むのがスムーズです。
わかりました。家族と一度検討してみます。
まとめ
I.Y.さんのケースでは、
・「下の前歯が内側に入り始めている(叢生傾向)」ことに対して、今の段階で無理に歯を大きく動かすのではなく、生え変わりによる自然な改善の余地を見極めながら経過をみることが適切であること
・そのうえで、将来的にガタガタが強くならないように、成長期に顎の幅を確保する治療(拡大治療)を行えるタイミングを逃さないことが重要であること
という相談結果になりました。
今回の相談では、見た目としての「下の前歯の重なり」だけでなく、レントゲンで永久歯の本数が揃っていることを確認し、将来的に大きな異常が起きやすいタイプではないことを説明しました。
また、乳歯が抜けることでスペースができ、永久歯が自然に並んでくるケースも多いことから、現時点で“急いで並べにいく治療”が必ずしも最善ではないこともお伝えしています。
小児矯正では、「早く始めればいい」というよりも、
生え変わりと顎の成長を利用して、最も効率よく改善できる時期に介入することが大切です。
特にI.Y.さんのように、まだ生え変わりが始まったばかりの年齢では、拡大治療を本格的に行うのは8〜9歳頃が適齢になりやすく、今はその準備段階として口腔環境を整えておくことが有効な場合があります。
そのため当院では、必要に応じてプレオルソ等の機能的アプローチを取り入れながら、
将来の歯列拡大や本格矯正につなげやすい状態を作る方針をご提案しました。
「このままガタガタがひどくなるのでは?」と不安を感じる方は、ぜひ一度ご相談ください。
今できること、少し待った方がいいことを整理しながら、無理のない最適な治療計画を一緒に考えていきましょう。
この記事の監修者情報
吉田 尚起
日本矯正歯科学会認定医
院長である吉田なおきは、国立大阪大学歯学部、および同大学院にて矯正治療を専門に学び、博士号を取得。大学病院にて7年間にわたり研鑽を積み、300症例以上の矯正治療に携わってきました。
自身も歯並びのコンプレックスを克服した経験から、見た目の美しさだけでなく、噛み合わせや心身の健康を考えた治療を心がけています。
歯科医師全体の約3%しか取得していない日本矯正歯科学会認定医として、お子様から大人の方まで、未来の笑顔をサポートします。
