2026.8.26 叢生(ガタガタ)の矯正相談集

「部分的な反対の噛み合わせ(交叉咬合)と真ん中のズレが気になる…」とご相談いただいた49歳・女性のケース

「一部の歯が反対にかんでいる」「笑ったときに左右差があるように見える」「治すには顎の手術が必要なのでは?」――。

大人になってから長年気になっていた歯並びや顔貌について、「今からでも矯正治療はできるのか」「矯正だけでどこまで改善できるのか」とご相談に来られる方は少なくありません。

今回は、一部の交叉咬合と歯並びの左右差についてご相談に来られた49歳女性との初診相談時のやり取りをご紹介します。

歯列矯正だけで改善できる部分と、外科的矯正治療でなければ変えにくい部分、さらに49歳から治療を始める際に考えておきたい点についてもお伝えします。

患者様情報

年齢49歳
性別女性

初診時の画像診断

左側の前から2番目の歯が上下反対に噛んでいます。(交叉咬合)

噛み合わせがずれている影響で、下顎が左にずれて噛む癖がついています。咬み合わせの偏位が見られます。

ご相談のきっかけ

「一部の歯が反対にかんでいる」「笑ったときに左右差があるように見える」「治すには顎の手術が必要なのでは?」――。

大人になってから長年気になっていた歯並びや顔貌について、「今からでも矯正治療はできるのか」「矯正だけでどこまで改善できるのか」とご相談に来られる方は少なくありません。

今回は、一部の交叉咬合と顔の左右差についてご相談に来られた49歳女性との初診相談時のやり取りをご紹介します。

歯列矯正だけで改善できる部分と、外科的矯正治療でなければ変えにくい部分、さらに49歳から治療を始める際に考えておきたい点についてもお伝えします。

患者様との実際のやり取り

はじめまして。今、一番気になっているところを教えていただけますか?

一番気になるのは、ここの歯が反対になっていることです。あと、笑ったときに片方が上がって見えるというか、顔全体の左右差も以前から気になっています。

実際に確認すると、一部の歯が反対にかんでいますね。また、お顔や口元にも多少の左右差があります。
ただ、まず知っておいていただきたいのは、「矯正治療で治せる部分」と「矯正だけでは治せない部分」があるということです。

矯正だけでは治せないところもあるんですか?

はい。矯正治療で最も大きく変えられるのは、歯の位置とかみ合わせです。現在反対になっている歯を正常な位置に動かし、かみ合わせを整えることは可能だと考えています。
一方で、顎の骨そのものの左右差や、笑ったときに片側の口角が上がりやすいといった筋肉の動きは、歯を動かしただけですべて改善するわけではありません。

歯並びを治しても、顔の左右差は残るということですか?

そうですね。歯並びとかみ合わせはかなり改善できる可能性がありますが、骨格や筋肉による左右差は残る可能性があります。
むしろ歯並びがきれいになることで、それまで歯並びのズレに目が向いていた分、顎や口元のわずかな左右差が以前より気になる方もいます。

それは少し意外でした。

治療前にそこを理解しておくことは、とても大切です。「矯正をしたら顔まで完全に左右対称になる」と期待して始めると、歯並びがきれいになっても、思っていた仕上がりと違うと感じる可能性があります。

矯正だけで治す場合は、どのような治療になりますか?

反対になっている下の歯を内側へ動かし、正常なかみ合わせにしていく治療を考えます。
ただ、歯を内側へ動かすためにはスペースが必要です。そのスペースを確保するために、状態によっては下の歯を1本抜いて治療する方法を検討します。

1本だけ抜くんですか?

可能性としてはあります。ただ、今回については、抜歯が必要かどうかを今日の相談だけで決めるのは難しいと思っています。
抜かずに治療する場合には、反対になっている歯を比較的大きく動かす必要があります。その歯を支えている骨の厚みが十分にあるかを確認しなければいけません。

骨が足りないとどうなるんですか?

歯は顎の骨の中で動かす必要があります。骨の範囲を越えるほど無理に動かすと、歯茎が下がったり、歯が不安定になったりする可能性があります。
そのため、CTなどで骨の状態を確認し、シミュレーションを行ったうえで、非抜歯で安全に動かせるのか、抜歯した方がよいのかを判断したいと思います。

下の歯を1本抜くと、歯の真ん中はずれませんか?

多少ずれる可能性はあります。上下の歯の本数が左右対称ではなくなるため、上下の前歯の中心を完全に一致させることは難しくなります。
ただ、見た目では下の前歯の中心よりも、上の前歯がお顔の中心に合っていることや、左右の犬歯などがバランスよく並んでいることの方が目立つので、あまり下の前歯の中心は気にならないかもしれません。
そのため、上下の中心線を完全に一致させることだけではなく、歯全体の形やかみ合わせとのバランスを見ながら仕上げていきます。

矯正だけでも、反対になっている部分はかなり変わりますか?

はい。似たようなケースでは、歯を適切な位置へ移動することで、反対になっていたかみ合わせを正常な位置まで改善できています。
手術をしない場合の大きな目標は、「顎の骨の位置はそのままで、歯並びとかみ合わせをきれいにする」というイメージです。

私は、今まで手術をしないと治らないと思っていました。

手術をしなくても、歯のかみ合わせについては改善できる可能性があります。
一方で、「顔の左右差そのものをできるだけ改善したい」という希望が強い場合には、外科的矯正治療も選択肢になります。

手術では、どのようなことをするんですか?

まずワイヤー矯正で歯をある程度整えた後、顎の骨を切って位置を調整し、上下の顎のバランスを整えます。その後、再び矯正治療で細かなかみ合わせを調整します。

顎の骨を動かせば、顔の左右差は完全に治りますか?

