2026.7.31 叢生(ガタガタ)の矯正相談集

「下の前歯のガタつきと噛み合わせの深さが気になる…」とご相談いただいたE.Nさん(5歳・女の子)のケース

「下の前歯が生え変わり始めて、少しガタガタしてきた」「上の前歯が下の歯を深く覆っている」「顎を広げる治療は、いつから始めればよいの?」――。

乳歯から永久歯への生え変わりが始まると、それまできれいに並んでいた歯にガタつきが見られるようになり、矯正治療を検討される保護者の方は少なくありません。

今回は、下の前歯のガタつきと深いかみ合わせについてご相談に来られた5歳の女の子、E.Nさんとの初診相談時のやり取りをご紹介します。

本格的に歯列を広げる治療を始めるタイミングや、5歳の今から取り組めるプレオルソによる治療についてもお伝えします。

患者様情報

年齢5歳
性別女性

初診時の画像診断

噛み合わせが深く(過蓋咬合)前から下の前歯が見えません。

下の歯並びにガタガタがあります。

ご相談のきっかけ

E.Nさんは、普段通院している歯科医院で、下の前歯のガタつきを指摘されたことをきっかけに、矯正相談へ来られました。

正面から見える上の前歯は比較的きれいに並んでいるため、保護者の方は大きな歯並びの問題を感じていなかったそうです。しかし、お口を開けて確認すると、下の永久歯が少し重なって生えてきていました。

また、かみ合わせが深く、下の前歯が上の前歯に隠れてほとんど見えないことや、普段から口呼吸が見られることも分かりました。

保護者の方は、

「下の歯のガタつきは、今後さらに強くなるのか」
「かみ合わせが深いことには、どのような問題があるのか」
「顎を広げる治療は、5歳の今から始めるべきなのか」
「今の年齢でできる治療はあるのか」

といった点について詳しく知りたいと、当院へご相談くださいました。

患者様との実際のやり取り

はじめまして。今、一番気になっているところを教えていただけますか?

下の歯が少しガタガタしてきていると言われました。前から見ると上の歯しかあまり見えないので、そこまで気になっていなかったんですが。

実際に正面から見ると、上の前歯は比較的きれいに見えます。ただ、お口を開けると、下の永久歯が生え変わり始めていて、少しガタつきが出ていますね。

今後、下の歯のガタつきは強くなりますか?

その可能性はあります。永久歯は乳歯よりも大きいため、乳歯の時期に歯と歯の間に隙間が少ないと、生え変わった際にスペースが不足しやすくなります。
E.Nさんは、上の乳歯には比較的隙間がありますが、下の歯列には隙間が少なく、前歯がやや内側へ傾いています。そのため、今後さらに永久歯が生えると、ガタつきが出る可能性が考えられます。

かみ合わせが深いと、何か問題がありますか?

かみ合わせが深いことだけで、すぐに日常生活へ大きな支障が出るわけではありません。ただし、深さが強くなると、下の前歯が上顎の歯茎に当たることがあります。
歯が歯茎に繰り返し当たると、歯茎が傷ついたり、歯茎が下がったりする可能性があります。

もう歯茎に当たっていますか?

現在は、下の前歯が上顎の歯茎にかなり近い位置にあります。強く傷つけている状態ではありませんが、少し当たっている可能性はあります。
今すぐ重大な問題が起こる状態ではありませんが、これ以上かみ合わせが深くなることは、できれば避けたいと考えています。

どのような治療が必要になりますか?

将来的には、歯列を横方向へ広げ、永久歯が並ぶためのスペースを確保する治療が必要になる可能性があります。併せて、深いかみ合わせを少し上げて、下の前歯が上顎の歯茎へ当たりにくい状態を目指します。

顎を広げるとは、どのような治療ですか?

上顎には、成長期の子どもにだけ利用できる骨のつなぎ目があります。その部分へ適切な力を加えることで、歯列の幅を少しずつ広げていきます。
歯列のアーチが広がると、その分、永久歯が並ぶためのスペースを確保しやすくなります。

5歳の今から、顎を広げた方がよいのでしょうか?

本格的に歯列を広げる治療は、もう少し永久歯が生えそろってからでもよいと考えています。
現在は、上の前歯がまだ永久歯へ生え変わっていません。永久歯の前歯が上下それぞれ4本ほど生えると、どの程度スペースが不足しているのか、どれくらい歯列を広げる必要があるのかを、より正確に判断できます。

何歳頃から始めることが多いですか?

