| 叢生(ガタガタ)の矯正相談集
「永久歯が並ぶスペースの不足と歯のガタガタが気になる…」とご相談いただいたM.Sさん(8歳・女の子)のケース
「顎が小さくて、これから歯がガタガタになりそうと言われた」「前歯が少し斜めに生えてきている」「下の前歯もガタついてきた」――。
永久歯への生え変わりが進む7〜9歳頃になると、乳歯のときにはそれほど気にならなかった歯並びでも、永久歯が生えてくるにつれて「スペースが足りないのでは?」と心配されることがあります。
今回は、以前から他院でも「顎がやや小さく、将来的にガタつきが出る可能性がある」と説明を受けていた8歳の女の子、M.Sさんとの初診相談時のやり取りをご紹介します。
永久歯が並ぶためのスペースを作る小児矯正や、ワイヤー矯正とマウスピース型矯正装置の違い、治療を始めるタイミングについてもお伝えします。
患者様情報
| 年齢 | 8歳 |
| 性別 | 女性 |
初診時の画像診断



上下の歯並びにガタガタ(叢生)があります。
上の前歯が少し前に傾いています。
ご相談のきっかけ
M.Sさんは、以前から他の歯科医院でも、
「顎が少し小さい」
「このままだと永久歯がガタガタに並ぶ可能性がある」
と説明を受けていたそうです。
永久歯への生え変わりが進むにつれて、上の前歯が少し斜めに生えてきたり、下の前歯にもガタつきが見られるようになり、ご家族も矯正治療を具体的に検討されるようになりました。
また、
「今から矯正を始めた方がよいのか」
「もう少し永久歯が生えてからでもよいのか」
「顎を広げる治療はマウスピースでもできるのか」
「ワイヤーとマウスピースではどちらが合っているのか」
といった点について、当院へご相談くださいました。
患者様との実際のやり取り
はじめまして。今、一番気になっているところを教えていただけますか?
はい。以前から「顎が少し小さいので、これから歯がガタガタになるかもしれない」と言われていました。
実際にお口の中を確認すると、確かに上下とも永久歯が並ぶスペースが少し足りない状態ですね。
やっぱり顎が狭いですか?
そうですね。例えば上の2番目の前歯が少し斜めに生えてきています。
この歯をまっすぐな位置へ整えていくためには、現在よりも歯が生えるスペースが必要になります。
下の歯もガタガタしていますよね。
はい。下の前歯にも軽度のガタつきがあります。こちらも永久歯が並ぶ場所が少し不足しています。
出っ歯や受け口など、ほかに問題はありますか?
前後的なかみ合わせについては、今のところ大きな問題はないと思います。
上の歯が下の歯より少し前にある傾向はありますが、M.Sさんはまだ8歳です。成長の中では上顎が先に成長し、その後に下顎の成長が続くため、現在の程度であれば必ずしも悪い状態ではありません。
奥歯のかみ合わせはどうですか?
奥歯の前後的な位置関係も比較的良好です。大きく出っ歯側や受け口側へずれている状態ではありません。
そのため、今回の小児矯正では、顎を前後方向へ大きく動かすことよりも、「永久歯が並ぶスペースを作ること」が一番の目的になります。
では、顎を広げる治療になるんですか?
はい。今回のように永久歯が並ぶスペースが不足している場合には、歯列を横方向へ広げて、歯が並ぶ場所を作っていきます。
どんな装置がおすすめですか?
M.Sさんの場合は、ガタつきが極端に強いわけではありません。
そのため、ワイヤーを中心とした治療でも、マウスピース型矯正装置でも、どちらでも治療を進められる可能性があります。
マウスピースでも顎を広げられるんですか?
はい。マウスピースでもある程度歯列を広げることができます。
固定式の拡大装置の方が、大きく広げる必要があるケースには向いていますが、M.Sさんの場合は非常に大きな拡大が必要という状態ではありません。
そのため、マウスピースで歯列を広げる方法でも対応できる可能性があります。
実際にマウスピースで治療している子もいますか?
はい。M.Sさんと同じように、軽度のガタつきや少し前歯が出ているお子様でも、マウスピースを使って歯列を広げながら前歯を整えているケースがあります。
マウスピースの場合は、「歯列を広げること」と「前歯を並べること」を同時に進められることがメリットの一つです。
ワイヤーの場合はどう違いますか?
ワイヤーを中心とした小児矯正では、「まず歯列を広げる装置を使う」「その後にワイヤーで前歯を並べる」というように、装置ごとに役割を分けて治療することがあります。
例えば、半年程度歯列を広げた後、さらに半年程度ワイヤーで前歯を並べるといった流れです。
マウスピースの方が早いんですか?
症例にもよりますが、今回のような歯並びでは、マウスピース型矯正装置の方が歯を動かす治療期間を半年程度短くできることがあります。
歯列の拡大と前歯を並べるのを同時に進められるためです。
まだ永久歯が全部生えていませんが、今から矯正しても大丈夫ですか?