完全に左右対称になるとは限りません。
手術によって顎の骨の位置は変えられますが、皮膚や筋肉そのものを左右同じ形にする手術ではありません。骨の位置が改善することで顔貌も良い方向へ変化しますが、笑ったときの筋肉の動きなどは残る可能性があります。

手術をすれば、もっと大きく変わると思っていました。

受け口のように顎を大きく前後へ動かすケースでは、顔貌の変化を実感しやすいことがあります。
今回のような左右差の改善では、動かす骨の量が比較的小さい可能性があります。そのため、大きな手術を受けた割には、ご本人が期待されるほど見た目の変化を感じない可能性も考えておく必要があります。

私の場合は、顎のずれがそこまで大きくないんですか?

顎先にも多少の左右差はありますが、非常に大きくずれている状態ではありません。上顎にもわずかな傾きがあるため、手術によって改善できる部分はありますが、数ミリ単位の調整になる可能性があります。
そのため、手術を選択する場合には、「どの程度の変化が期待できるのか」と「そのために負う手術の負担」を比較して考えることが大切です。

手術はやっぱり大変ですか?

全身麻酔で行う手術になります。手術自体は1日ですが、その後は腫れや骨の安定を確認するため入院が必要になります。
しばらくは柔らかい食事が中心となり、通常どおりに食事ができるまでには時間がかかります。

49歳からでも手術はできますか?

年齢だけでできないわけではありません。ただ、外科的矯正治療を受ける方としては比較的年齢が高い方になります。
若い方に比べて回復に時間がかかる可能性や、歯周組織の状態なども確認する必要があります。得られるメリットと身体的な負担を十分に比較して、本当にそこまで治したいのかを考えることが大切です。

治療期間はどれくらいですか?

手術を伴わない矯正治療の場合は、およそ2年前後を一つの目安として考えています。
外科的矯正治療では、手術前の矯正、手術、手術後の調整まで含めて3年前後、場合によってはそれ以上かかることがあります。

手術をしない場合、ワイヤーとマウスピースは選べますか?

今回の歯並びであれば、詳しい検査結果にもよりますが、ワイヤー矯正とマウスピース型矯正装置のどちらも選択肢になると考えています。

49歳でも普通の矯正治療はできますか?

はい。年齢だけを理由に矯正治療ができないわけではありません。
ただし、若い方と比べると歯周病や歯茎の状態などをより慎重に確認する必要があります。歯や歯茎が健康であれば、49歳からでも矯正治療を検討することは可能です。

手術しかないと思っていたので、少し考え方が変わりました。

まずは「一番治したいのがどこなのか」を整理してみるとよいと思います。
反対になっているかみ合わせを治し、歯並びをきれいにすることが一番の目的であれば、手術をしない矯正治療でも改善できる可能性があります。
一方、顎の骨格的な左右差までできる限り改善したいという希望が強いのであれば、外科的矯正治療について専門機関で詳しい説明を受ける価値があります。
どちらを選ぶ場合でも、「どこまで変えたいのか」と「そのためにどこまで治療の負担を受け入れられるのか」を考えることが大切です。

分かりました。一度家族で考えてみます。

まとめ

今回の49歳・女性のケースでは、
・「一部の反対のかみ合わせ」に対して、手術を行わない矯正治療でも改善できる可能性があること
・「顔や口元の左右差」については、歯並びだけでなく顎の骨格や筋肉も関係するため、矯正治療や外科的矯正治療でどこまで改善できるのかを見極めながら治療方法を選択することが重要

という相談結果になりました。

今回の相談では、見た目としての「反対のかみ合わせ」や「笑ったときの顔の左右差」といったお悩みだけでなく、矯正治療で改善できる部分と改善が難しい部分、非抜歯で安全に歯を動かせるかどうか、さらに外科的矯正治療を行った場合に期待できる顔貌の変化についても詳しくご説明しました。

成人矯正では、単に歯並びを整えるだけでなく、歯を支える骨や歯茎の状態、かみ合わせ、顔貌とのバランスまで含めて治療計画を立てることが重要です。特に今回のように顔の左右差も気になっているケースでは、歯を動かすことで改善できる範囲と、骨格や筋肉に由来するため残る可能性がある部分を治療前に理解しておくことが大切です。

また、骨格的な左右差まで改善するためには外科的矯正治療が選択肢となりますが、手術を行っても皮膚や筋肉まで完全に左右対称になるとは限りません。今回のケースでは骨格的なずれが極端に大きいわけではないため、手術によって期待できる変化と、全身麻酔や入院、術後の回復などの負担を比較しながら慎重に検討する必要があります。

反対のかみ合わせや顔の左右差でお悩みの方、「手術をしなければ治らないのでは」とお考えの方も、ぜひ一度ご相談ください。年齢や歯・歯茎の状態、ご自身がどこまで改善したいのかを確認しながら、無理のない治療方法を一緒に考えていきましょう。

この記事の監修者情

吉田 尚起

日本矯正歯科学会認定医

院長である吉田なおきは、国立大阪大学歯学部、および同大学院にて矯正治療を専門に学び、博士号を取得。大学病院にて7年間にわたり研鑽を積み、300症例以上の矯正治療に携わってきました。

自身も歯並びのコンプレックスを克服した経験から、見た目の美しさだけでなく、噛み合わせや心身の健康を考えた治療を心がけています。

歯科医師全体の約3%しか取得していない日本矯正歯科学会認定医として、お子様から大人の方まで、未来の笑顔をサポートします。

〒560-0056 大阪府豊中市宮山町1丁目1−47

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