歯の生え変わりによって個人差がありますが、8歳前後から本格的な小児矯正を始めることが多いです。
顎の成長を利用した拡大治療は、一般的に10~12歳頃まで検討できるため、E.Nさんの場合、今すぐ始めなければ間に合わない状態ではありません。
5歳の今からできることとして、プレオルソという取り外し式の装置があります。

プレオルソを使うと、歯のガタつきが治るのですか?

プレオルソの一番の目的は、歯を直接大きく動かすことではなく、舌の位置や唇の閉じ方、お口周りの筋肉の使い方を整えることです。
お口の環境を整えることで、歯に加わる力のバランスを改善し、永久歯が生えやすい状態へ導くことを目指します。

舌の位置も、歯並びに関係するのですか?

はい。舌は本来、上顎の内側にある「スポット」と呼ばれる位置に置かれていることが理想です。
舌が上顎に触れていることで、内側から上顎の成長を支える役割があります。一方、舌が下がっていると、お口が開きやすくなり、口呼吸にもつながります。

普段、少し口呼吸があります。

口呼吸がある場合は、舌が下がり、唇を閉じる筋肉が十分に使われていない可能性があります。
プレオルソを入れると、舌を上の正しい位置へ誘導しやすくなります。また、装置を入れた状態で唇を閉じることで、お口周りの筋肉を使うトレーニングにもなります。

プレオルソだけで矯正治療は終わりますか?

プレオルソだけで歯並びが改善し、その後も問題なく永久歯が生えてくるお子様もいます。ただし、プレオルソは顎を大きく広げるための専用装置ではありません。
E.Nさんは、今後ガタつきが出る可能性があるため、8歳頃になった段階で歯並びを再評価し、必要であれば本格的な小児矯正へ移行することを想定しています。

なるほど。今すぐ本格的に広げるのではなく、まずお口の状態を整えるということですね。

はい。まずはプレオルソで舌や唇の使い方、かみ合わせを良い方向へ導きながら、永久歯の生え変わりを確認します。
その後、8歳頃になって前歯が生えそろった段階で、どの程度歯列を広げる必要があるかを改めて判断していきましょう。

分かりました。一度家族で検討して検査の予約を取ります。

まとめ

E.Nさんのケースでは、
・「下の前歯のガタつき」と「上の前歯が下の歯を深く覆うかみ合わせ」に対して、まずはプレオルソを使用し、舌の位置や唇の閉じ方、お口周りの筋肉のバランスを整えることが有効と考えられること
・永久歯の生え変わりを確認しながら、歯列を広げる本格的な小児矯正を始める適切な時期を見極めることが重要

という相談結果になりました。

今回の相談では、見た目としての「下の前歯のガタつき」だけでなく、下の前歯が上顎の歯茎に近づくほど深くかみ込んでいることや、下の歯が内側へ傾くことで永久歯の並ぶスペースが不足する可能性についても詳しくご説明しました。また、口呼吸や舌の位置がお口の成長や歯並びに与える影響、プレオルソの使用方法、将来的に歯列を広げる治療が必要となる可能性についてもお話ししています。

小児矯正では、今見えている歯のガタつきを整えるだけでなく、舌や唇の使い方を改善し、これから生えてくる永久歯が並びやすい環境を整えることが重要です。特にE.Nさんのように、かみ合わせが深く、口呼吸や下の前歯の内側への傾きが見られるケースでは、5歳の今からプレオルソを使用することで、かみ合わせやお口周りの環境を良い方向へ導ける可能性があります。

ただし、プレオルソだけで将来のガタつきがすべて改善するとは限りません。永久歯の前歯が生えそろう8歳前後に歯並びを改めて評価し、必要に応じて顎や歯列を広げる小児矯正へ移行することが大切です。

お子様の前歯のガタつきや深いかみ合わせ、口呼吸でお悩みの方は、ぜひ一度ご相談ください。成長や永久歯への生え変わり、ご家庭での装置の使いやすさも考慮しながら、お子様にとって無理のない最適な治療方法と開始時期を一緒に考えていきましょう。

この記事の監修者情

吉田 尚起

日本矯正歯科学会認定医

院長である吉田なおきは、国立大阪大学歯学部、および同大学院にて矯正治療を専門に学び、博士号を取得。大学病院にて7年間にわたり研鑽を積み、300症例以上の矯正治療に携わってきました。

自身も歯並びのコンプレックスを克服した経験から、見た目の美しさだけでなく、噛み合わせや心身の健康を考えた治療を心がけています。

歯科医師全体の約3%しか取得していない日本矯正歯科学会認定医として、お子様から大人の方まで、未来の笑顔をサポートします。

〒560-0056 大阪府豊中市宮山町1丁目1−47

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