2026.6.15| 叢生(ガタガタ)の矯正相談集
「下の歯が生えるスペースが足りないかも…」とご相談いただいたK.Mさん(8歳・女の子)のケース
「永久歯が生えるスペースが足りなさそう」「このまま歯並びがガタガタにならないか心配」…。
お子様の歯が生え変わる時期になると、永久歯がきれいに並ぶのか不安を感じる親御様は少なくありません。
今回は、下の歯が生えるスペース不足を気にされて来院された8歳の女の子、K.Mさんとの初診相談時のやり取りをご紹介します。
単に歯を並べるだけではなく、顎の成長や将来的な抜歯の可能性まで見据えた当院の小児矯正についてもお伝えします。
患者様情報
| 年齢 | 8歳 |
| 性別 | 女性 |
初診時の画像診断



右下の大人の歯が並ぶスペースが足りません。
出っ歯さん傾向があります。
ご相談のきっかけ
K.Mさんは、かかりつけの歯科医院で矯正について相談されていましたが、「治療を始めるタイミング」や「どのような方法がよいのか」について、もう一度専門的な意見を聞きたいとのことでご来院されました。
特に気にされていたのは、下の永久歯が生えてくるスペースが足りないように見えることでした。
上の歯並びは比較的順番よく並んでいるものの、下の歯には明らかなスペース不足があり、将来的にガタガタが強くならないか心配されていました。
患者様との実際のやり取り
はじめまして。今、一番気になっているところを教えていただけますか?
下の歯が生えるスペースが足りないように見えて、歯並びがガタガタにならないか心配です。
そうですね。実際に見せていただくと、下の歯が生えてくるスペースがかなり不足している状態です。
上の歯は比較的順番通りに並んでいて、下の歯並びほど大きな心配はなさそうですが、下の前歯から犬歯にかけては、永久歯が入るためのスペースが足りない状態ですね。
永久歯の本数は大丈夫なのでしょうか?
レントゲンで確認したところ、永久歯の本数はそろっています。
足りない歯や余分な歯はなさそうなので、その点は安心していただいて大丈夫です。
ただ、歯の本数は問題なくても、その歯が並ぶためのスペースが不足していることが課題になります。
スペースが足りない場合は、顎を広げる治療になるのでしょうか?
はい。小児矯正では、歯が並ぶスペースを作るために顎を広げる治療を行うことがあります。
ただし、上顎と下顎では広げやすさに違いがあります。
上顎は骨の真ん中に成長のつなぎ目があるため、比較的広げやすいのですが、下顎は一つの骨でできているため、上顎ほど大きく広げることはできません。
下の歯は広げにくいんですね。
そうなんです。
下の歯の場合は、骨そのものを大きく広げるというより、少し内側に倒れている歯を起こしてあげることで、歯が並ぶアーチを広げるイメージになります。
ただ、広げられる量には限界があります。
K.Mさんの場合はスペース不足の量が比較的大きいため、顎を広げる治療を行っても、将来的に多少のガタつきが残る可能性はあります。
それでも今から治療した方がいいのでしょうか?
はい。何もしなければ、将来的に抜歯が必要になる可能性はかなり高いと思います。
今の時期から顎を広げてスペースを作っておくことで、将来的に歯を抜かずに並べられる可能性を高めたり、抜歯ではなく歯の幅を少し調整する程度で済む可能性があります。
それでも将来的に歯を抜くことはありますか?
可能性はゼロではありません。
特に、将来的に口元をもう少し引っ込めたい、横顔をすっきりさせたいという希望が出てきた場合には、歯を抜いて前歯を後ろに下げる治療が選択肢になることがあります。
ただ、今から小児矯正を行っておくことで、将来的な選択肢を広げることはできます。
治療方法にはどんなものがありますか?
マウスピース型の装置を使う方法と、ワイヤーや拡大装置を使う方法があります。
マウスピースの場合は、1つの装置で広げる治療から歯並びの誘導まで進めていくイメージです。
一方、ワイヤーや拡大装置の場合は、まず顎を広げる装置、その後に前歯を並べる装置というように、段階ごとに装置を使い分けて治療を進めます。
どちらの方法でも大丈夫なのでしょうか?
ゴールは大きく変わりません。
大切なのは、K.Mさんが無理なく続けられる方法を選ぶことです。
マウスピースは見た目が目立ちにくく、取り外して歯磨きがしやすいメリットがありますが、自分でしっかり装着する必要があります。
ワイヤーや拡大装置は固定式のものもあり、装着時間を本人が管理しなくてよい反面、歯磨きや違和感への慣れが必要になります。
治療期間はどれくらいですか?
積極的に顎を広げたり前歯を並べたりする期間は、だいたい2年ほどを目安に考えていただくとよいと思います。
その後、奥の歯が生え変わる10〜12歳頃までは、3ヶ月から半年に1回程度経過を見ながら、永久歯が良い位置に生えてくるか確認していきます。
よく分かりました。一度家族で相談してみます。
まとめ
K.Mさんのケースでは、
・下の永久歯が並ぶスペース不足が比較的大きく、将来的に歯並びのガタガタが強くなる可能性があること
・永久歯の本数には問題がないものの、歯の大きさに対して顎のスペースが不足していること
・上顎に比べて下顎は大きく広げにくいため、拡大治療だけで完全にスペースを確保できるとは限らないこと
・今の時期から顎を広げる治療を行うことで、将来的な抜歯矯正の可能性を減らせる可能性があること
という相談結果になりました。
今回の相談では、「下の歯が生えるスペースが足りない」「このまま歯並びがガタガタにならないか心配」といったお悩みだけでなく、レントゲンで永久歯の本数や位置を確認し、どの程度スペースが不足しているのかについて詳しくご説明しました。
また、上顎と下顎では広げやすさに違いがあること、特に下顎は骨そのものを大きく広げることが難しいため、歯を起こしながらアーチを広げる治療にも限界があることをお伝えしました。そのうえで、小児期にできる治療として、マウスピース型装置やワイヤー・拡大装置を用いて、できるだけ永久歯が並びやすい環境を整えていく方針をご提案しました。
小児矯正では、単に今見えている歯並びを整えるだけではなく、これから生えてくる永久歯の大きさや位置、顎の成長、将来的な抜歯の可能性まで見据えて治療計画を立てることが重要です。特にK.Mさんのように、下顎のスペース不足が大きいケースでは、早めに状態を確認し、成長を利用できる時期に治療を始めることで、将来の治療の選択肢を広げられる可能性があります。
お子様の永久歯が並ぶスペースや、将来的な歯並びのガタガタが心配な方は、ぜひ一度ご相談ください。成長や生え変わりのタイミングを見ながら、お子様にとって無理のない最適な治療方法を一緒に考えていきましょう。
この記事の監修者情報
吉田 尚起
日本矯正歯科学会認定医
院長である吉田なおきは、国立大阪大学歯学部、および同大学院にて矯正治療を専門に学び、博士号を取得。大学病院にて7年間にわたり研鑽を積み、300症例以上の矯正治療に携わってきました。
自身も歯並びのコンプレックスを克服した経験から、見た目の美しさだけでなく、噛み合わせや心身の健康を考えた治療を心がけています。
歯科医師全体の約3%しか取得していない日本矯正歯科学会認定医として、お子様から大人の方まで、未来の笑顔をサポートします。