今すでに生えている前歯については整えていくことができます。
ただ、まだ生えていない犬歯や奥の永久歯については、無理に動かすことはありません。
先に永久歯が生えるスペースを作っておき、「このまま生えてくれば自然に良い位置へ入りやすい」という環境を整えて待ちます。
生えたばかりの歯はすぐ動かさない方がいいんですか?
生えたばかりの永久歯は、歯の根がまだ十分に完成していません。
そのため、必要以上に強い力をかけるのではなく、まずはスペースを確保しながら自然な萌出を待つことも大切です。
小児矯正だけで全部の歯をきれいにできますか?
小児矯正では、主に「成長期を利用して歯列を広げること」と「現在生えている前歯をある程度整えること」を行います。
その後、永久歯がすべて生えそろう12歳前後に、細かな歯並びまでさらに整える必要があるかを改めて確認します。
そのときにまた矯正をする場合もあるんですね。
はい。必要であれば第二期治療として全体矯正を行います。
一方、第一期治療で前歯もきれいになり、永久歯も比較的良い位置に生えて、ご本人やご家族が十分満足されていれば、そこで終了する場合もあります。
治療は今すぐ始めた方がいいですか?
M.Sさんの場合、すごく急いで始めなければならない状態ではありません。
今から始めることもできますし、半年〜1年程度待って、もう少し永久歯への生え変わりが進んでから始めても、同じような治療結果を目指せると考えています。
わかりました。一度家族でも相談してみます。
まとめ
M.Sさんのケースでは、
・「上下の永久歯が並ぶスペース不足」と「前歯の軽度なガタつき」に対して、成長期を利用して歯列を広げ、これから生えてくる永久歯のスペースを確保する小児矯正が有効と考えられること
・前後的なかみ合わせには現時点で大きな問題がないため、成長や永久歯への生え変わりを確認しながら、ワイヤー矯正とマウスピース型矯正装置の中から、お子様に合った治療方法と開始時期を選ぶことが重要
という相談結果になりました。
今回の相談では、見た目としての「前歯が斜めに生えてきた」「下の前歯がガタガタしている」といったお悩みだけでなく、上下の顎の大きさや奥歯のかみ合わせ、これから生えてくる永久歯の位置や本数まで確認し、将来的な歯並びを見据えたご説明を行いました。また、歯列を広げる方法として、固定式の装置やワイヤー矯正、マウスピース型矯正装置それぞれの特徴についてもお話ししました。
小児矯正では、今見えている歯をきれいに並べるだけでなく、成長を利用しながら永久歯が自然に生えてくるためのスペースを作っておくことが重要です。特にM.Sさんのように、骨格的な出っ歯や受け口などの大きな問題はなく、スペース不足によるガタつきが主な問題となっているケースでは、歯列を適切に広げることで、永久歯がより良い位置に生えてこられる環境を整えられる可能性があります。
また、M.Sさんの場合はガタつきが極端に強くないため、ワイヤー矯正だけでなくマウスピース型矯正装置も選択肢になります。
お子様の顎が小さいと言われた方や、永久歯が斜めに生えてきた、前歯のガタつきが気になるという方は、ぜひ一度ご相談ください。現在の歯並びだけでなく、顎の成長やこれから生えてくる永久歯まで確認しながら、お子様にとって無理のない最適な治療方法と開始時期を一緒に考えていきましょう。
この記事の執筆・監修者
なおき矯正歯科・小児矯正歯科 院長
吉田 尚起 日本矯正歯科学会 認定医
大阪大学歯学部を卒業後、同大学院歯学研究科にて矯正治療を専門に学び、博士号を取得。大阪大学歯学部附属病院 矯正科に7年間在籍し、小児矯正から成人矯正、外科矯正、口唇口蓋裂や骨格性の難症例まで、これまでに300症例以上の矯正治療に携わってきました。
自身も歯並びのコンプレックスを克服した経験から、見た目の美しさだけでなく、噛み合わせや心身の健康を考えた治療を心がけています。
歯科医師全体の約3%しか取得していない日本矯正歯科学会 認定医(2023年取得)として、豊中市宮山町で、お子様から大人の方まで、未来の笑顔をサポートします。
- 日本矯正歯科学会 認定医(2023年取得)
- 博士(歯学)/大阪大学大学院歯学研究科
- 大阪大学歯学部附属病院 矯正科 元医員
本記事は、なおき矯正歯科・小児矯正歯科 院長・吉田 尚起(歯科医師/日本矯正歯科学会 認定医)が執筆・監修しています。記事の内容は診療ガイドラインや学会発表等をもとに作成していますが、歯並びや咬み合わせの状態、適切な治療開始時期には個人差があります。気になる症状がある場合は、自己判断せず矯正歯科にご相談ください。